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【一筆多論】イスラエルの「内なる危機」 村上大介

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【一筆多論】
イスラエルの「内なる危機」 村上大介

 イスラエルの総選挙が来年3月に前倒しで実施されることになった。同国では、国を導く理念である「シオニズム」の捉え方が変質しつつあり、今後の方向を占う選挙として注目されよう。

 シオニズムは、ユダヤ人たちが長く苦難に満ちた離散生活と差別からの解放を求めて、19世紀のヨーロッパで始めた民族運動だ。

 シオンの丘(エルサレム)に戻り、ユダヤ人の国を再建しようという土地と結びついた運動となり、1948年の現代イスラエル建国の礎となった。

 建国は多くのパレスチナ難民を生み、アラブ諸国とイスラエルとの度重なる戦争につながった。しかし、いまイスラエルで多くの論者が危機感を示すのは、ユダヤ人国家の存続を危うくしかねない「内なる脅威」だ。

 「ユダヤ民族はバル・コフバの乱に向けて突き進んでいる」-。対外諜報機関モサドの長官を務めたシャブタイ・シャビット氏による、こんな見出しの寄稿が11月末、有力紙ハアレツに掲載されたのも、その一例だ。

 「私は真剣にシオニズムの将来を危惧するようになった」と述べる同氏は、イスラエルが1967年の第3次中東戦争で占領したヨルダン川西岸を手放そうとしない宗教的なシオニスト右派を「小さな土地をめぐる争いを、イスラム世界全体を敵に回す戦争に転化させようとしている」と批判する。

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