もしスコットランドの独立派が勝っていたら、来週の世界情勢は動乱になっていた。何しろ、一国の中で異民族を抱えて問題を内包しているのは、イギリスだけではない。
スペインにはカタルーニャの問題もあり、北イタリアもベルギーも独立問題を抱えている。すでにウクライナは国が割れてしまい、シリア、イラクも、イスラム国によって国内がズタズタになってしまっている。
さらに東アジアで見ると、中国がまさに新疆ウイグル自治区、モンゴル、チベット、台湾、香港問題を抱えているわけで、スコットランドで火が付くと、中国も無事ではなかった。
中国はこのスコットランドの住民投票を激しく批判したが、その背景には、自国の分裂危機が控えているからでもある。火種はむしろ、中国の方が大きい。
欧米のダブルスタンダードが世の中を混乱させる
逆にウクライナ東部の親ロシア派「ドネツク人民共和国」は、スコットランドの独立反対派が勝ったことに不満を爆発させており、「選挙不正があった」と一方的に述べたとインタファクス通信が伝えている。
それもそうだ。ドネツク人民共和国は2014年5月に住民選挙が行われて国民の9割が「独立に賛成だ」と意思表示したにも関わらず、アメリカを始めとする欧米諸国はそれを一切無視してしまった。
要するに欧米は自分たちの都合の良いときには選挙の結果を重視し、都合が悪ければ選挙の結果を無視するというのが親ロシア、もしくはロシア側の見方である。
これは、シリアのアサド政権が戦乱の中で選挙を行って、国民がアサド政権を支持するという結果を出したのに、欧米が執拗にアサド政権を叩きのめそうとするのも同様だ。
欧米のダブルスタンダードは、今に始まったことではない。
サダム・フセイン政権や、アフガニスタンのタリバン政権は、国民にひどい人権侵害を行っているとして大爆撃をして無理やり政権崩壊させた。
それにも関わらず、国民を大弾圧している北朝鮮はまるっきり無視を決め込んでいる。あるいは、チベットやウイグルを大弾圧する中国にも何も言わない。
何か言うどころか、むしろ尻尾を振って中国を持ち上げているのが現状だ。
欧米は、グローバル化の推進でもそうだが、あらかじめ決めた暗黙の目標を遂行するために、自分たちの都合の良い方向に政治を動かそうとするあまり、ダブルスタンダードが目立つようになっていく。
スコットランドの独立派が勝っていたら、来週の世界情勢は動乱になっていた。何しろ、一国の中で異民族を抱えて問題を内包しているのは、イギリスだけではない。
グローバル化はここに来て大きく躓いている
現在、欧米先進国が目指している方向性はいくつかある。
「世界をグローバル化させる」
「中国を大国にして、新植民地化する」
「中東を再編する」
実のところ、そのすべてがうまくいっていない。
グローバル化を無理やり推し進めると、世界各国の国民が大反発してナショナリズムが勃興した。多文化主義も否定し、反移民を標榜する政党が躍進するようになった。
グローバル・メディアが、「彼らは極右政党だ」と罵れば罵るほど、国民がそちらを支持するようになる始末だ。
中国を大国にして欧米の「新植民地」にしようと画策する計画も、当の中国がまったく言うことを聞かなくなって空中分解寸前になっている。
中国はしたたかで、ことあるごとに欧米の裏をかき、時には敵対し、そのくせ、汚職も環境破壊も凄絶なことになって自壊寸前である。
中東戦略も壊滅的だ。シリアのアサド政権が異様なまでの粘り腰を発揮して、いつまで経っても倒れない。
焦ったアメリカが反アサド派に武器弾薬を流し込んでいると、それを元手にテロリストが強大な力を持って、イスラム国という予期しない存在を誕生させた。
おまけに欧米側に取り込んだはずのロシアまでが欧米と完全敵対するようになった。かつて地球を完全支配した米英を筆頭とする欧米諸国は今、大きな躓きを見せている。
アメリカが反アサド派に武器弾薬を流し込んでいると、それを元手にテロリストが強大な力を持って、イスラム国という予期しない存在を誕生させた。
「何もかもうまくいかない」状況が続く
つまり、今は推し進めてきたグローバル化が後退する局面に入っていると見ることができる。
情勢は立て直されなければならないが、当のオバマ大統領はすでにレームダック化しており、何の役にも立たなくなってしまった。
イスラム国に対するコメントでも、ジョン・ケリー国務長官が「イスラム国とは戦争だ」と言えば、オバマ政権はそれを打ち消すように「これは戦争ではない」と否定した。
デンプシー統合参謀本部議長が「地上軍派遣も視野に入れる」と言えば、オバマ政権はそれを打ち消すように「地上軍の派遣はない」と否定した。
つまり、オバマ大統領は軍の展開を非常に嫌がっている。
イラン攻撃もせず、シリア攻撃もせず、ウクライナの親露派攻撃もせず、今回のイスラム国に対しても空爆のみでお茶を濁そうとしているだけであると見透かされている。
フランスもアメリカに合わせて空爆を実施しているが、地上軍の派遣は否定した。このオランド大統領も、オバマ大統領と同じで、今や支持率は20%にも届かず、死に体となってしまっている大統領である。
イギリスのキャメロン首相も、スコットランド独立問題で右往左往して状況を悪化させた責任者として大批判されており、今や国際問題どころではなくなってしまっている。
このような状況にあるのだから、世界情勢はオバマ大統領の任期中の2年間は、ずっと「何もかもうまくいかない」状況が続く。混沌としている世界は、ますますカオスとなっていく。
誰もが予測もしないことは、往々にして混乱状態の中で生まれていく。日本が巻き込まれなければいいのだが、世界情勢はつながっている。
混乱は間違いなく、日本にも押し寄せてくるだろう。
世界情勢はオバマ大統領の任期中の2年間は、ずっと「何もかもうまくいかない」状況が続く。
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