2014-12-19
■2014年の映画をふりかえる/結果発表
みなさんこんにちは。このブログを書いている伊藤聡ともうします。今年もまた「ふりかえる」の季節がやってきました。今年公開された映画についてふりかえりつつ、いただいた回答をまとめていきたいとおもいます。地味に続いてきたこの企画も11年め、開始当時にはまだ生まれていなかった甥っ子は9歳になり、わたしはけがをしたり病気をしたりすると、治るまでにえらく時間がかかるようになりました。年月が経過したわけですね。今年も、このような質問内容でアンケートを募りました。
- 名前/性別/ブログURLもしくはTwitterアカウント
- 2014年に劇場公開された映画でよかったものを3つ教えてください
- 2で選んだ映画のなかで、印象に残っている場面をひとつ教えてください
- 今年いちばんよかったなと思う役者さんは誰ですか
- ひとことコメント
今回の回答者は159人でした。回答いただきありがとうございます。毎年、ベスト10に入る作品を見逃してしまったらどうしようと心配しているのですが、今年も全ての映画を劇場でリアルタイム鑑賞できていました。よかったです。さっそくですが10位から順番に結果を書いていきます。今年も本当にいいセレクションになったというか、応募してくださった方たちのセンスのよさに感謝したい10本になりました。なお、同率で複数作品がランキングされたため、同じ順位に2作品、ないしは3作品が入っている場合があります。
「母さんの葬式の後、落ち込んでるキャップにバッキーが「最後まで一緒だ」って言うシーン。ラストとセットで毎度泣きます」(なんすけさん)
「実戦でシールドを使って格闘したらどうなるか?」を見事に映像化」(カミヤマさん)
「音響や効果のリズム、アクションのリズム、肉のぶつかる音、骨のぶつかる音、すべてがパズルのピースのようにきれいにはまっていく気持ちよさ」(ピートさん)
『キャプテン・アメリカ』新作は、アメコミヒーロー映画でありつつ、本格ポリティカル・ドラマとしての風格を備えた構成がすばらしかったと思います。いちばんの武器が盾っていうのがいいんですよね。ビームとかが出ない。その地味さ。アベンジャーズのなかでも目立たない部類に入るキャップの映画がこんなにカッコよくて、これからのマーベル作品はどうなってしまうのかという期待感にもつながる作品。ぜひ見てみてください。
「ああ、このまま3人には幸せになって欲しいけどきっともう一困難襲ってくるのだ」(ケイさん)
「海をじっと見つめた池脇千鶴さん。あの笑顔がとても印象に残っています」(木村麻美さん)
「邦画をナメぎみだった自分に一発くらわしてくれました」(440さん)
今回ランキング入りした、唯一の日本映画。函館を舞台にしたラブストーリーです。非常に美しくすばらしい作品なのですが、わけても「日本の宝」こと池脇千鶴の存在感が圧倒的。わたしはしだいに心が池脇千鶴(チーちゃん)に憑依していき、自分がチーちゃんとなって、劇中の苦しい状況に飲み込まれていくかのようで胸を打たれました。撮影もスタイリッシュ、俳優陣もみごと。もちろん大推薦です。
「その凄惨さ、その哀しさ、そのおぞましさ!」(神尾梧郎さん)
「映画が現実を動かす力を持つことを示してくれた」(zozozomiさん)
「私の倫理観を根底から揺さぶってくれました」(森慶三さん)
かつてインドネシアで大虐殺を行った集団は、罰せられるどころか、いまだに彼の国の英雄として扱われていた。本作の監督は彼らに、過去の虐殺を映画として撮影することを持ちかけ、俳優としてふたたび演技してもらえないかと依頼するのだが……という、前代未聞のドキュメンタリー作品です。何が前代未聞かといって、依頼された男たちが嬉々として虐殺の再現を演じてしまう点。現実とはことほどさように冗談めいて間が抜けているのかと、脱力させられてしまう。公開時の劇場内は、「ハァ…」というため息と失笑に包まれつつ、ラストの戦慄に到りつくのでした。陰惨な事件であるはずなのに、どこか冗談のようでもある、さまざまな衝撃/コント的展開も見どころ。
「セオドアとサマンサがロッジで作る胸が締め付けられるような美しいラブソング」(ナニヤラヒロコさん)
「世界は美しい 360°くるくるデート」(タレさん)
「あんなの好きになっちゃうよー!」(loomerさん)
スパイク・ジョーンズ新作。コンピューターのOSが人格を持ち、人間と会話ができる世界で、主人公の男性は、チャーミングなOSと恋愛関係に陥るというSF的設定を持ったラブストーリー。美しい画面や凝った衣装、ビジュアルデザインも魅力的であり、人間関係の難しさ、繊細さが胸に沁みる切ない物語です。自分もOSとずっと話していたら恋愛関係になってしまうのではないだろうかという気になるのです。男性、女性問わずにたのしめる作品ですね。それにしてどうして人はこうまでして他者を求めるのだろうかと、なんだか身も蓋もない疑問が湧いてしまう映画でもあります。
