あの子のことも嫌いです

元サークラ、サブカルメンヘラクソビッチ女、現在しょぼいOLの備忘録。

1年で4単位しか取れなかった私が、4年で大学を卒業できた理由

大学を休学して有意義な生活を送っているという、京大生の方の記事を読んだ。


休学の効能 - 運河

 

記事を良く読めば、この方の場合、能力があり、それゆえ雇ってくれる会社があったからこそ、肉体面にも精神面にもメリットが生まれているのだと解る。単なる大学生が12月に出た成績を見、記事を読んで、よし休学しよう!と考えるのは非常に危険だ。

わたしは、やむを得ない事情を含めた例外的な場合を除いて「大学に入学したら意地でも4年で卒業すべきだ」と考えている。

 

大学1年生のとき、殆ど大学に行かなかった。

度を超えた過干渉の母親から解放され、人生初めての自由な時間が出来たわたしは、憧れていたことを全部実行した。カフェでお茶をして、好きな服を買い、友人とカラオケに行った。アルバイトをし、恋愛をして、サークルクラッシャーになっているうちに、勉強は全く面白いと思えなくなり、大学に行かなくなった。

大学に行けと追い回す母から逃れるように、平日は友人の家や繁華街、バイト先をはしごしているうちにあっとい間に12月になり、1年生で得た単位は前期偶然レポート提出で獲得できた4単位のみ。当然辞めるのか続けるのかという選択肢を迫られることになる。

 

結論から言えば、大学を辞めたかった。しかし結果として4年生で単位を取り切り、卒業論文を提出、就職活動を終えて、同じ学年で入学した同級生とともに卒業式を迎えられたのは、ふたりから背中を押してもらったからだ。

 

ひとりは、趣味で知り合った同い年の友人だ。彼女は家の都合で大学進学を諦め、朝から晩までバイトをして学費を稼ぎ、毎日専門学校の授業に励んでいた。課題に全力投球し、コネクションを作るためにどんな雑用でもこなす彼女は、傍から見ても、とても努力していた。しかしいざ卒業となった3月、全く職が見つからないのだと言う。

渋谷のマクドナルドで、彼女は泣いていた。ダブルスクールしている大学生は余裕で内定を貰っているらしい。「先生から大学に行くというのは4年間辛抱した証、企業はそれを求めているんだ、と言われた。大学に行かなきゃ好きなことはできない。まどかちゃんが羨ましい」と言うのだ。

日本の、大卒新卒一括採用の善し悪しをここで議論する気はないが、大学に行っていないというただその一点が、好きな仕事に就くための足枷になるという現実を目の当たりにし、衝撃を受けた。

もうひとりは、父だ。20年以上大学で教えている父は、自分のゼミ生の大学生活、そして卒業後の進路を何十人、何百人と見てきた。

大学に行っていないと家族に公になった夜、父はわたしを呼んだ。ふたりきりで話す機会などそれまで殆どなく緊張していたが、怒鳴るのでも泣くのでもなく、父は冷静にわたしを諭した。

「まどかは、将来何になりたいの? 漁師とか、アイドルとか、今すぐにでもなった方が良い職業なら、大学を辞めるべきだ。でも、まだなりたいものが決まっていないなら、大学生活のなかで将来の道を決めれば良い。自分が何者になりたいかが定まらないなら、大学生でいるべきだ」

18歳の冬、1年、ただ遊び惚けていただけのわたしには、何もなかった。『やりたいこと』を模索するため、わたしは大学に戻ることを決めた。

 

当然ながら、1年間4単位しか獲得していない人間が、4年で卒業するのは難しい。

わたしの場合、学部が「自由単位と指定の単位を合わせて、規定の単位数取りきる」「卒業試験の合格」「卒業論文の提出」を卒業の条件に課しており、1年生〜4年生の間には留年は存在しない仕組みだったため、挽回が可能だった。

4年で卒業することを自分に課したのは、ずるずると大学に居続けて、延々“自分探し”をしたくはなかったから、そして母親の呪縛から逃れるためにも、家庭から離れて生活が可能な術を身につけたかったからだ。

