補強大成功、一人勝ちオリックスの背景
球団が描く常勝軍団への青写真
“泣き所”を的確に補い周囲を驚かせた大型補強
しかも、小谷野が12月4日に森脇浩司監督が同席のもと、入団会見に臨むと、翌5日には中島との契約合意が発表され、またも森脇監督同席で入団会見。同6日にはブランコとバリントンの入団決定が球団から発表されるなど、これまでのオリックスでは考えにくいほどの手際の良さだった。しかも、その補強ポイントが、今季の“泣き所”となった部分を、実に的確に補っているのだ。
今季、福岡ソフトバンクと最後まで優勝争いを展開しながら、2厘差でのV逸。その選手層の薄さが、最後の最後に響いた。代打でのチーム打率はリーグ5位の2割1分6厘。ベテランの谷佳知や高橋信二の調子が上がらなかったこともあり、控えの右打者に決め手を欠いた。さらに1番打者を務めていた平野恵一が、9月24日の西武戦(京セラドーム)で左手に死球を受け、シーズンの残り9試合を欠場。二塁には原拓也が起用されたが、すると左の代打も手薄になり、坂口智隆を代打で使ってしまうと、今度は終盤の外野の守備固めや代走要員にコマを欠く始末……。そうした悪循環に、年間を通して悩まされ続けてきた。
森脇監督とフロント側の狙いが一致
オリックスも今季、外野手登録のT−岡田が一塁手として初のゴールデングラブ賞を獲得、平野恵は二塁と外野、安達も二塁と遊撃、駿太と糸井嘉男は中堅と右翼、坂口も中堅と左翼と、主力陣は例外なく複数ポジションを守っている。この“豊富なバリエーション”が、選手層に不安のあるオリックスでは不可欠で、森脇監督が小谷野と中島を「ウチにフィットする選手」と称したのも、そうした特色を備えているからだ。
また、今季32本塁打を放ったペーニャは、優勝争いが佳境を迎えた終盤戦に精神面の弱さを露呈。これに代わる新主砲として、ブランコの獲得にいち早く動いた。これで来季は「3番・糸井、4番・ブランコ、5番・T−岡田、6番・中島」と左、右、左、右のジグザグで中軸を組み、7番に小谷野が座るという、破壊力十分の打線となる。一方で、勝負強い川端崇義や、最多安打のタイトルの実績を持つ坂口らがレギュラーの座から漏れかねない。これも「競争を活発化させたい」という森脇監督とフロント側の狙いが一致している。