matono - こころ,メンタル,人生,恋愛 10:00 PM
愛する人が自殺してしまった時の感情との向き合い方
家族や愛する人が亡くなるのは本当につらいことです。しかも、自ら命を断ってしまった場合は、一体どうやって乗り越えればいいのでしょうか。今回は、身近な人の死の中でも、特に自殺に対する向き合い方について考えていきましょう。
自殺に関するうわさや定説にとらわれない
一般的に、自殺はかなり誤解されています。その結果、社会的に不名誉な烙印を押され、近親者は深い悲しみに浸ることができないだけでなく、最初に必要な助けを求めることもできないこともあります。自殺についてあまり知られていないかもしれない事実を、いくつかあげてみましょう。
- 精神疾患によって自殺するリスクが高い(しかし、必ずしもそうではない)
うつ病の症状で自殺したのだと解釈しようとすることは多いです。全米自殺防止財団(The American Foundation for Suicide Prevention: AFSP)は、そういう場合もあると言っています。しかし、極度のストレスやトラウマ的な出来事、麻薬の乱用、深刻な慢性的苦痛などにより、自らの命を断つ人がいるのも事実です。 - 誰でも自殺する可能性がある
全米自殺防止財団は、2012年は全人種と年齢の男女合わせて40,600人が自殺していますが、統計的に白人男性は特に自殺する危険性が高いと言っています。アメリカ国内では自殺は死因の10位です。 - 自殺は休暇中に起こりやすい訳ではない
よくある定説とは逆に、クリスマス休暇中に自殺が際立って多い訳ではありません。クリスマスが近付いても不安になる必要はありません。疾病管理センターによると、実際12月の自殺率は一番低いのだそうです。自殺率は春と秋に急上昇する傾向にあります。
自殺で身近な人を亡くすのは他の死別とは違う
身近な人が自ら命を断ってしまった悲しみを癒やすのは、他の死因で亡くした場合とはまったく違うということを知っておくことが大切です。心疾患、老衰、交通事故がどのようなものかは理解していても、自殺するに至るまでに、その人の中でどんなことが起こっているのかは分かりません。実際、何の前触れもなく自殺することはよくあります。すべてのケースがそうとは限りませんが、そういうこともあるのです。
当然ながら、身近な人を自殺で亡くした場合は、死と向き合うのがさらに厳しいものです。感情の揺れ動きには、このような段階があることを覚えておいてください。
- 「なぜ...?」と思うのは当然
遺書を残していない自殺者は多いです。遺書が残されていたとしても、どうしてこのような手段を選ばなければならなかったのかと思い悩みます。残念ながら、答えは分かりません。それでも、「なぜ?」と問いかけてもいいのです。 - 怒ってもいい
酔っ払っい運転の車にひかれて亡くなってしまったなら、怒るべき相手はハッキリしています。しかし、自殺の場合は、手を下した人と犠牲になった人が同じです。「私たちのことはどう思ってたんだろう?」とか「私たちのことを考えてくれなかったの?」と思うのは、ごく当たり前のことで、とても自然な感情です。 - 自分を責めるのは自然なこと(でもあなたは悪くありません)
何か悲劇的なことが起こると、避けることができたのではないか(自分に何かできることがあったのではないか)と考えたくなります。これは、このリストの一番上の「なぜ?」とは違う疑念です。「もし...じゃなかったら」と考えるのはよくあることです。ただ、そう考えることでさらに落ち込むのは問題です。自責の念にかられるのは至極当然のことですが、あまり突き詰めて考えないように気をつけてください。自分の命を断つと決めたのは当人なので、それを止めるのはかなり難しいことです。
これらの反応はまったくもって普通のことで、よくあることです。身近な人が自殺した時には、多かれ少なかれこのような感情に襲われるということを、心に留めておくのが大切です。そのような感情はすぐに消えないかもしれませんが、自然と少しずつ別の感情に変わっていくことを知っておいてください。
深い悲しみを乗り越える方法
