産経新聞が長期連載記事「歴史戦」で慰安婦問題について取り上げた記事について、多数の事実誤認があるとの指摘を受け、会議と無関係な写真を掲載したことなどの誤りを認め、9月19日付朝刊で記事の一部を訂正している。
問題となったのは、今年5月20日付朝刊1面と3面に掲載された「歴史戦」第2部の「慰安婦問題の原点」第5回目の記事。「河野談話導いた平成4年の『アジア連帯会議』 『日本だけが悪』周到な演出」と見出しをつけ、主に1992年8月にソウルで開催された「挺身隊問題アジア連帯会議」について、会議に参加したフリージャーナリストの舘雅子氏の証言をもとに構成されている。「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」など2団体が、8月6日付で産経新聞社に5項目の訂正要求書を送付。約1カ月半後に同社が2項目について誤りを認め、訂正記事を出した。なお、産経への訂正要求は、朝日新聞が8月5日付の慰安婦問題に関する検証特集記事で、故吉田清治氏の「強制連行」に関する記事取消しを発表した直後になされていた。
産経新聞2014年5月25日付朝刊1面(赤線部分は事実誤認の指摘があった部分)
産経の記事では、会議に日本側から「日本軍『慰安婦問題』行動ネットワーク」が参加したとなっているが、団体名が間違っているとの指摘を受け、「従軍慰安婦問題行動ネットワーク」に訂正された。また、「平成4年8月、ソウル市内で開かれた『挺身隊問題アジア連帯会議』で舞台に立つ元慰安婦女性ら(舘雅子氏提供)」との説明付きで掲載された写真(3面)は、記事とは直接関係ない写真だったとして取り消した。訂正要求書によると、写真は「韓国太平洋戦争犠牲者遺族会」訴訟の第1回口頭弁論後の報告集会の写真だったとみられる。
他方、会議に「韓国の伝統衣装、チマ・チョゴリを着た4、5人の元慰安婦女性」が参加していたとの記載についても、訂正要求書は、当日「慰安婦」被害者は全員普段着で参加しており、白いチマ・チョゴリを着て参加した人は一人もいなかったと指摘。「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」がホームページに掲載した会議当日の写真には、チマ・チョゴリを着た参加者は写っていなかったことから、指摘のとおり事実誤認の可能性が高い。
また、記事には、会議に参加した台湾代表が「私たちは韓国の女性と違って、優しくて従順なので日本の兵隊さんにかわいがってもらい、遠足にも一緒にいきました。だから韓国の強い姿勢とは違う」と主張し、「韓国側が要求する個人補償を求めない考えを表明」したため、会場は騒然となったという記述がある。この点も、訂正要求書によると、台湾代表からは補償を望んでいるとの報告があったと指摘。日本報道検証機構も台湾代表の報告書(原文ハングル)を入手したが、台湾代表は「個人補償を求めない考え」を表明していなかったことが確認できた。
さらに、記事には、インドに住むタイ人女性が「日本軍さえたたけばいいのか。インドに来た英国兵はもっと悪いことをしたのに」と泣きながら訴え、「黙りなさい。余計なことをいうな!」という怒鳴り声が会場に響いたという記載がある。この点も、訂正要求書では、タイ在住のタイ人女性が1名参加したが、インドに住むタイ人女性が参加した事実はなく、引用したような発言や日本語の怒鳴り声があった事実もないと指摘した。
産経新聞側は2項目を訂正したものの、他の3項目については「舘氏が自らの経験として述べておられる内容であって、事実として認識しております」と回答するにとどめ、訂正を見送った。これに対し、「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」などは9月24日、再度の訂正要求をしたが、産経新聞側からは回答がないという。
産経新聞社 御中
訂正要求書
