TBSラジオで月曜日~金曜日に生放送でオンエアーされている「荻上チキ・Session-22」。12月14日の総選挙投開票を前に、荻上チキとゲスト論客が日替わりで各党代表と議論を行った。
12月4日の出演は共産党・小池晃副委員長。はたしてどのようなセッションとなったのか?
小池晃 ―共産党副委員長― (以下 小池)
荻上チキ ―番組パーソナリティ/評論家― (以下 チキ)
中北浩爾 ―一橋大学教授/政治学者― (以下 中北)
神保哲生 ―ジャーナリスト― (以下 神保)
南部広美 ―番組アシスタント― (以下 南部)
@ TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」 (2014/12/04)
チキ:
「SESSION-22」、TBSラジオをキーステーションに荻上チキと。
南部:
南部広美が生放送でお送りしています。
チキ:
ここからはメイン・セッション。今夜のテーマはこちらです。
南部:
「総選挙に向け、各党の代表と生セッション―今夜は共産党・小池晃副委員長」。
日本共産党は、今回の総選挙の政権公約集 で「国民の声が生きる新しい政治を」というキャッチフレーズを掲げ、今こそ安倍政権の暴走をストップする、政治を変えるチャンスだ、と訴えています。マニフェストでは、消費増税、アベノミクス、安全保障政策を巡る問題、原発の再稼動、沖縄の基地問題という5つの点で安倍政権を批判。対立軸を明確に打ち出している唯一の政党とアピールしています。
志位委員長は先日、日本記者クラブの中で行われた党首討論の中で、「昨年の都議選、参院選で躍進させていただいた。この流れがその後もずっと広がってきている」とした上で、「今度の選挙では本格的な躍進の流れにしていきたい」と語りました。
シリーズでお送りしている各党の代表との生セッションには、これまでに公明党、民主党、維新の党、社民党、自民党から、党の代表や幹部の方にご出演いただきました。今夜は日本共産党の小池晃副委員長をお迎えします。
チキ:
はい。ゲストの皆さんからご質問をたくさんいただいておりますので、時間の許す限り紹介していきたいと思います。
南部:
スタジオには一足先に一橋大学教授で政治学者の中北浩爾さん、ジャーナリストの神保哲生さんに入っていただきました。よろしくおねがいいたします。
一同:
よろしくお願いします。
チキ:
というわけで、中北さん、今日は日本共産党。
中北:
そうですねぇ。
チキ:
いかがですか。
中北:
共産党っていうと、首尾一貫したブレない主張というのがあって。
チキ:
ええ、「確かな野党」っていうね。
中北:
そうですね。政策的にはアメリカからの自立っていうのと大企業に厳しいっていうのはあるわけですね。で、献身的な党員がいて党も割れない。しかしながらその一方で、やや唯我独尊的なところがあるとも言われて、お友だちがいない。
例えば1番近いのが社民党ですけれども、ダジャレじゃないですけれども、忠智さん(※吉田忠智 共産党党首)だけれども、あんまり共産党と友だちっていう感じもしないっていうことなんですね。
チキ:
んー。あまり仲は良さそうではなさそうですね。
中北:
そうですね。共産党からいえば「自共対決」なんでしょうけれども、これは共産党の基準であって。それで政治が良いほうに向くかのどうか? ぶれない主張の反面、そういったところをどう判断していくのか? 評価していくのか? これが難しいところかなとと思いますね。
チキ:
選挙協力をしないということによるものっていうのは、色々な党だけではなくて市民からも批判の声がありますからね。
中北:
そうですね。共産党が候補者を小選挙区で立てると、結果的に自民党に有利じゃないかっていう批判はかなり根強いものがあって、これについてどう考えるのか?
チキ:
これからの役割など、ということですね。神保さん、いかがですか?
神保:
今の中北先生の話にも繋がるんですけど、今回ね、非自民の受け皿として共産党が議席を増やすんじゃないか?と言われている、と。要するに、共産党っていうのはね、自民党にお灸をすえたいと思っている人が投票する政党っていう感じになってるわけですよ。
その大前提は、共産党が政権をとるようなことはよもやないだろうから、ちょっと批判票的な意味で、棄権するのシャクだから共産党に入れようみたいな位置づけになってしまっていると思うんですね。本命の彼氏とね、ケンカをしたときに、とりあえずメシを食う相手にはなっているけれど、みたいな話なんですよ。
チキ:
ほぉほぉ。
神保:
これで、このままではね。
チキ:
あてつけ、みたいな。
神保:
うん。じゃあ、本当にそれに取って代われるような存在になるのかどうか?なぜなれないのか?っていうことも含めて、今日は、是非ね、小池さんに色々とぶつけたい。
つまり、共産党が本気にされる政党、本当に政権をとって、この人たちに政権をとってもらえるような政党になるために、欠けているところ、変えなきゃいけないところっていうのがあるんじゃないかな?と思うんで。そこがぜひ僕が今日話したいところですね。
チキ:
今回の選挙だけではなくて、これからのステップっていうことも問われるということになるんですね。
神保:
そうですね。単に受け皿、お灸をすえる、お灸役だけではね、それはいつものことで、あんまり進歩ないなっていう感じはします。
チキ:
というわけで、この後、共産党の小池副委員長にお話をうかがいます。
南部:
「荻上チキ・Session-22」。今夜の「Main Session」は「総選挙に向け、各党の代表と生セッション」、共産党の小池晃副委員長をむかえ、一橋大学教授で政治学者の中北浩爾さん、ジャーナリストの神保哲生さんと一緒に、会見モードでお送りしています。
チキ:
というわけで、スタジオに共産党の小池副委員長にに入っていただきました。よろしくおねがいします。
小池:
よろしくおねがいします。こんばんは。
チキ:
ではまず、小池副委員長のプロフィールをご紹介いたします。
南部:
小池晃さんは1960年東京都のご出身です。東北大学医学部卒業後、都内の病院に勤務する傍ら、反核医師の会などに参加。1998年、38歳のときに参議院議員選挙、比例代表で初当選を果たすと、若手の論客としてメディアに積極的に出演。日本共産党のスポークスマンとして活躍しています。2010年には参院選の東京都選挙区から出馬、翌年の東京都知事選にも出馬しますが、共に及ばす。2013年の参院選で比例代表から出馬し、当選。現在は3期目で、医療や労働問題などに取り組んでいます。
チキ:
はい。小池さんはこの番組にも以前お越しいただいたこともありますし、「朝まで生テレビ!」など他の番組でもご一緒したことありますけれども、その時と何か表情が違って、戦闘モードな感じがしますが?
