人工声帯市長:市議会で辞職要求の動き…ネットで批判の渦
2014年12月19日
山形県酒田市の本間正巳市長
咽頭(いんとう)がんの手術を受け、声帯を切除したため電気式人工咽頭(人工声帯)を使っている山形県酒田市の本間正巳市長(67)に対し、市議会の一部会派が辞職を求めようとしたところ、インターネット上などで批判される騒ぎとなっている。
本間市長は11月25日に公務に復帰。12月5日に市議会で人工声帯を使って議案説明した。その際、「声が聞き取りづらく、職務を全うできるのか」との声が上がった。16日の市議会運営委員会で、第3会派「市民の会」の議員が、市長辞職勧告決議案の提出を各会派で協議するよう提案。だが、他会派から「そこまでする必要はない」など反対論が相次ぎ、提案は退けられた。
この件を報じた17日付の地元紙・山形新聞のニュースサイトの記事が広がり、19日現在、ヤフーニュースの引用ツイート数は3200を超え、フェイスブックの共有は6700に。ツイートは「障害者差別では」「声が出せなくても、どうすればできるのかという視点が欠けている」と批判する声が多い。
提案した議員は毎日新聞の取材に「市長が職責を全うできるのかを協議すべきだという考えだった」と説明。「差別する気持ちは一切ない」と困惑した様子で話した。
咽頭がん患者らを支援する「口腔・咽頭がん患者会」(大阪府高槻市)の三木祥男代表は「社会復帰している人もおり、辞職を求めるのはおかしい。声帯を失うことに不安を感じている患者は多く、市長が公務に復帰したのは患者たちの励みになっていると思う」と話した。【光田宗義、中村美奈子】