<東北電・火力入札>一般企業にハードル高く
東北電力が、火力電源の調達コスト圧縮を目指す国の指針に基づき初めて実施した競争入札は、応札したのが同社のみという「無風」のまま終わった。電源開発計画に盛り込んでいた火力発電所の増設と新設を前提に臨んだ東北電は胸をなで下ろすが、一般企業からは参入のハードルの高さを指摘する声が上がる。
入札募集は8〜11月、出力60万キロワット2件を対象に行われた。東北電は中長期的な供給力を自社で確保する必要があると判断。能代市の能代火力発電所に増設する3号機(石炭)と、新潟県上越市に新設する上越火力発電所1号機(液化天然ガス)の計画実行を念頭に、単独落札を目指す方針を当初から表明していた。
4月の事前説明会には製造業や電気事業者、商社など35社59人が出席。募集を開始した8月の説明会は11社17人が姿を見せた。だが結果は他社応札ゼロ。能代、上越の建設が事実上決まった。
東北電の海輪誠社長は11月の定例記者会見で、「多数の事業者が出席し、相当の応募があると思った。結果的に応募がなかったが、従来に増して十分な効率化を織り込んだ設備形成を目指した」と強調した。
他社の応札がなかったことについては、燃料の種別や立地場所が不問の公募条件とはいえ、燃料調達や送電網整備などのノウハウが豊富な電力会社と、一般企業が競争する難しさが背景にあるとの見方が出ている。
エネルギー事業に携わる製造業関係者は「保有する設備が活用できたり、複数企業が連携したりしない限り、電力会社との競争は非常にハードルが高い」と明かす。
11月までに電力大手4社が行った同様の入札5件のうち、競合に至ったのは九州電力の1件だけ。中部電力は自社応札のみ、関西電力は応札せず製造業1社が入札と、いずれも低調に終わった。
資源エネルギー庁電力市場整備課の担当者は「入札実施によって電力会社も効率化の努力をする。自社応札のみでも、競争原理は一定程度働いたと考える」と説明する。
国の火力電源入札ワーキンググループ座長を務める山内弘隆一橋大大学院教授は「今回は本格競争への過渡期。小売り自由化や発送電分離が進む今後は、より高い公平性の確保策や参加要件の緩和が求められることになるだろう」と指摘する。
[火力電源入札]電気料金の適正な原価と電力会社の経営効率化を促す目的で、資源エネルギー庁は12年、自社で1000キロワット以上の火力電源を新増設する場合の競争入札実施を求める指針を策定。本年度は東北、東京、中部、関西、九州の5電力が実施した。15年3月末に募集を締め切る東京を除く4社は、国の火力電源入札ワーキンググループの審査を経て、落札者が正式決定する見通し。
2014年12月20日土曜日