米キューバ:オバマ大統領 半世紀の孤立政策「失敗だ」
毎日新聞 2014年12月18日 11時59分(最終更新 12月18日 12時52分)
【ワシントン和田浩明、サンパウロ朴鐘珠】オバマ米大統領は17日昼(日本時間18日未明)、テレビ演説を行い、半世紀以上も外交関係が断絶しているキューバについて、国交再開協議やテロ支援国家指定の見直しを含む包括的な新政策を発表した。来年にも国交が正常化すれば、54年ぶり。キューバを国際的に孤立させることで民主化促進を目指すこれまでの米国の政策が「失敗だった」と明確に認め、関与政策に向けた大幅な方向転換を行った。
キューバのラウル・カストロ国家評議会議長もオバマ氏のテレビ演説とほぼ同時刻にキューバ国民向けにテレビ演説。オバマ氏の決断を「尊敬と、我が国民からの感謝に値する」と評価する一方、関係改善には対キューバ制裁や渡航制限などの撤廃が不可欠だと強く求めた。
オバマ氏は演説で、これまでの対キューバ政策を「時代に合わず我々の利益を実現できなかった」と総括。キューバとの関係正常化で他の中南米諸国との関係改善も進めたい意向を示した。
オバマ政権は来年1月、ジェイコブソン国務次官補率いる代表団をキューバの首都ハバナへ派遣し、国交正常化協議を開始する。米国はハバナに大使館を再開し、高官の相互訪問を実施する。1982年に行われたテロ支援国家指定も「テロの使用を放棄した国が制裁されるべきではない」と述べ、国務省の審査を経て解除する考えを打ち出した。
米国からキューバへの旅行制限も条件を大幅に緩和。キューバ人に対する送金の上限額も引き上げる。通信機器や一部の医薬品、住宅建設資材、農業製品の輸出も拡大する。
オバマ氏は17日、米ABCテレビのインタビューで、キューバ訪問の可能性について「今は予定はないが、様子を見たい」と述べ否定しなかった。
一方、キューバ政府は17日、5年前から拘束していた米国際開発庁の委託業者社員、アラン・グロス氏(65)を「人道的措置」で解放。両国は長期拘束中の情報機関員の交換も行った。
カストロ氏は演説で、米国との国交交渉は自身と兄フィデル・カストロ前議長(88)が長年望んでいたものだと指摘。「両国には国家主権、民主主義、人権と外交政策の点で深い隔たりがある。こうした相違点の全てについて米国と前向きに議論する意思がある」とも述べた。