2014.5.25付「産経新聞」の「歴史戦第2部 慰安婦問題の原点」~「日本だけが悪」周到な演出…平成4年「アジア連帯会議」の記事中の以下の記述につき、事実と異なる部分がありますので、速やかに貴紙紙面で訂正文を掲載された上で、当実行委員会への連絡をお願いします。
1.3面写真に、
「平成4年8月、ソウル市内で開かれた「挺身隊問題アジア連帯会議」で舞台に立つ元慰安婦女性ら(館雅子氏提供)」とのキャプションがつけられていますが、この写真はバックに「問われる戦後補償 韓国遺族会 第一回口頭弁論」という文字が見えています。これは、「韓国太平洋戦争犠牲者遺族会」訴訟の第一回口頭弁論後の報告集会の写真ではないでしょうか。
確認の上、訂正を求めます。2.1面記事は、
この会議に参加した舘は会場で迷い、ドアの開いていたある小さな部屋に足を踏み入れてしまった。
そこでは、韓国の伝統衣装、チマ・チョゴリを着た4~5人の元慰安婦女性が1人ずつ立って、活動家とみられる日本人女性や韓国人女性の言葉を「オウム返し」に繰り返していた。
「元慰安婦に(シナリオ通りに)言わせるのは大変なのよね」
日本からの参加者がこう話すのを耳にしていた舘は、あの部屋で見たのは「元慰安婦女性たちの振り付けだ」と確信した。としていますが、第一回アジア連帯会議(当時の名称は「挺身隊問題アジア連帯会議」)当日、「慰安婦」被害者は全員普段着で参加しており、白いチマ・チョゴリを着て参加した人は一人もいません。必要であれば写真を提示することもできます。
従って、上記についても、内容全体の訂正または取消を求めます。3.1面記事は、
日本からは「日本軍『慰安婦』問題行動ネットワーク」…が参加
としていますが、92年当時、このような名称の団体は存在していませんでした。
これについても訂正または取消を求めます。4.1面記事は、
続いて、インドに住むタイ人女性が「日本軍さえたたけばいいのか。インドに来た英国兵はもっと悪いことをしたのに」と泣きながら訴えると、日本語の怒鳴り声が会場に響いた。
「黙りなさい。余計なことをいうな!」
舘はこのときの様子を「日本だけが悪いというストーリーを作り上げていた」と述懐する。としていますが、
当日、タイ在住のタイ人女性が1名参加していますが、インドに住むタイ人女性が参加した事実はありません。また、引用のような発言もなく、日本語の怒鳴り声が会場に響いた事実もありません。
これについても訂正または取消を求めます。5.1面記事は、
「私たちは韓国の女性と違って、優しくて従順なので日本の兵隊さんにかわいがってもらい、遠足にも一緒にいきました。だから韓国の強い姿勢とは違う」
台湾代表がこう主張し、韓国側が要求する個人補償を求めない考えを表明すると、激しいヤジが飛んだ。声を荒らげて怒る人、議長席に詰め寄る人などで会場は騒然となった。としていますが、台湾の報告者は「台湾『慰安婦』に関する初の報告書」とのタイトルで報告し、その内容は「これらの女性のほとんどが物質的補償を望んでいる。しかし、補償を望んでいるとはいえ、期待してはいない。もしも、日本政府が韓国の「慰安婦」に補償するなら、台湾の女性たちも補償されなければならない。彼女たちは、他の「慰安婦」たちと同じ処遇を受けることを願っている。これらの女性のうち何人かは必ずしも物質的補償を受けなければならないとは思っていないが、彼女たちの健康状態が苦しくなれば、特別な支援を受けなければならなくなるだろう。彼女たちが物質的な補償を望む理由は、まず健康上の理由、遺族のため、または現在の窮乏生活のためである。彼女たちの老後のために補償は必ず必要だ。このうち2名は特にたいへん怒っており、台湾政府が日本政府から補償を受け取るために支援することを望んでいる」というもので、記事とは全く逆の内容です。
従って会場が騒然となった事実もありません。
この点についても、訂正または取消を求めます。
産経新聞の誤報に抗議(日本軍「慰安婦」問題解決全国行動 2014/9/28)
(初稿:2014年12月22日 18:06)
(初稿:2014年12月22日 18:07)