「今年一番のサプライズ」(いちろうさん)
「ただ事ではない雰囲気」(こばやしおさむ)
回答募集時、公開してまだ3日しか経っていなかった、デイヴィッド・フィンチャー新作『ゴーン・ガール』がさっそく選ばれているのですが、これはネタバレ厳禁系の作品であるため、具体的な説明ができません。えー、猫がかわいいです。人生ゲームで遊ぶ場面があります。ダンナのアゴが割れています。ああ、もう何も言えないんですけど、まさにいま映画館でやっている作品なので、すぐに見に行ってノックアウトされてください。
「期待を上回る凄い作品で、ダントツで大好きな作品になりました」(Taisさん)
「意外な結末がとても心に残っていた」(マーリーさん)
「LEGO MOVIEのDVDを甥っ子5歳にプレゼントしたのですが、翌月会った時に「すべてはさいこ〜」と歌いながらレゴで遊んでいたことも嬉しい出来事でした」(まーさん)
すべては最高〜! 劇中に登場するすべてがレゴでできた映画を作る、というコンセプトに基づいて撮影された『LEGO®ムービー』は、単なる子ども向け映画という枠を完全にこえて、ポップアートの領域にまで到達した、見ようによっては過激なまでにアヴァンギャルドなフィルムです。『くもりときどきミートボール』('09)、『21ジャンプストリート』('12)のクリストファー・ミラー/フィル・ロードのコンビが監督し、テンポのいいストーリーと効果的なギャグの連打でたのしませつつ、最終的には「レゴで映画を撮ること」にきっちり決着をつけ、さらには「何かをクリエイトすること」という問いにまで到達してしまいます。今年もっとも変わった映画ということもできるし、王道のエンタテインメントとしてごく普通にたのしむこともできる映画でもあります。
「偶然を必然に変えていくような意志の力を、物語と映像の力で圧倒して見せてくれる」(ayaさん)
「「そう来るかー!」という感じで鳥肌が立ちました」(kapibakuさん)
「視覚的にも聴覚的にも没入感が強く、エンドロールが終わってしまうのがとても惜しい作品」(永瀬さん)
こちらも公開したばかりのクリストファー・ノーラン新作。やはり人気ありますね。これだけたくさんの人に好かれ、気持ちを動かす監督ってすごく貴重だとおもいます。これもネタバレさせたくないので、あまり内容には言及できないのですが、ロボットがかわいいし、いざというときに頼りになるので実によかった。マン・オブ・ザ・イヤーでもあるマシュー・マコノヒーのセクシーな父親ぶりも魅力的です。気になっている方はぜひ映画館で見てみてほしいです。
「完璧じゃないけれど、何があっても子供たちに寄り添う姿に心から共感できた」(イズミルさん)
「自分の幼少期の思い出結びついてしまった」(タマ子 怒りの鉄拳さん)
「12年が俳優陣の演技にものすごい力強さを与えている」(まるさん)
先日オバマ大統領が、2014年のフェイバリットとして本作を挙げていましたね。おそらく、劇中の登場人物がオバマ支持で、マケインの看板をこっそり外したりするくだりがあったからじゃないかなと思うのですが…。ははは。この映画は12年かけて撮影されており、6歳の子どもが実際に18歳になるまでの過程をフィルムに収めたという、映画史的にいってもあまり前例のない試みをした作品です。そうした手法が単なるギミックに終わらず、きちんとストーリーと融合して、見る者に何ともいえない余韻をもたらしているのがすばらしいところ。少年の成長譚は、同時に、アメリカという国の物語としても機能しているようにおもいます。身長の変化や声変わりなど、子どもがしだいに成長していく過程がリアルに記録されているのは、とてもふしぎな気分にさせられます。ランキング上位に来るのも納得の作品。
「どのワンシーンを切り取っても、「あの映画のシーン」だ、とわかるようなビジュアルの強さがある」(onerachakoさん)
「MENDL'Sのケーキ」(akikowaさん)
「無数の色褪せない思い出が自分にも沁み渡るようだった」(Pynchon さん)
ウェス・アンダーソン新作。1930年代、欧州のとあるホテルを舞台にした作品。色づかいの美しさや、ファッション、小物にいたるデザインの完璧さ、そして徹底した左右対称の画面構成など、細部まで美意識がつらぬかれた作品です。どの場面もきわめて心地よいフィルムであり、キュートでファッショナブルな意匠の数々がていねいに行き届いているのが魅力。物語のなかに、現実とは独立したひとつのオリジナルな世界が存在している、その箱庭のような感覚に酩酊させられるのです。画面を見ればたちどころに「ウェスの映画だ」とわかるほど、完全にオリジナルな世界観を構築してしまったウェス・アンダーソンが、これからどこまでのその純度を高めていくのか非常にたのしみです。