何としてでも卒業するという決意を固めたわたしが、父のアドバイスの元実行したのは、以下の3つである。

 

1、まずは学生課に駆け込む

単位の取り方は、思っているより複雑だ。自分がどの程度危機的状況なのか、どう努力すればいいのかを客観的に把握するためにも、学生課で単位の取り方を入念に聞く。取りこぼしがひとつでもあったら取り返しがつかない。

学生課の事務員さんは、当然面倒な顔をしてくる。しかし、4年で卒業しようと考えればひとつのミスも許されない。何度もしつこく確認をして、卒業のため取得しなければならない単位を計算し、エクセルにまとめた。まとめた紙を印刷し、常に手帳に挟んで「あと何単位必要!」と意識した。

 

2、入れられる限り全部の授業を入れる

月曜日から土曜日まで、空いているコマはなくして授業を組む。専攻と違うとか、関心がないからとかでは授業を切らない。そもそも、1年で4単位しか取っていない人間が専攻だのなんだのなんておこがましい。

2年生のわたしの時間割は、月曜日から土曜日まで、ほぼフルで授業が入っていた。語学も体育も、全て漏らさず取れるだけ入れた。

不思議なもので、全く関心ないけれど単位のために仕方なくねじ込んだ宗教についてとか、日本語文法についての講義で、目から鱗がボロボロ落ちるような面白い発見がたくさんあった。

語学など、コミュニケーションが必要とされるときは「浪人したため、同学年より1歳年上だが大学1年生である」という設定を貫いていた。幸いにも1学年の人数が多かったので、誰も疑問を持たなかったのだ。

 

3、「顔見知り」を作る

レポートの提出日や、あの先生の研究所の場所を聞きたいとき、どうしても風邪で休まざるを得ないときなど、友達がいた方が便利なことがなにかとある。しかし、『友達』となるとハードルが高いので、複数の「顔見知り」の関係性を作っていた。メールアドレスは知っているけれど積極的に連絡は取らない、教室で一緒になったら世間話をする、程度の仲だ。

たとえばちょっと隣の席になったら話しかけるとか、相手が前回の講義を欠席していたらプリントを1部多く取っておくとか、そんな些細な積み重ねから相手との関係性を築く。このおかげで「あの先生は単位が取り易いらしいよ」といった情報や、過去問などを手に入れられるようになった。

 

 大学を4年で卒業した効能

・図書館で大量の本を借りられた(毎日5冊ずつくらい本を読めた)

・自分の興味、関心の枠を越えて、たくさんの知識が得られた

・長文のレポートの書き方、物事の分析の仕方が身に付いた

・自分の人生の目標を見つけられた

・就職活動で志望する企業に入れた

・友達ができた(人生で初めていじめられない学校生活を送れた!)

・最先端の知識を持つ教授の講義をたくさん聴けた

 

人生には、武器が必要だと思う。初期装備のままで世の中を渡るのは難しい。職人をはじめとする専門職のひとは、知識やその腕が武器となるだろうし、己の性だったり、才能だったり、さまざまなものを装備する。

大学に入学した時点で「4年間勉強して卒業する」だけで、大卒という武器が手に入る。それだけではなくて、論理的な思考回路とか、幅広い知識とか、あるいはパソコンの基本的な操作方法とか、最低限の筋トレとか(わたしの学科は体育が必須だった)、目に見えない部分でも自分にプラスになるはずだ。

もし、既にプログラミングの能力があるとか、料理が好きなので資格を取って店を開きたいとか、世界一周の旅に出たいとか、自分の確固たる目標がある人は、すぐにでもチャレンジしてもらいたい。

けれど漠然と「大学つまんないな」と思いながら、家に引きこもったり、遊びほうけたりしているだけの、過去のわたしのような人は、ぜひもう一度大学に戻ってみてもらいたい。自分が思っているよりも、楽しいことが見つかるはずだ。