なぜ「英国独立党」が支持を伸ばしているのか

くすぶる「福祉タダ乗り移民」への批判

11月に行われた英下院の補欠選挙で、EUからの離脱と反移民主義を唱える英国独立党(UKIP)のマーク・レックレス氏(右)が、与党・保守党の候補に勝利した。左は同党1人目の下院議員であるダグラス・カーズウェル氏。(写真:ロイター/アフロ)

英国の有権者は外国人が嫌いなわけではない。怒りの矛先は「ただ乗りする人」に向かっている。他のEU(欧州連合)加盟国からの英国移民への福祉権の制限を唱えたキャメロン英首相のスピーチを突き詰めればそういうことだ。

英国の有権者は、同国で働くポーランド人やリトアニア人には悪感情を抱いていない。快く思っていないのは、生活保護を目当てに渡英する移民だ。キャメロン首相はそう信じている。

「開かれた国」でもありたい

福祉権の制限を唱えたスピーチは、キャメロン首相が党首を務める保守党を離党し、EUからの離脱と反移民主義を唱えるUKIP(英国独立党)に加わった2人の議員からの問いに対するキャメロン首相の答えだった。

彼らの離党により、来年5月の総選挙で保守党票が奪われるのをキャメロン首相は恐れている。このスピーチでUKIPに対して十分な攻撃ができたとはいえず、EU加盟に関する英国国内での議論の焦点もぶれてしまった。

キャメロン首相は一方で、世界に対して開かれた国でありたいという英国の希望を強調した。具体的な提案としては、英国人の低所得労働者が受給する補助的生活保護について、EU移民の受給要件として英国国内での4年間の就業実績を求めることや、移民労働者の母国で暮らす子どもへの手当の廃止などがある。こうした動きを差別だとして欧州司法裁判所に提訴することも可能だが、実際の訴訟は今回の選挙が終わってからかなり後のことになるだろう。

キャメロン首相に求められているのは、議論の方向を変え、経済見通しが明るいことを有権者に保証することだ。

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