朝日慰安婦検証:「自己弁護が目立つ」第三者委報告書
毎日新聞 2014年12月22日 18時14分(最終更新 12月22日 23時27分)
第三者委員会は今年9月、木村前社長が記者会見して吉田証言関係記事の取り消しが遅れたことを謝罪した際に設置を表明。一連の報道や国際的な影響などを検証していた。報告書を受け、渡辺雅隆社長が26日に記者会見して、今後の対応などを説明する。また第三者委は、数カ月後に、報告書への同社の対応ぶりについて検証の機会を設けることも求めた。【北村和巳】
◇池上コラム問題で処分
朝日新聞社は22日、池上さんのコラム一時掲載見送り問題で、社長付の杉浦信之・前取締役編集担当を出勤停止2カ月、執行役員の福地献一・前取締役と広報担当付の喜園尚史・前執行役員を停職2カ月とする来年1月1日付の処分を発表した。
◇謙虚さに欠けた
朝日新聞の渡辺雅隆社長のコメント (吉田証言の誤報を)長年放置したのは謙虚さに欠けていた。経営陣が関与しながら謝罪しなかったのは誤った判断。池上氏のコラム掲載見送りもトップの判断の誤りだ。信頼を損ねてしまっただけでなく、新聞報道全体への信認も傷つけた。報道機関として、あってはならない事態を招いたことは痛恨の極み。紙面づくりやチェック体制を見直すとともに、経営と編集の関係を明確にし、透明性を高める仕組みを再構築する。
◇今後の対応見守る
池上彰さんの話 コラムの掲載拒否を誰が判断したのか、これまではっきりしなかったが、第三者委員会によって、実質的には木村社長の判断であると認定された。外部の力によらなければ明らかにならなかったのは残念であるが、掲載すべきだと抵抗した人たちがいたことはうれしく思う。今後は、第三者委員会の報告を受け、朝日新聞が「経営と編集の分離」の原則をどう貫こうとするのか見守りたい。私のコラムの連載をどうするかは、朝日新聞の方針を見て判断したい。
◇「第三者委員会」の報告書骨子
・8月の検証記事で謝罪しなかった判断ミスは、経営が編集に過剰に介入し、社の防衛のために紙面を作ったことが主な原因
・池上彰さんのコラムの不掲載は実質的に木村伊量・前社長の判断だった
・吉田証言の取り消しの遅れは、読者の信頼を裏切るもの。1997年に特集記事を掲載した段階で訂正または取り消しをして、謝罪すべきだった
・国際社会への影響は委員の三つの意見を併記。吉田証言報道の影響は「限定的」などと評価
・先入観を持たず事実を重視する報道、誤報の対応策の確立、経営と編集の分離原則の徹底などを提言