パキスタンの学校襲撃 生徒など死者126人に12月16日 22時31分
パキスタン北西部の都市ペシャワルで武装グループが日本時間の16日午後、陸軍が運営する学校を襲撃し、これまでに生徒を中心に126人が死亡しました。
イスラム過激派組織「パキスタン・タリバン運動」が犯行を認め、現在、パキスタン軍が学校内に入り、制圧作戦を行っています。
16日午前10時半ごろ(日本時間の16日午後2時半ごろ)、パキスタン北西部の都市、ペシャワルにある陸軍が運営する学校に、地元の治安部隊の制服を着て銃などで武装した数人の男らが侵入し銃撃を始め、その後、爆発物も爆発させました。
事件があった地元の州の首相の報道官によりますと、これまでに生徒など126人が死亡し、122人がけがをしました。
ペシャワルの治安担当者はNHKの取材に対し、「5、6人の武装した男たちが押し入った。すぐに爆発音が聞こえた」と状況を明らかにしました。
パキスタン軍によりますと、現場に駆けつけた軍の兵士が学校内に入り、制圧作戦を行っているということです。
これまでに軍は、武装グループのメンバー5人を殺害したということですが、ほかにも武装グループのメンバーが隠れていないか確認を行っています。
学校には小学生から大学生が通っており、当時、試験や学年末のお別れ会が行われ、生徒と教員合わせて数百人がいたということですが、これまでに学校の外に避難している人も多くいるということです。
今回の事件について、パキスタン最大のイスラム過激派組織「パキスタン・タリバン運動」は、NHKの電話取材に対し犯行を認めたうえで、「パキスタン軍による軍事作戦への報復のために、軍の運営している学校を狙った」と話しています。
パキスタンでは、軍がことし6月から北西部でイスラム過激派を標的とした大規模な軍事作戦を続けており、過激派による報復が各地で続いています。
「パキスタン・タリバン運動」とは
「パキスタン・タリバン運動」は、ペシャワルなどを含むパキスタン北西部を中心に活動するパキスタン最大のイスラム過激派組織です。
隣国アフガニスタンの反政府武装勢力「タリバン」を支持するパキスタン国内の複数の武装勢力によって2007年に設立され、国連によりますと、2011年の時点で3万人から3万5000人の勢力になると推定されています。
「タリバン」のほか、国際テロ組織「アルカイダ」とも関係が深く、ことし10月には、イラクやシリアで勢力を拡大するイスラム過激派組織「イスラム国」の活動にも同調する姿勢を示していました。
「パキスタン・タリバン運動」は、イスラム法による統治を掲げ、支配地域では女性の教育を禁じており、ことしのノーベル平和賞を受賞したパキスタンの少女、マララ・ユスフザイさんを銃撃し頭に重傷を負わせたことでも知られています。
このほかにも爆弾テロや政府機関への襲撃を繰り返していて、ことし6月、最大都市カラチの国際空港を襲撃し、治安部隊の隊員など30人を殺害しました。
これに対して、パキスタン軍は「パキスタン・タリバン運動」の拠点であるパキスタン北西部への軍事作戦を行い、これまでに1200人以上を殺害したとしていて、報復の連鎖が止まらない状況になっています。
マララさん「私たちは決して負けない」
今回の事件について、ことしのノーベル平和賞を受賞したパキスタン出身のマララ・ユスフザイさんは、フェイスブック上で、「ペシャワルで起きている無意味で冷血なテロ行為に胸を痛めています。学校にいる何の罪もない子どもたちがこのような恐怖にさらされるようなことはあってはなりません。私はこうした残虐で卑劣な行為を非難し、パキスタンの政府や軍と共に立ち向かいます。また、世界中の人たちと、私のきょうだいともいえる子どもたちの死を悼みます。しかし、私たちは決して負けません」とするコメントを発表しました。
マララさんは、子どもや女性が教育を受ける権利を訴えて、2年前、みずからも「パキスタン・タリバン運動」に所属するメンバーに銃撃されました。