再生エネルギー:再開へ九電 新ルールに「ブレーキ」の声
毎日新聞 2014年12月22日 20時39分
九州電力は22日、太陽光発電の新規受け入れ再開を発表したが、事業者に無制限の出力抑制に応じることを求めるなど、新たな参入に高いハードルを設ける。このため、太陽光導入を推進している自治体などは、今後の導入にブレーキがかかると懸念する。また、一般家庭用も新たに出力抑制の対象となるため、住宅メーカーも、販売戦略などの変更を迫られそうだ。
「無制限に売電が制限される新しいルールでは、収益が悪化し、太陽光発電事業者の参入意欲が減退するだろう」。熊本県エネルギー政策課の担当者は懸念する。同県は、2020年までに県内全家庭の消費エネルギーを自然エネルギーで賄う計画を立てている。これまでは太陽光に導入が偏っていたため「今後は出力抑制対象外となった小水力や地熱が伸びていってほしい」と期待をかける。
自治体の事業にも影響が出ている。佐賀県は有明海沿岸道路(佐賀市)の一部のり面に太陽光パネル(1000キロワット)を設置する工事を7月から官民共同で進めてきたが、九電の受け入れ停止を受け、工事は止まったままだ。同県道路課の担当者は「事業を継続したいが、無制限に出力抑制する事態をまったく想定していなかった」と事業中止の可能性も視野に入れざるを得ない状況だ。
出力抑制の対象は、来年4月以降の申し込みからは一般家庭にも及ぶ。福岡市西区の住宅展示場を訪れた同市の男性会社員(33)は「太陽光設備を設置するとしても自分の家で使えれば十分と思っていたので、出力抑制はあまり影響ない」と冷静だ。一方、住宅メーカーでつくる「住宅生産団体連合会」の広報担当者は「売電収入を見込んでローンの返済計画を立てる客も多かった。顧客にとってのメリットがはっきりしないと勧めづらくなる」と先行きに不安を漏らす。
太陽光発電導入の相談に乗ってきた宮崎市のNPO法人「ひむかおひさまネットワーク」の下津義博代表は「地球温暖化の抑止や、自前のエネルギー源を作るためには再生可能エネルギーの導入は重要。今後の再生エネ受け入れ可能量を増やすために、電力会社間の連系線の容量を増強していくべきだ」と指摘する。【遠山和宏】