ライトノベルから見た少女/少年小説史: 現代日本の物語文化を見直すために










まあ、ツイッターに書いたように、明治時代からの少年少女小説についてきちんとまとめている21世紀では始めての本ではなかろうか。
1970~80年台には「少年倶楽部」世代がリタイアをし始めて、暇と金ができたことから、懐古趣味の一環として「少年倶楽部」の復刻が行われたり、「のらくろ」の復刻版が出たり、「月刊のらくろ」なんて雑誌も出たりした。二上洋一氏など一部には「少年倶楽部」の作品の再評価を試みたこともあったけれども、結局尻すぼみで終わってしまった。あいかわらず児童文学研究界では、「ごんぎつね」だの「少年戦旗」だのといった、あらまほしき児童文学の幻影ばかりを追い求めている。しかし実際に子供の精神世界に影響を与えたのは、彼らが悪書として忌み嫌っていた「少年倶楽部」であり「少年マガジン」であり「コロコロコミック」だったのである。
しかし繰り返しになるが、山中峯太郎のほんの数行の部分だけでも、これだけ間違いがあるということは、他の部分の信頼性を著しく貶めることになってしまう。幸い私は峯太郎について基本的なことを知っているから指摘できたのだけれども、他の作家についてはできない。ではそれが正しいのかというと、峯太郎の部分の怪しさから、正しいと信頼を置くことができないのである。だからこの本を参考文献として研究に使うのはためらわれる。もしこれも峯太郎と同様に間違っていたらどうしようと、不安になってしまう。もしかしたら峯太郎のところだけなのかもしれないが、信頼というものはそんなものだ。著者にはぜひとも再販の際には徹底的な見直しをお願いしたい。