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サイクリスト

“査定のため”監督自らレース出場も新ロードチーム「レモネード・ベルマーレ」誕生 宮澤崇史監督が就任、欧州で生き残る選手育成へ

2014/12/20 13:35更新

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 ロヂャース レーシングチームと湘南ベルマーレが合併し、新しいJプロツアーチーム「レモネード・ベルマーレ」が誕生した。新チームは12月20日、神奈川県平塚市で開催された自転車総合イベント「湘南バイシクル・フェス」で体制を発表。監督には、2014年限りで現役引退した元プロロードレーサーの宮澤崇史さんが就任する。ヨーロッパで活躍できる選手を育成するため、情熱とモチベーションにあふれたチーム作りを目指し、選手の処遇面では国内初となる成功報酬制度を導入する。

(文・写真 平澤尚威)

新しいJプロツアーチーム「レモネード・ベルマーレ」の体制が発表。宮澤崇史さん(前列左)が監督に就任した新しいJプロツアーチーム「レモネード・ベルマーレ」の体制が発表。宮澤崇史さん(前列左)が監督に就任した

結果を内容を求めながら若手を育成

 レモネード・ベルマーレの発表会は湘南ベルマーレトライアスロンチームと合同で行われ、宮澤監督と所属選手が登場。湘南バイシクル・フェスのゲストとして来場していた宮澤さんが、新監督として紹介された。宮澤監督から各選手が紹介され、来季のチームジャージもお披露目された。

チームの新体制を発表した宮澤崇史監督チームの新体制を発表した宮澤崇史監督

 宮澤監督は「2015年シーズンはチームとしての新しいスタート。若い世代を中心に集め、選手たちがヨーロッパで目指すためのチームとして、長い期間をかけてやっていきたい。Jプロツアーを中心に出場し、結果を求めることはもちろん、選手たちが『自分たちの役割を果たす』ということも重視していきます」とチームと選手たちの成長をファンに誓った。

 また、宮澤監督自身も「集団のなかで走って、選手たちの働きをチェックします」と、レースに出場していくことを明かした。新チームとしての初戦は栃木県宇都宮市で3月15日に開催される「宇都宮クリテリウム」となる。

モチベーションと具体的な役割を明示する「成功報酬制度」

新チーム「レモネード・ベルマーレ」のジャージはグレーを基調にブルーのロゴ、薄いグリーンのラインが入ったデザイン新チーム「レモネード・ベルマーレ」のジャージはグレーを基調にブルーのロゴ、薄いグリーンのラインが入ったデザイン

 レモネード・ベルマーレは、ロヂャース レーシングチームと湘南ベルマーレが合併して誕生したチームで、新たに「Lemonade Lab Inc.」がタイトルスポンサーとして加わった。ベルマーレと同じく神奈川県の湘南地域を拠点にしてJプロツアーなどのレース活動を行う。チーム自体が海外挑戦を目指すのではなく、ヨーロッパへのステップアップとして、若手を育成するために活動する。

 特徴的なのが、成功報酬制度だ。「体調を把握し監督に伝える」「自転車、シューズなどを整備して会場に来る」といった選手として基本的なことから、「逃げ集団に入る」「残り1kmで5番手以内にポジショニングする」など順位に表れない働きをすることで、難易度に応じた報酬が与えられる。選手の働きを査定するため、宮澤監督自身もプレイングマネージャーとしてレースに出場するという。

若手主体のメンバー構成となった「レモネード・ベルマーレ」若手主体のメンバー構成となった「レモネード・ベルマーレ」

 そして「ヨーロッパのコンチネンタルチームで活躍できる選手に成長した」と判断されれば、その報酬は100万円。海外挑戦への資金とすることができる。また、Jプロツアーのレースで優勝すれば30万円、2位なら10万円、3位で5万円が与えられる。

 宮澤監督は成功報酬制度およびその基準を設けた理由について「モチベーションを高く維持すること」「選手がリスクを背負い意識を変えること」を挙げた。評価の項目がはっきりしていることで、選手たちは「自分が何をすべきか」という役割を把握でき、さらには「レースのなかで自分に何ができるか」を判断し、チャレンジできるようになると説明。選手が成功体験を積みながら利益=報酬を得られる制度になっている。

「身近にレースがある環境」の創造へ

 また自転車競技の裾野拡大や活性化のため、「身近にレースがある環境」を作っていく。2013年1月から開催している「湘南ベルマーレシクロクロス」に加え、クリテリウムレースや平塚競輪場を利用したトラックレースの開催を目指す。また、ベルマーレがこれまで行ってきたキッズスクールなども継続される。

湘南バイシクル・フェスと同時開催された湘南ベルマーレシクロクロス湘南バイシクル・フェスと同時開催された湘南ベルマーレシクロクロス
湘南バイシクル・フェスで行われたキッズスクール湘南バイシクル・フェスで行われたキッズスクール

 平塚を中心としてレースを開催していき、それを神奈川、東京、埼玉、千葉など南関東へと展開していくこともコンセプトに掲げている。そうすることで、より選手を発掘、育成しやすい環境を作っていく。

■レモネード・ベルマーレ所属選手
林航平、中里仁、小清水拓也、才田直人、大村寛、菱沼由季典、加地邦彦、内山靖樹、宮澤崇史、福田昌弘

◇         ◇

 宮澤監督は新チーム発足に際し、「Cyclist」にコメントを寄せた。

宮澤崇史監督のコメント

 今の若い選手を見ていると、選手自身がリスクの少ないことを望み、なんとかお金を稼げる環境で、できるだけ長く自転車選手を続けることを目的に走っているように見えました。それでは世界と戦う選手の育成は難しいと感じています。

 そこで、選手が常にリスク・意識・高いモチベーション・情熱を持つために、小さなことから成功体験を増やし、自信をもつことで、大きな目標に立ち向かう選手になってほしい。

 レースを通して選手自身が何をするべきかを考え、チームのために価値あるレースをし、自身の価値を高めるために、レースに取り組む所から結果を出すまで、責任を持てる育成を目指します。

 2年後、3年後には、10代の選手を主な対象として、プロフェッショナルな選手になるための育成をしていきます。

 プロ選手になるために「まずは生活の安定→成功」では情熱は持てない。

 「成功する→お金を獲得する」のがプロ。小さな成功体験も評価され、大きな成功体験はもっと評価される。責任感とモチベーションでどんどん強くなる。それこそがチーム力です。

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Jプロツアー Jプロツアー2015 宮澤崇史

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