残念ながら、深い悲しみをすぐに癒やす方法はありません。誰もが身近な人を亡くした喪失感と向き合う方法は知っているでしょう。自殺でもそれは変わりありません。ただし、深い悲しみを乗り越えるためにできることや、おすすめの方法はいくつかあります。参考にするといいものをいくつかご紹介しましょう。
友だちや家族と連絡を取り合う
深い悲しみに打ちひしがれている時は、1人になりたいと思いがちです。もちろん、1人の時間を持つのはいいことです。しかし、少なくとも友だちや家族と定期的に連絡を取るようにした方がいいと「Mayo Clinic」にありました。孤独感やネガティブな感情はうつ病を引き起こす可能性があり、そのような負の連鎖に入り込むと抜け出すのが難しくなります。それに、身近な他の家族や友だちも、あなたと同じように故人を亡くしたことによる影響を受けています。ネガティブな感情から目を背けるよりも、互いに慰め合った方がかなり癒やされます。
1人になる時間と場所を持つ
今の時代、深い悲しみにどっぷりと浸る時間や場所はあまりありません。仕事や学校を休むことができるのはほんの数日ですが(深い悲しみが癒えるのには数カ月、時には数年かかりますが)、あまりにも長く休んで人に仕事を託していると、問題が起こることもあります。全米自殺防止財団は、この埋め合わせをするには、1人になる時間を持った方がいいと言っています。
有給休暇があるのであれば、"悲しみを癒やす時間"としてある程度使ってもいいのではないでしょうか。そのような休みが取れない場合は、仕事の後や週末に1人になる時間を作りましょう。ゲームをしたり、日記を書いたり、ドライブに行ったり、リラックスできることなら何でもいいので、好きなことをしましょう。ただ1人きりになるようにしましょう。常に誰かと一緒に忙しくしていると、しっかりと悲しみに浸る時間がなくなってしまいます。
大きな決断は避ける(もしくは他の人の意見を聞く)
自分ではどうしようもできないものに傷つけられている時、その埋め合わせをするかのように、人は自分でどうにかできるものを変えようとします。仕事を辞めたり、人間関係を終わらせたり、始めたり、新しい場所に引っ越したりするのは、どれも大きな決断です。故人を思い出してしまう場所には住んでいたくないとか、ストレスを減らすために仕事を辞めたいと思うかもしれませんが、悲しみに暮れている間は、そのような大きな決断をするのは避けましょう。そのような状態では100%の判断はできないということを受け入れ、当面の間は決断をしないようにします。
どうしても大きな決断をしなければならない場合は(家の賃貸契約が終わるとか)、1人で決断する前に信頼できる友だちに相談をしましょう。できることなら、故人とは関係のない人の方に相談するのが理想的です。別のグループの友だちや会社の同僚などは、状況を客観的に見てくれるでしょう。
必要であれば専門家に相談する
必要な時に誰かに頼るのは恥ずかしいことではありません。精神科や心療内科などの治療を受けることに対するイメージは、徐々に見直されつつありますが、専門家の治療を受けた方が良いと言うと、いまだに「私はどこも悪くない」と感じる人は多いです。ある意味、その感覚に問題があります。病原菌やバイ菌に触れて体が病気になるのと同じように、悲劇にさらされると心が病気になります。精神が崩壊していなくても、誰にでも助けが必要な時があります。経験のある専門家に助けを乞うことは、これからの人生を前に進める上でも、ごく当たり前のステップです。
精神科や心療内科などに行ったことがなく、よく分からないという人は、米Lifehackerの過去記事を参考にしてみてください。本格的な治療を受ける金銭的な余裕がない場合の対処法についても書いています。米LifehackerのライターMelanie氏は、最初に診てもらった専門家が助けにならなかったとしても、他の人も助けにならないということではないと言っています。自分に合った先生やセラピストを見つけることが大事です。ですから、合わないなと思ったら他の人に変えてもらったり、別のところで探したりするのをためらわないでください。
Eric Ravenscraft(原文/訳:的野裕子)
Photos by Cathy Baird, Antoine K.
- 自殺
- 末井 昭朝日出版社