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【社会】

子どもの貧困 見えぬ光 対策推進法 施行1年

2014年12月20日 07時04分

水道を止められ「去年のクリスマスはひどかったね」と話す親子=東京都豊島区で(嶋邦夫撮影)

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 華やいだ雰囲気のクリスマスが近づくにつれ、東京都内の公営住宅で暮らす女性(50)と長女(12)は昨年のこの時期を思い出す。料金が払えずに水道を止められ、炊飯器やポットを手に、近くの公園まで二人で往復した。子どもの貧困対策推進法が施行されて間もなく一年を迎える。この親子に、明るい未来はまだ見えない。 (小林由比)

 長女が幼かった頃、女性は暴力を振るう夫と離婚した。精神的に不安定になり、小学校に通えなくなった長女に寄り添うため、介護福祉士のパートは週四日に。生活保護を受ける。

 長女は一年ほど前から、フリースクールに通い始めた。街中でかわいいバッグを持つ子を見ていいなと思うけど「欲しい」とは言わない。「住む世界が違うから」。楽しみは何百円かで買うマンガの古本。でも「一日食べられる額だと思うと、お母さんに申し訳ない」という気持ちになる。

 最近はスクールの仲間とダンスや歌を練習し、発表する機会もあって「ハリウッドスターになりたい」と夢を持った。将来、留学できればと思うことも。留学はもちろん、進学も自分で道を切り開くしかない。

 明るい表情を見せるようになった長女を前に、女性は自分の収入が少ないことが、長女の将来を縛っていると感じ、「負の連鎖を断ち切れない」と漏らす。子どもの貧困対策推進法について「きめ細かい対策がないと救われない」と話す。

 親を亡くすなどして「あしなが奨学金」を借りる子どもたちの集まりが今月、都内であった。福岡県立高校三年の男子生徒(18)は高校受験の一カ月前、ひとり親の母を病気で亡くした。金銭的な余裕がなくて葬式も出せなかった。授業料の高い私学は絶対に行けない。確実に受かる高校に変更して合格した。

 不本意な気持ちは入学後も消えなかった。「大学に行くお金がないと思うと、勉強にも身が入らなくて」という時期を乗り越え、教育学部の夜間学部を目指す。大学の学費や生活費は全て、奨学金とアルバイトでまかなうつもりだ。

◆数値目標・経済支援盛り込まず

 一定の条件で調整した可処分所得(手取り収入)の中央値の半分以下で暮らす十八歳未満の子どもの割合(子どもの貧困率)は、二〇一二年で16・3%。中央値は一二年で二百四十四万円。その半分に満たない世帯の子どもが日本は約六人に一人いることになる。

 子どもの貧困対策推進法は今年一月に施行、国は八月に基本方針の大綱をまとめた。貧困が世代を超えて連鎖しないよう環境整備を図るとするが、貧困率削減の数値目標はない。財源のめどがないとして、児童扶養手当の増額など経済支援策も盛り込まれていない。

 城西国際大学の遠藤恵子助教(社会学)は「親の経済状況に左右されずに学べるよう、給付型の奨学金を増やすなど具体的な支援策が必要。社会的な支援につながるための情報が得られていない子どもも多い」と指摘する。

(東京新聞)

 

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