「ディカプリオ史上最高のディカプリオ」(タイラさん)
「ディカプリオがかっこいいスポーツカーに乗り込むためにうねうね頑張ったり、ポパイみたいに頑張ったり、とにかくとても頑張る」(ayakomiyamoto(ぼんやり上手)さん)
「フルスロットルのスコセッシ映画」(そーす太郎さん)
♩んーん(ドンドン)んーん(ドンドン)……と、おもわず胸を叩きながらマネーチャントを始めてしまいそうなほどに、この映画は最高でした。このところ地味だったマーティン・スコセッシが、いつもの感じで完全復活! どこまでも自由快活に監督した作品がこの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』であります。法律などはなから守る気のない経済ギャングが、あの手この手で人をだまして大儲け。麻薬、酒、性行為に明け暮れ、それでいて反省の念はゼロというすがすがしいだめ人間っぷりに、たくさんの人が感激していたようです。この映画を見れば、たいていの悩みはわりとどうでもよくなるので非常にオススメです。
「4人でステージに立てる喜びが結晶になったような名場面」(いちこさん)
「クリストファー・ウォーケンがめちゃ楽しそう!」(c3po2006さん)
「幸せな人生の最期を見ているかのよう」(あなたさん)
イーストウッド新作。もちろんとてもいい映画なのですが、ここまで上位に来るとはおもっていなかったです。実在のグループ、フォー・シーズンズを題材にした音楽映画。ファンが多い作品なんだなーとあらためておもいました。演奏シーンも多数ありますが、基本的にストーリー中心の構成になっていて、グループの4人が栄光と凋落をともにするという展開が悲しくも美しい。ここぞという場面で流れるヒット曲も感動的ですね。ラストの見せ方もみごと。
「観終わった後の多幸感、最ッ高に楽しかった」(ブギ缶さん)
「SF映画、アメコミ映画の新たなる時代の幕開け」(ヒカルさん)
「タイトルが出るところ!」(caprice______さん)
1位は当然、これしかないという感じ。大げさにではなく、時代的にひとつの区切りとなるような作品、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』以前/以降という形容のしかたをされる特別な作品です。スペース・オペラの最新アップデートであり、アメコミ映画の大転換となる重要なフィルムだとおもいます。まずは何といっても、圧倒的に新鮮な音楽の使い方に快哉を叫びました。観客は冒頭、タイトルが出た瞬間に、これはとんでもない何かが始まったぞと、座席で身悶えすることとなります。はみだし者(outcast)たちが協力しあい、ひとつの目的を成し遂げるというストーリーも、王道でありつつ強く胸を打たれるものです。よって、今年この映画を見ないというのはまずもって考えられません。地球に住む人間の義務として、ぜひご覧になってください。
ということで、2014年の映画をふりかえるの最終的なランキングはこちらです。どれもいい映画ばかりですね。自分でいうのも何ですが、このリストは非常に質の高いものだとおもいます。ふだんあまり映画を見ない方も、信頼してチェックしてみてくださいませ(ソフトの欄は、現時点でソフト化されているかどうかです)。
そして人気俳優部門では、マン・オブ・ザ・イヤー、マシュー・マコノヒーがいちばんの支持を集めていました。マコノヒー、最高ですよね。本当にHOTな男だとおもいます。
最後に、もっともふつうな感覚を持つ方に送られる「空中キャンプ賞」です。基準として、1位の映画を選んだ場合は1点、3位を選んだのであれば3点と計算し、選んだ3作品の合計点数がもっとも低い方に差し上げています。まーさん(1位、2位、7位)やタレさん(1位、2位、9位)も惜しかったのですが、手がたく2位、3位、3位でかためたayakomiyamoto(ぼんやり上手)さん( https://twitter.com/ayakomiyamoto )が、今年の空中キャンプ賞となりました。かねてから「ふつうの人だなー」とはおもっていましたが、まさかここまでふつうだとはおもいませんでした。これからも、平凡なまま生きてください。応援しています。最後に、回答いただいた方に感謝いたします。いただいた回答は後日アップいたしますのでお待ちください。
かしこ
伊藤聡拝