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<核のごみ・現と幻>サイクル「特権」に暗雲/(上)再処理への憂い

<韓国も容認?>
 「米、韓国の使用済み核燃料再処理を容認」
 9月29日、韓国の有力紙・東亜日報はこんな見出しで、米韓が2010年から交渉してきた原子力協定改定の合意が近いと報じた。
 核拡散に神経をとがらす米国が、核兵器の原料となりうるプルトニウムを抽出する使用済み核燃料の再処理を1国で自由に実施する権利を認めているのは、非核兵器保有国では日本のみ。青森県六ケ所村の再処理工場も、日米原子力協定に基づく「特権」で建設が可能になった。
 20基以上の原発を抱える韓国は日本と同様、たまり続ける使用済み核燃料に悩み、再処理が悲願だ。ただ米側は難色を示し続けているとの情報もあり、12月に入り、別の韓国紙は「年内合意は困難」と報じた。

<望む自動延長>
 日本に特権を認めた日米協定は18年に期限を迎える。外務省国際原子力協力室は「日本は既に再処理が認められている。韓国と状況が違う」と自動延長を望むが、協定改定の行方を不安視する見方は消えない。
 「再処理工場が順調に進んでいないと、特例措置がどうなるか懸念を持たざるを得ない」
 9月中旬、政府の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会。委員の森本敏・元防衛相は、六ケ所再処理工場の操業のめどが立たない現状が続けば「特権」を失いかねないと指摘した。日米関係の専門家も「米国はもともと、どの国にも再処理を認めたくない」と述べ、日本も例外でないと警鐘を鳴らす。

<東海村は廃止>
 「再処理容認」を韓国紙が報じたのと同じ日、日本では、1981年に本格操業を始めた茨城県東海村の再処理工場の廃止方針が発表された。原子力規制委員会による新規制基準の適合性審査への対応に巨費がかかるため、日本原子力研究開発機構が存続を断念した。
 再処理をめぐり、国外での始まりの兆しと、国内での一つの終わりが重なったのは、単なる偶然にすぎない。だが、日本の核燃料サイクルが直面する苦境を皮肉なほど物語っているとも言える。



 政府の有識者会議が24日にも、核燃料サイクル政策の在り方などに関する提言書をまとめる。六ケ所再処理工場は高レベル放射性廃棄物も生み出すが、国際問題が絡み、先行きに不透明さが漂う。核のごみ処分に深く関わる再処理のいまを追う。(東京支社・若林雅人)

[再処理] 原発の使用済み核燃料から、再利用できるウランとプルトニウムを分離・回収すること。プルトニウムをウランと混ぜた混合酸化物(MOX)燃料に加工し原発で再び使うプルサーマルが日本の核燃料サイクル政策の基軸になっている。使用済み燃料を廃棄物として埋設する直接処分に比べ、廃棄物の体積を数分の1にし、放射能レベルを下げる期間も大幅に短縮できるとして、最近は最終処分対策の面も強調される。


2014年12月21日日曜日

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