2014年4月に消費税率が5%から8%に変更になり、半年以上が経ちました。
元請企業が下請企業に増税分を加味して支払わない買い叩きが生じるのではないかという懸念もあり、消費税転嫁対策特別措置法も成立しています。
ここで見落とされがちだったのが個人事業主でした。
特に物品販売業ではない個人事業主のライター、小説家、漫画家が会社から受け取る「原稿料」や「印税」、通訳、翻訳、その他給与所得以外の事業所得に該当する業務委託契約などです。
これらは消費税込みとされている契約が多く、それが4月以降も値上げされることなく継続されているケースも多いようです。
たとえばこれまで
「1ページ1万円(消費税込み)」
とされていたものは、
税引き後の額は消費税5%時代は
10,000÷1.05≒9,524だったので、
同じ9,524円になるためには消費税8%後は
10,000÷1.05×1.08≒10,286
にならなければいけません。
この286円を「合理的な理由」なく支払わない場合は、消費税転嫁対策措置法における「買い叩き」に該当し、公正取引委員会に是正勧告を受けます。
Q.年収1000万以下だから消費税を納めたことがないのですが……
A.あなたが免税事業者であるか否かを問いません。
課税売上が年間1000万以下の事業者は申告をしなければ免税事業者に該当するので消費税を納める義務はありません。
しかし、現実にその経費について消耗品や旅費交通費について増税分が含まれているため、売上(収入)にも消費税増税分が加味されていなければ、実質的に所得が減ってしまうことになります。
個人事業者がその事業において受け取る売上分は最終消費者ではないのであなたが負担をする必要はありません。
公正取引委員会にも買い叩きの具体例として、
免税事業者である取引先に対し、免税事業者であることを理由に、消費税率引上げ前の対価に消費税率引上げ分を上乗せした額よりも低い対価を定める場合
があげられています。
http://www.jftc.go.jp/tenkataisaku/index.files/yoko4.pdf
最近の事例としては、
「東映アニメーション株式会社」が「アニメーションの原画、動画等の制作業務の委託料を消費税を含む額で定めている個人である事業者」に対して増税後も税込額を変えず転嫁をしなかったケース
(平成26年12月17日)東映アニメーション株式会社に対する勧告について:公正取引委員会
や
「株式会社トライグループ」が「指導委託契約」と称する業務委託契約を締結している個人事業者(家庭教師)に対して増税後も税込額を変えず転嫁をしなかったケース
(平成26年12月19日)株式会社トライグループに対する勧告について:公正取引委員会
があげられています。
個人事業主は元請企業に対しての価格交渉をする力がなく、そのままにしておかれるケースが多いようです。
個人事業主のみなさまにおかれましてはこのことを留意していただき、また元請企業におかれましては実質的な買い叩きを行わないよう誠実な取引をお願いいたします。
それはさておき、25日(Amazonでは23日)に藤元杏シリーズの2巻が発売いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。税法とは一切関係がありません。
(あとKADOKAWA社はとてもいい企業なので私は買い叩かれていません)
藤元杏はご機嫌ななめ2 ―冷たい花火と優しい暗号― (MF文庫J)
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