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【正論】民社党にみる戦後政治の「不運」 社会学者、関西大学東京センター長・竹内洋

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【正論】
民社党にみる戦後政治の「不運」 社会学者、関西大学東京センター長・竹内洋

 そして、日米新安保条約の審議が沸騰しはじめる。社会党は安保廃棄を唱えたが、民社党は原則反対だが、十分な審議をし、暴力による阻止はしないとした。

 当時は、新安保条約に関心がない者が多数を占めていたから、社会党の絶対反対や廃棄は世論から浮いており、民社党の主張のほうが、反自民党側の世論に受け入れられやすかった。にもかかわらず安保反対闘争が一大国民運動となったのは、新安保条約の是非よりも「強行採決」というやり方への反発によるものだった。

 ≪同情票に救われた社会党≫

 岸首相は解散と選挙で民意を問おうとしたが、川島正次郎幹事長から選挙資金の目途が立たず、党内もまとめきれないと強く反対された。このため解散のカードを切れなかった。そのことが、60年安保を大きな社会問題にした。

 もし解散と選挙を早期に行っていたらどうだったろうか。当時の新安保条約をめぐる世論からみて自民党の勝利となり、60年安保闘争は笛吹けど踊らずで、反自民党票は民社党に流れたはずである。

 60年安保闘争は6月19日の自然承認で、終息した。さきほど触れたように、安保反対運動は「強行採決」というやり方に反発し、「岸倒せ」の大きなうねりとなったのだから、条約が発効し、首相が岸から池田勇人に代わることで、もとに戻る。

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