僕がファッション雑誌をつくったのは、去年の秋くらいから“リアル”という言葉がずっと頭のなかにあって、どうにかしてそれをアウトプットしないと後悔するぞ、と思ったからです。ファッションにおいてのリアルは難しい。どれだけ考えを詰めてみても、結局は値段(お金)のことのなのか、と、もうこれ以上何を表現したって仕方ない、所詮ファッションは虚構の世界なんだ、と軽く絶望した時期もありましたが、やっぱり自分自身ずっとファッションが楽しかったので、諦めずにその方法を模索していました。正直、確信が抱けないまま編集作業に入ったのですが、その過程で厚い雲のあいだから薄光が差し込むかのごとく、だんだんと答えが見えてきました。
リアルなファッションとは、その人のパーソナリティに寄り添ったもののことを指すのではないかと。その洋服が高いか安いか、ユニクロなのかラフ・シモンズなのかは関係ない。その人がこれまでの人生で選択してきた数々のものごとが、唯一無二のバックグラウンドとなり、スタイルを形成していると考えれば、ファッションに正解を求めること自体が実にアホな行為だったのです。ましてや、ノームコアとか、『中身化する社会』とか、そういう現象に名前をつけることにどれほどの意味があるのか、いまは甚だ疑問です。むかしから中身は大事です。だけど、その人が何を好きで、どういう格好をするのかに関しては、永遠に自由です。
日本人は海外の文化を取り入れて独自の編集を行うのが天才的に上手なので、どうしてもスタイルをまずはジャンルとして捉えてしまう傾向があります。アメカジとか、モードとか。でも、その特定のジャンルに自身のパーソナリティが完璧に合致する人なんてあんまりいないはずです。とくに、いまは多様化を極めた先にあるケオティックな状況なので、趣味嗜好では隣人とコミュニケーションする術がない、というのも当たり前の時代です。だから、何かに縛られてしまう気がして、みんなファッションを避けている(避け始めている)んじゃないかと思います。
いまの若い人はお金もないし(ここで「いや、おれは学生の頃バイトを3つ掛け持ちしていたぞ!」的な年寄りはファックオフです)、何となく気力もないし、ファッションにお金をかける意味を見失っています。実際に、無印良品とユニクロはかなり優秀だし、一方で一回洗濯したら襟元がびよーんと伸びてしまうドメスティックブランドも少なくありません。だけど、ノームコア(間違った意味ですがあえて使います)的なファッションが正解だとされているから、みんなそれっぽい格好をして、諦観を気取っているんでしょう? クソだね。そんなことで『中身化する社会』にはついていけないよ。中身がマトモなら、どんな格好をしたって、それがその人の個性になるから。好きなものを着れば良いんですよ。上下無地である必要はない。もちろん、上下無地でも良い。何でも良い。あとは、自分の好きな格好をストリートで見つけたら、覚えておくこと。そのインスピレーションの積み重ねこそが、ファッションを楽しむ方法のひとつです。だから、STUDYはファッションを楽しんでいる人たちを、様々なジャンルからサンプリングしているんです。
あと、STUDYでは何人かにインタビューをしているんですが、みんな言っていることが微妙に違っていて、面白いです。無論、どれも正解です。TPOが大事だと話していたアーカイブ&スタイルの坂田さんも、縫製なんてどうでもいいから面白いことがしたいと話していたCLASSの堀切さんも、緑が好きなら緑をたくさん着れば良いんだよと話していたドラムスのジェイコブも、それぞれの生き方を反映したスタイルに一貫性があるので、ずば抜けて格好良い。
STUDYには、一冊の本を通して、スタイルの多様性を伝えたいという意図があります。だから、古着も、ドメスティックブランドも、海外のハイファッションも、フラットな目線で取り扱っています。ストリート系とストリートを混同させたくないのですが、リアル=ストリートです。ストリートにいる人たちが選びとって、独自に編集したファッションは、すべてリアル。ラフ・シモンズだって、J.W.アンダーソンだって、それを着てリアルじゃないなんてのは、嘘です(編集人の自分はほとんど古着しか着ないっていうのにね)。
雑誌として「こう生きなさい」「こう着なさい」っていう時代は、あとすこしで終わると思います。理想像を追いかけ続けても、持続可能性がないことにみんな気付きはじめているから。自分たちができることをできる範囲で継続していくしかないんですよ。人生短いんだからさ。KINFOLKも良いけれど、あのライフスタイルを貫ける人って、何人いるかなって話ですよ。みんなしょーもない電車乗って毎朝通勤して、しょーもない昼飯食って、しょーもない家に帰るんだ。それで何が悪い? 僕はそういうライフスタイル賛歌をやりたいし、そのうえでファッションを楽しむ方法を伝えていきたいですよ。いまは自由業ですが、感覚は会社にいた頃とほとんど変わらないと思います。華やかな世界に生きる人たちには何のこっちゃの雑誌だと思いますが、僕はそうじゃないから。
もう、日本の景気が回復することなんてないと思いますが、僕はそれでもハッピーに、ファッションを楽しみながら生きていきます。だから、STUDYは今後も続けていきます。まあ、色々と考えなきゃいけないことはあるんですが、そういうところからしか、世界は変わらないと思うから。
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