日本人が知らないテレビ学

「池上彰特番」"終了5秒前の奇跡"を見たか?

小泉進次郎だけがはまらなかった”超絶話術”とは

“中継終わり5秒前”の奇跡

さて、毎回、池上さんが、歯に衣着せぬ質問をして、放送後、大きな話題となる当選者や落選者への中継インタビュー。ちまたでは、その質問に対して、「さすが池上さん」と絶賛されていますが、筆者が注目しているのは、“中継終わり5秒前”に行われる池上無双の戦術です。

それは、相手が反論できない中継最後に、池上さんが「このインタビューでこの人が言いたかったことはこれですよ」とうまくまとめてしまうこと。これをやられると中継が切れる数秒前ですから、相手は反論しにくく、つい、そうですと言ってしまうのです。

まずは平沼赳夫さん(次世代の党)から。

池上「(引退を表明している石原慎太郎さんを比例の名簿に登載したのは)男の美学を大事にしたということですね」
平沼「はい、はい」
池上「ありがとうございました」(中継終わり)

えー、政策ではなく男の美学で決めていいの?(筆者、心の中で突っ込む)

山口那津男さん(公明党)からもきっちり言質を取っています。

池上「という意味では、創価学会と公明党の関係、別に隠してはいるわけではない、こうやってはっきり示しているんだよということですね」
山口「はい、歴史的事実ですので」
池上「わかりました。ありがとうございました」(中継終わり)

歴史的事実ってこんなに簡単に肯定しちゃっていいの?(筆者)

安倍晋三首相からは、憲法改正についてのコメントをうまく引き出しました。

池上「憲法改正に向けて、これから一歩一歩進んでいくということですね」
安倍「そういうことですね」
池上「わかりました。ありがとうございました」(中継終わり)

安倍さん、力強く肯定しすぎでは?(筆者)

唯一、「そういうわけでは……」と小声で反論したのは小泉進次郎さんぐらいでした。

池上「(総理大臣を目指すのは)6年後ではない。6年よりもう少し先だということですね。ありがとうございました」
小泉「そういうことではないけれど、まあ、池上さんらしい切り方ですね」(中継終わり)

それにしても、何ともうまい言質の取り方です。そして、視聴者は、ものすごく貴重なコメントを聞いたような気分になります。まさに、池上無双の“中継終わり5秒前の奇跡”。

次回から、テロップともども、ぜひご注目を。

選挙番組がこんなに面白くなるなんて、誰が想像したでしょうか。この結果が象徴するように、テレビ東京の業績も絶好調。2014年9月発表の中間連結決算で、キー局5局のうち増収増益を達成したのはテレビ東京だけです。

ビジネスの世界でも、亜流が本流を逆転する現象がいろいろなところで見られますが、2015年もテレビ東京はますます躍進するのではないかと予測しています。(敬称略)

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