ぜんぶ、雪のせいだ。
そんなキャッチコピーに都市部が大雪で沈んだのが前回の冬だったんだけど、今回は「答えは雪に聞け。」という更に挑発的なもの。
「ぜんぶ雪のせいだ」の次回作のJRのポスターのコピーが「答えは雪に聞け」なんだけど、これもまた大雪が降って「電車はいつ動くんだ!?」という状況になったらマジで洒落にならない。
— のりまき×ぜろすけは68点 (@zeromoon0) December 12, 2014
でもこのJRのコピー、個人的には結構好きです。心に残るのに誰でも思いつきそうで、しかも汎用性がある。「そうだ、京都、行こう」とか「7月6日はサラダ記念日」みたいにいろんなパロディになりやすいコピーっていうのはある意味秀逸なんだと思う。サラダ記念日はコピーじゃないけど。
キャッチコピーにイラっとするとき
そんな感じでちょっとキャッチコピーの話。いちおうコピークラスタやってたときもあるからさ。
日本郵政の「年賀状」広告がとてもモヤッとしました。 - 大彗星ショッカーのヒマつぶし
ちゃんと年賀状。
ちゃんと大人。
年賀状を作ってる私。
正真正銘の大人です。
きちんと出すから、信頼される。
「人間力」みたいな、
「年賀状力」ってある。
これは確かに「おおぅ……」という感じかもしれない。確かにひどい。
ひとつめの「ちゃんと年賀状。ちゃんと大人。」はまず「ちゃんと」がよくない。育児関係でもよく「対象をはっきりさせない『ちゃんと』は禁句」って言われているし、何をもって「ちゃんと」なのかがわかりにくい。だから「ちゃんと大人」というフレーズは非常によくない。「ちゃんリンシャン」くらいインパクトがないと不発に終わるワードだ。
ふたつめは「正真正銘の」というところがまずかった。単に裏返すと「スマホであけおめとかマジガキかよwwww」という感じになってしまう。「大人になった気がした」とかだったらまだよかったのに、コピーの製作者側が「年賀状=大人」「スマホ=ガキ」という定義がスケスケになっている。これはよくない。
みっつめは、まず長い。言いたいことが伝わりにくい。「きちんと出すから、信頼される。」だけでも十分だと思う。これでもちょっとイヤらしい感じがするので「信頼できる人から、今年も届きました」とか個人体験のように語らせることでイヤらしさが半減すると思う。そして後半は全くの蛇足。「~力」というワードは安易に使うと非常に危険だ。「年賀状力」というのであれば、ただハガキをポストに入れるのではなく、メロディ付き年賀状とか変わり種年賀状を駆使して年賀状マスターになるみたいなストーリーでもあると捉え方は変わったのでないかと思う。
つまりは三つとも「年賀状」本来の宣伝ではなく「おれたちのかんがえたさいきょうのねんがじょうをだすようなひとたち」になってしまっているのだ。ターゲットを絞ったコピーというのは大事だけど、対象外の人を馬鹿にするようなことで承認を得るようなコピーはよくない。
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キャッチコピーが独りよがりでおかしいという話は以前にもあった。「ニッポンは、 世界中から尊敬されている映画監督の出身国だった。お忘れなく」というコピーはあまりにもひどい。
まずこちらのコピーも長い。「お忘れなく」があまりにも余計。そして前半の「ニッポンは、」の部分もわかりきった情報なのでいらない。あとは「出身国」という表現が直訳っぽくて回りくどい。そして時制が「尊敬されている監督の出身国だった」とおかしい。つまり今は「尊敬されている監督の出身国」ではないのだろうか?
いろいろ踏まえて自分なりにリテイクしてみると「かつて、この国には世界中から尊敬されていた映画監督がいた。」くらいになるかなぁ。それにしてももう少し何とかならなかったのか……。
「大丈夫、それはあなたに言ってない」
こういう見る人を選ぶコピーをなくすことは不可能だ。パーリラパーリナイというノリが好きな人も嫌いな人もいる。「盛り上がっていこうぜ!」というメッセージを伝えるのも様々なアプローチがあるのだ。
どうしても広告と言うのは「訴えてくるもの」なんだけど、すべてを真面目に受け止めてはいけない。上記のように広い範囲に訴えているのに滑っているモノは置いておいて、たとえば「彼女のいないあなたに」とか「これさえ飲めばハゲが治る」とか、そういう限定的なキャッチコピーにたまに怒っている人がいる。「今年の冬は素敵なデートを楽しもう、だと? 彼女のいない俺に対するあてつけか!?」みたいな感じ。
もちろんコピーはデートプランを探しているカップルに向けられたものであって、彼女を探せと言う話ではない。でも全ての発信物を「自分事」として捉えるとそういうことになってしまう。
情報過多の社会では全ての情報を真に受けていては体が持たない。不要だと思う情報はばっさりと斬らなければいけない。だから何かイラっとくる情報に出会ったときは「大丈夫、それはあなたに言ってない」という合言葉を思い出そう。たまにひとりで怒っている人には、この言葉をかけてあげよう。
これってネットとの付き合い方に似てますね。ネットとリアルが次第に近くなっていく感覚だ。