ヘイトスピーチ 在特会の街宣を最高裁が差別認定 バランス難しい法規制
産経新聞 12月21日(日)7時55分配信
「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の朝鮮学校へのヘイトスピーチ(憎悪表現)について、最高裁が今月9日、差別を認定する決定を出した。ヘイトスピーチをめぐっては国連人権委員会が7月、日本に禁止を求めて改善勧告するなど、法整備を求める声が国内外から上がる。ただ、言論の自由との兼ね合いで「規制は難しい」との意見も出ている。
問題となったのは、平成21年12月〜22年3月に3回にわたり行われた、当時京都市南区にあった朝鮮学校周辺での街宣。「朝鮮人を保健所で処分しろ」などと拡声器で連呼し、模様をインターネットで公開した。
1、2審判決はいずれも「人種差別に該当し違法」として、約1200万円の支払いを命じ、学校周辺での街宣を禁止。最高裁も今月、在特会側の上告を棄却し、判決が確定した。
ただ、今回の結論が及ぶのは裁判で争われた事例のみ。東京・新大久保で行われてきた街宣活動など、ほかの事例を「違法」としたわけではない。
◆大阪市など対策検討
それでは、一律にヘイトスピーチを取り締まることは可能なのか。
東京都の舛添要一知事は8月、安倍晋三首相との面会時、ヘイトスピーチに対し、「五輪を控えた東京でまかり通るのは恥ずかしい」と法規制を求め、大阪市の橋下徹市長も「やり過ぎで問題だ」と市で独自の対策を講じる考えを明らかにした。自民党がプロジェクトチームを設置し法整備の検討を始めた一方で、世耕弘成官房副長官は記者会見で最高裁決定を評価しつつも「言論や表現の自由との関係で難しい問題がある」と語っている。
今回の裁判でも引用された人種差別撤廃条約は1965年、国連総会で採択。日本も加盟しており、条約では人種差別を禁じる立法などを義務づける。
ヘイトスピーチ規制には大きく2つの潮流がある。欧州は、第二次世界大戦時のナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)への反省から、積極的に法制化。ホロコーストを否定する発言を厳しく取り締まる。一方、公民権運動など人種的マイノリティー(少数派)が積極的に発言をしてきた米国は、言論の自由尊重の立場からヘイトスピーチなどの発言自体を規制せず、人種憎悪による暴力行為(ヘイトクライム)が規制の対象だ。
◆欧米とは背景異なる
福岡大講師の桧垣伸次氏(32)=憲法学=は「米国、欧州とは背景が異なっており、日本における差別とは何か、ヘイトスピーチとは何かを、歴史的観点も含めて定義付けしていくことが必要。定義がなければ規制の範囲は見えてこない」と指摘。「ヘイトスピーチと政治的発言は紙一重の側面もあり、定義が曖昧なまま規制法が作られれば、言論の自由が過度に制限されてしまう可能性がある」と、法制化議論の進め方について注文している。
最終更新:12月21日(日)7時55分
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