2014-12-22

J-POPなんてダサくて聞いてらんねー

高校大学と一緒だった友達がいてさ。

彼は音楽が大変に好きで小遣いの殆どCDに費やしてしまい、昼休みはいつもナイススティックを食べていた。

「お前、家にCD何枚持ってんの?」とか「あー今月CD買いすぎて金ねーわー」とか休み時間の度にアピールする彼を何故か嫌いになれなくて、

たまに席が近くなるとちょっと話す、くらいの関係がだらだらと続いていた。

彼のことを「音楽博士」「家がツタヤ」と呼ぶと今お気に入りCD(たいていライブ版だ)を貸してくれたので、

部屋で聞くCDにも困らなかったし。後で感想を聞かれるのが困ったけど。


いつもの様に彼からCDを借りようとしたある日、

3枚のCDの中に日本語じゃないのが混じっているのに気がついた。赤ん坊が海中を悠然と泳ぐジャケットニルヴァーナだ。

「もうJ-POPなんてダサくて聞いてらんねー。どいつもこいつもおんなじ歌詞、おんなじコード進行ばっかりだ。これからはコレ(洋楽)だわ」

彼は誇らしげに言った。後日ニルヴァーナ感想を求められたがあまり真面目に聞いてなかったので、「カッコイイんじゃない」としか言えなかった。

彼は喜んだ。


月日が経つにつれ、彼が貸してくれる3枚のCDには徐々に、難解で、TV雑誌で見かけないアーティストのものが増えていった。

「今Linkin Park流行ってるみたいだけど、あれがイイなんて言える一般人センスが逆にわからんね」

また彼は誇らしげに言った。その時彼が貸してくれたのは、確かビョークだったと思う。「難しくて、正直よくわからんかった」という僕の感想を聞いて、逆に彼は喜んだ。「だよな。お前にはまだはえーわ」

彼のアイディンティティは「俺は一般人よりCDをたくさん持っている」から、「俺は一般人より高級なセンスを持っている」に変わっていた。


大学に入り少し疎遠になってからも、たまに彼はCDを3枚ずつ貸してくれた。

ビョークレディオ・ヘッドに変わり、そこからジャコ・パストリアス肖像」に変わった。ジャズに踏み込んだ後はジョン・コルトレーンの「Love Supreme」に移り、そこから先のことはよく覚えていないが、「コルトレーンなんて誰でも聞ける」と言っていたのは覚えている。

「なあ、今これが一番アツいやつ」彼はiPod miniイヤホン差し出した。ノイズミュージックだった。ザザー。ジジジー。

ちょっとついていけない」「だよな。お前にはまだはえーわ」

イヤホンを耳に戻し、彼は下宿に帰っていた。音漏れのするイヤホンをした彼の顔は、少し苦しそうだった。


社会人になり彼とはもう会わなくなった。多分彼は、音楽聴くことで(音楽聴くポーズをすることで)何かと戦っていたんだと思う。

今彼は何を聞いているんだろう。いっそ演歌にハマったりしないだろうか思うと、少し楽しげな想像に顔がほころんだ。

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