ヘイトスピーチ:法規制求める意見書 地方議会続々採択

毎日新聞 2014年12月20日 15時00分

 社会問題化しているヘイトスピーチについて、国による法規制などを求める意見書の採択が地方議会で相次いでいる。背景には、在日コリアンへのヘイトスピーチを人種差別と認めた判断が確定した今月9日の最高裁決定があり、19日に可決された3自治体の意見書にはいずれも決定の内容が盛り込まれた。意見書に拘束力はないが、差別や偏見をあおる行為に「NO」を表明する動きが全国で広がり始めた。

 「2020年には東京五輪・パラリンピックが開催されるが、ヘイトスピーチを放置することは、国際社会における我が国への信頼を失うことにもなりかねない。法整備を速やかに行うことを強く求める」

 さいたま市議会は19日、こう記された意見書案を全会一致で可決した。多文化共生政策に取り組んできた高柳俊哉議員(民主)は「市内ではJリーグのサポーターが差別的な横断幕を掲げる問題もあった。住民に一番近い立場の議会から要望を国に伝えることは意義がある」と話す。

 堺市議会と鳥取県議会も同日、国に法整備などを求める意見書を可決。採択に向けた活動を進めてきた同市議会の山口典子議員(無所属)は「人種差別を禁止する法律を持たない先進国などありえない。排外主義団体が公共施設を使って活動していることにも憤りを感じる」と語る。

 国に対策を促す地方議会の意見書を巡っては、東京・国立(くにたち)市議会が今年9月に全国で初めて可決。国連の人種差別撤廃委員会が8月に政府による法規制を日本に勧告した影響とみられ、名古屋市と奈良県議会も9月議会で採択した。

 流れを後押ししたのが「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の街頭宣伝活動を人種差別と認め、在特会側に約1200万円の賠償を命じた1、2審判決が確定した最高裁決定で、この12月議会では長野県▽福岡県▽京都府向日(むこう)市▽埼玉県宮代(みやしろ)町▽東京都東村山市▽同葛飾区−−などで可決された。

 ヘイトスピーチの問題に詳しい師岡康子弁護士は「住民生活に密着した地方が国に毅然(きぜん)と態度表明をする意味は大きい。地方独自の取り組みを始めているところもあり、国は速やかに対策に取り組むべきだ」と指摘する。【小泉大士】

◇ヘイトスピーチを巡る最近の動き◇

2013年

10月 京都の朝鮮学校への街頭宣伝を巡る訴訟で、京都地裁が「人種差別」と認め、在特会側に約1200万円の支払い命令

2014年

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