2014年の小説ベスト10

2013/12~2014/11の間の小説でベスト10。期間内であれば文庫落ちも雑誌掲載もアンソロジーも再版も全部含めます。ジャンル不問で短編長編もごちゃまぜ。

SF研会員だからってSFが多いっていうことはありません。

 

 

いとうせいこう「フラッシュ」

鼻に挟み撃ち 他三編

鼻に挟み撃ち 他三編

 

 『鼻に挟み撃ち 他三編』収録。雑誌で読んだ。

 いとうせいこうは口語の扱いが上手い書き手(当然といえば当然)だが、「フラッシュ」の文体はいつにも増して強烈。ドラッグとセックスという古臭い題材も、そういう古臭さがなければこの文体も成り立たないと思えば許容できる。

 

 

円城塔「AUTOMATICA」

 『バナナ剥きには最適の日々』収録。今年は円城の小説が充実していたので、どれを選ぶかかなり悩んだ。「これはペンです」とか「良い夜を持っている」とか「Φ」とか「プロローグ」とか。

円城未読の人間に一冊渡すなら『これはペンです』だけど、一編読ませるならこれかなーと個人的には思っている。短いので円城小説の本質を十分味わえるかどうかはわからないが、リトマス紙の代わりにもなる。

 

 

鎌池和馬『新約 とある魔術の禁書目録(9)』

 こんな傑作書いても俺ガイルやSAOやノゲノラに負けるのかー。あとオティヌスかわいいよオティヌス。

ループという使い古されたネタも、禁書に混ぜ込めばこのレベルまで昇華できる。そう考えるとやはり禁書という世界観はズルいなーと思った。

 

 

谷川流『絶望系』

絶望系 (新潮文庫)

絶望系 (新潮文庫)

 

3年ぶりに読んだがやはり面白い。ただ、その面白さを上手く言語化するのは難しい。

それにしてもこの表紙はどうなの? 確かに綺麗だけど、電撃版のいい感じの古臭さも好きなんだけど。あと全裸絵カットはよくない。

 

 

多和田葉子「献灯使」

献灯使

献灯使

 

 雑誌で読んだ。単行本化もされたがこちらは未読。

勿論ディストピア的な要素もよかったけど、言葉遊びも流石といったところ。あと、多和田葉子の文章は苦手だけどこれはなぜかすんなり受け入れられた。

 

長谷敏司「allo,toi,toi」

My Humanity (ハヤカワ文庫JA)

My Humanity (ハヤカワ文庫JA)

 

 『My Humanity』収録。実はまだ他の短編を読んでいない。

SF研に入って割とすぐに読書会が開かれたのでそれにあわせて読んだ。結構ヘビーなSF短編なので読むのに苦労した印象がある。でも面白い。

 

 

舞城王太郎『ビッチマグネット』

ビッチマグネット (新潮文庫)

ビッチマグネット (新潮文庫)

 

 所謂「舞城っぽさ」はほとんど無いけど、こういうのもアリなのではと個人的に思っている。ある人物一人に焦点を当てる小説を舞城はよく書くけど、それを長編にして綿密に書けるのは凄い。あと時間の扱いが独特。

 

 

村田沙耶香「ギンイロノウタ」

ギンイロノウタ (新潮文庫)

ギンイロノウタ (新潮文庫)

 

 読み終わったあとにため息をつきながら枕に顔を埋めるタイプの小説。コンビニの描写がちょっとエグすぎる。実体験っぽい。

 

 

村田沙耶香「殺人出産」

殺人出産

殺人出産

 

 今年のマイトップ。好きすぎて、雑誌で読んで単行本でも何回も読んで読書会までしてしまった。

ガジェットと思想だけを書いた作品だから社会の部分がガバガバなんだけど、その分妄想が捗る。厭な部分の描写もやたら上手い。

 

 

テッド・チャン「息吹」

 『SFマガジン700【海外篇】』収録。

語り手の体がどんどん異物に変貌していく感じの構成がたまらない。当然SF設定も完成度が高い。このアンソロジーの中でもぶっちぎりのトップ。

 

 

 

最新の作品を追えているのが純文学ぐらいなので意外と偏りがある。もっとSFの新刊(特に海外)を読まなければいけない。