米とキューバ 来月から国交正常化交渉開始12月18日 11時32分
国交を断絶し、半世紀以上にわたって対立してきたアメリカとキューバが、来月から国交正常化に向けた交渉を始めることになり、両国の関係は歴史的な転換点を迎えました。
アメリカのオバマ大統領は17日、ホワイトハウスでキューバとの関係について演説し、「50年以上にわたる政策の最も重大な転換を行い、これまで失敗してきた時代遅れの手法を終わらせる」と述べ、キューバ政策を抜本的に転換すると表明しました。
一方、キューバのカストロ国家評議会議長も同じ時間にテレビ演説を行い、「前日にオバマ大統領と電話で話し、両国が抱える問題の解決に向けて前進できると確認し合った」と述べました。
アメリカ政府は来月、ジェイコブソン国務次官補が率いる代表団をキューバに派遣し、国交正常化に向けた交渉を開始する方針です。
また、数か月以内にキューバの首都ハバナにアメリカ大使館を設置し、キューバへの渡航や送金の制限を緩和するほか、テロ支援国家の指定も見直すとしています。
オバマ大統領は、これまでの封じ込め政策では成果を得られなかったとしてキューバへの関与を強めることで民主化を促したい考えで、残り2年の任期中にキューバを訪問することも排除しないとしています。
一方、キューバとしては、アメリカの経済制裁の緩和で各国からの投資を呼び込み、低迷する経済の回復につなげたいという思惑があります。
アメリカとキューバは、キューバ革命などを受けて1961年に国交を断絶し、半世紀以上にわたって冷戦の終結後も対立関係にありましたが、歴史的な転換点を迎えました。
背景には経済の低迷
キューバがアメリカとの関係改善を図る背景には経済の低迷があります。
1961年、アメリカはキューバとの国交を断絶し、翌年にはキューバとの貿易を全面的に禁止して本格的な経済制裁を始めました。
こうしたことから、キューバは旧ソビエトなどとの関係を強化し、経済面では、主要産品のサトウキビを旧ソビエトに輸出する一方で、輸入に頼っていた石油の供給を受けました。
ところが、旧ソビエトが崩壊したあと、キューバは経済的な支援を失い、慢性的な経済危機が続きました。
近年は南米・ベネズエラから輸出される割安の石油がキューバ経済を支えてきましたが、反米左派政権のチャベス前大統領の死去や最近の原油安を受けて、こうした支援も先行きが不透明となっています。
キューバ革命を起こしたフィデル・カストロ氏に代わって国家評議会議長に就任した弟のラウル・カストロ氏は、経済を立て直そうと、市場経済の部分的な導入を進めるなど改革に取り組み、外国企業を誘致するための法整備や開発特区も設置しています。
しかし、アメリカの経済制裁の影響で、ほかの各国からの投資が抑制され、経済成長の足かせとなってきました。
このため、キューバとしては、アメリカの経済制裁を緩和させることで、各国からの投資を呼び込み、低迷する経済の回復につなげたいという思惑があります。
また、アメリカ人の渡航の制限が緩和されれば、アメリカから150キロほどの距離にあり、温暖な気候でエキゾチックな風土のキューバには、多くの観光客が訪れると見込まれています。
さらに、キューバは、アメリカ以外に明確な敵対国がいないことから、両国の緊張緩和はキューバにとって軍事面での負担軽減にもつながるとみられています。
米大統領キューバ訪問も
これに関連して、アメリカのオバマ大統領は17日、ABCテレビのインタビューで、残り2年の任期中にキューバを訪問する可能性について、「今のところ計画はないが、物事がどう推移するか見てみたい」と述べ、排除しない考えを示しました。
官房副長官「適切に対応」
加藤官房副長官は午前の記者会見で「わが国としては、アメリカの近隣国との関係改善を通じた、地域の一層の安定に資する動きであるということで歓迎している。大変大きな政策の転換だと認識しており、今後の動きを注視していきたい」と述べました。
そのうえで、加藤官房副長官は、今後の日本とキューバの関係について「日本にすぐに影響するというものではないと思うが、その動向を見ながら適切に対応していきたい」と述べました。