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戦後70年近く、核廃絶を願ってきた広島や長崎の被爆者の思いが、まだ無視…
戦後70年近く、核廃絶を願ってきた広島や長崎の被爆者の思いが、まだ無視されている。
国際社会からではなく、日本政府からである。政策にいつまでたっても反映されないのだ。
ウィーンで今月開かれた核兵器の非人道性をめぐる3回目の国際会議は、多くの課題を浮き彫りにした。日本については、被爆者と政府の間で主張に開きがある問題が鮮明になった。
核兵器は非人道的であり、廃絶すべきだとする国際的な世論の潮流が急速に強まっている。だが、日本政府の態度は煮え切らず、流れにあらがっているように見えることさえある。
政府は近年の軍縮外交で、核廃絶を目標にしてきたはずだ。外交政策に、もっと被爆者の声を反映すべきである。
被爆者と政府との溝は、会議でのそれぞれの発言に対する議場の空気に反映した。
2人の被爆者や、広島から参加した平和首長会議の事務総長は核兵器禁止への前進を決然と求め、盛んな拍手を浴びた。
ところが政府代表団長の佐野利男軍縮大使は対照的だった。会合の初日、「核爆発は対応できないほど悲惨な結果を招く」との見方に対し、「悲観的過ぎる」と述べ、多くの参加者をあぜんとさせた。
大使は、過去の国連決議に盛られた被害救済策の強化も検討に値する、との趣旨だったと釈明する。だが、そもそも会議の狙いは、核爆発の被害が従来考えられていたよりも格段に大きく、対応不能とわかってきた、との認識を深めることにある。これまでの会議で日本も確認してきた見解ではないか。
2日目の公式声明で日本は発言の趣旨を繰り返すことは控えたが、核軍縮について米国と歩調をそろえ、核不拡散条約(NPT)など既存の枠組みで少しずつ進むべきだという従来の見解を繰り返しただけだった。
会議は開催を重ねるごとに参加国が膨らんでいる。初参加した米英を含め、今回は158カ国にのぼった。その場で、被爆国の代表が水を差す言動をとったことは実に悔やまれる。被爆者らが抗議し、岸田外相も大使を注意したのは当然だ。
「核なき世界」の実現に向けて、米国の「核の傘」を土台としてきた安全保障をどのように転換していくか。政府は今こそ真剣に考え、行動すべきだ。
もちろん容易ではなかろう。だが、そこに真剣に切り込んでこそ、核抑止論にとらわれた核保有国と、人道を原動力に核廃絶をめざす非保有国との橋渡し役にもなれるのではないか。
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