地方創生:5カ年計画で若者雇用30万人 人口減歯止めに
毎日新聞 2014年12月20日 05時30分(最終更新 12月20日 09時51分)
安倍政権が最重要課題に掲げる地方創生の5カ年計画「総合戦略」案の全容が判明した。地方の人口減少に歯止めをかけるため、地方の若者の「安定した雇用」を2020年までに計30万人創出する目標を明記。自治体の裁量で使える自由度の高い新型交付金や、企業の地方移転を促す税制などの創設で「東京一極集中」を是正するとしている。24日に与党に提示し、27日にも閣議決定する。
総合戦略案は、若者が希望通りに結婚・出産・子育てをするため、「子どもが持てるような年収水準(例えば独身で300万円、夫婦で500万円)を確保する安定的雇用が必要」と強調。地方の若年層の雇用創出目標を、初年度の15年度は2万人と設定した。
その後は各年度に目標を2万人ずつ増やして5年後に10万人まで引き上げ、累計で30万人の雇用を確保する。内訳はベンチャー企業や地域の中核企業、海外からの投資の支援などで11万人、農林水産業の成長産業化やサービス業の労働生産性向上、観光拡大などで19万人と想定している。
さらに5年後の10万人の雇用を受け皿に、東京圏から地方への転出者を4万人増やし、東京圏への転入者は6万人減少させる目標を掲げた。これにより、東京圏と地方の転出・転入を約22万人で均衡させ、「東京一極集中の流れを止めることを目指す」としている。
具体策の目玉として、自治体への新型交付金制度の創設を明記。「地方版総合戦略」を策定した自治体に客観的な目標設定や効果の検証などを条件に交付する。政府が年内にまとめる経済対策に先行的に盛り込み、16年度以降に本格的な創設を検討する。
また、本社機能の一部を地方に移転する企業への優遇税制や、勤務地を限定した正社員制度を導入するなどした企業への「キャリアアップ助成金」の拡充なども盛り込んでいる。
安倍晋三首相は衆院選で「アベノミクスの成果として2年で100万人の雇用を作った」と強調。ただ、今年7〜9月の国内の正社員数は2年前より22万人減の3305万人、非正規社員は123万人増の1952万人で、野党から「増えたのは非正規雇用」と批判も受けた。今回の総合戦略案は多くの数値目標を掲げ、正社員を中心に地方の安定雇用の拡大を目指す内容だが、実際の各施策の効果には未知数な面も多い。【田中裕之】