朝日慰安婦検証:「自己弁護が目立つ」第三者委報告書

毎日新聞 2014年12月22日 18時14分(最終更新 12月22日 23時27分)

朝日新聞の慰安婦報道に関して、記者会見する第三者委員会の中込秀樹委員長(中央)ら=東京都港区で2014年12月22日午後6時16分、喜屋武真之介撮影
朝日新聞の慰安婦報道に関して、記者会見する第三者委員会の中込秀樹委員長(中央)ら=東京都港区で2014年12月22日午後6時16分、喜屋武真之介撮影

 朝日新聞社が自社の慰安婦問題報道を検証するため設置した第三者委員会(委員長=中込秀樹・元名古屋高裁長官)は22日、報告書を発表した。同社は8月の特集紙面で慰安婦を強制連行したと証言した吉田清治氏(故人)に関する記事を取り消したが、報告書は「自己弁護の姿勢が目立ち、謙虚な反省の態度も示されなかった」と指摘。経営幹部が謝罪しないと決定したことなどを挙げ、「一般読者や社会の納得いく内容にならなかった」と責任を厳しく追及した。

 朝日新聞は8月5、6日に慰安婦報道に関する特集紙面を掲載し、1982年以降に掲載した「吉田証言」に関する記事16本を取り消すと表明したが、謝罪はしなかった。報告書は、現代史家の秦郁彦さんが92年に吉田証言に対する疑問を示して以降、同社が現地取材などをしなかったことはジャーナリズムの在り方として非難されるべきだと指摘。97年の特集紙面でも「真偽は確認できない」としたことに対し、「この時点で訂正か取り消し、謝罪をすべきだった」とした。

 今年8月の特集紙面掲載の際、1面で「おわび」をする方針だったものの、当時社長の木村伊量(ただかず)前社長が反対し、経営会議懇談会で謝罪しないことを決めたと記載。「初報から約32年後の取り消しとなった理由を示すのが読者への誠実な態度だった」と批判した。経営幹部の紙面編集への関与はあり得るとしつつ、「謝罪しないと判断したのは誤り。編集部門には反対の者がおり、真摯(しんし)に受け止めるべきだった」と述べた。

 報告書は、特集紙面に謝罪がないことを批判したジャーナリスト、池上彰さんのコラムが一時掲載見送りとなった問題にも触れた。木村前社長は9月の記者会見で「見送りの判断は編集担当の取締役」と述べたが、報告書は木村前社長が掲載に難色を示し編集部門が抗しきれなかったとして「見送りは木村前社長の判断」と認定。経営幹部の不適当な関与だったと指摘した。

 慰安婦報道の国際的影響については三つの見方を提示。(1)米国での強制連行というイメージ形成に大きな影響を及ぼした証拠は決定的でない(2)吉田氏の度々の紙面登場が国際的評判を広めたわけではない(3)朝日新聞の海外への影響は限定的−−などと記した。

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