小池:
いや、そんなことないですよ(笑)。
チキ:
そうですか? 選挙期間って感じがしますが。
小池:
少し痩せたからかな? ちょっとだけ落ちたかな。
チキ:
痩せたんですか? 選挙戦、いかがですか?
神保:
選挙やせ?
小池:
選挙のせいじゃなくて、努力やせ(笑)。
南部:
ダイエットなさってたんですか?
小池:
まぁ、そんな・・・軽く、やってます(笑)。
チキ:
(笑)。ではですね、今回、議員の方がお越しになると、そして各党代表の方がお越しになると必ず聞いているお約束、この番組のルールです。1分間でまずは共産党が今回の選挙で訴えたいことのアピールをしていただきます。それでは、小池さん、お願いします。
小池:
消費税の増税、アベノミクス、集団的自衛権、原発再稼動。やっぱりこの政治は危ういと思っている方がたくさんいらっしゃると思います。私たちは安倍政権ときっちり対決をし、反対だけではなくて対案を示す。国民と共同して政治を動かす。対決・対案・共同だっていうことをアピールしてきました。この党が伸びれば政治は必ず変わるというふうに訴えています。
さきほどありましたけれども、本命の彼氏になれるような政党にぜひ成長して、日本の未来を担っていけるような、そういう存在になっていく、その第1歩の選挙だというふうに思ってますんで、全力で頑張って、なんとしても躍進をしたいというふうに思ってます。
チキ:
はい。というわけで、コンパクトにまとめていただいたので、20秒時間が余っておりますけれども。
小池:
あ、そんなに?(笑) そうですか。
チキ:
はい。すごくコンパクトに仕上げましたね。共産党さんはいつもコピーなどもすごく絞る選挙戦を戦うなという感じがいたしますけれども。
「もともと訴えていたことをまた主張しなおす」
個別政策についてこれから色々うかがっていきたいと思うんですが、その前に今回のマニフェスト の全体を見て、本当に与党を狙えるというような自負はおありですか?
小池:
狙えるって言うか、政党っていうのは政権をとる・与党になるということを目標にしなければ、それは政党ではないというふうに思っていますし、ただ、だからといって、擦り寄るとかね、そういったことではいけないと思ってますので、その点ではきちんと対決軸を明確にしたマニフェストになっている、と。
で、僕は政策の責任者なので今回の政策作りの中心になったんですけど、今度ほど訴えやすいと言うか、安倍政権のやろうとしてることに対して「共産党はこうだ」という対決軸を打ち出しやすい選挙は今までなかったなっていうのは率直な実感ですね。
チキ:
なるほど。それは特に経済とかそれから労働問題、あるいはエネルギー問題と、共産党がかねてから訴えてきた論点の、安倍政権はむしろ逆をずっと取り続けてきたような期間でもあったわけですよね。
小池:
そうですよね。安倍政権がやろうとしてること、やってきたことと逆のことを私たちはやるんだ、と。だから、安倍さんは「この道しかない」ということを連呼するわけだけれど、私たちは「この道は行き止まりだ」と、「別の道だ」と、「方向を変えよう」というふうに、色んな問題で、消費税でも、アベノミクスでも、原発でも訴えていけるし。それが本当に分かりやすい選挙になってきてるんじゃないかなと思います。
チキ:
なるほど。確かに、安倍政権がこうだから、じゃあうちの党はそれに対してこうカウンターしよう、というようなタイプの野党ではなくて、もともと訴えていたことをまた主張しなおす、と。
小池:
おっしゃるとおりです。
チキ:
というようなことが今回のマニフェストでも全面に出ている。私、各党の過去のマニフェストを読み比べているんですけど、あまり変わりはないですね、共産党に関しては。
小池:
そうですね。それは新しく入れた部分なんかもちろんあるんですよね。安倍さんだって初めてやったことがいっぱいあありますから、集団的自衛権の閣議決定なんかも含めてね。ただ、その共産党が一貫して訴えてきたことをまとめたものが今回のマニフェストになったっていうのは、おっしゃるとおりだと思います。
共産党の掲げる「社会主義」とは?
チキ:
さて、神保さん、本命になれるのかって話もありましたけれども、いかがですか?
神保:
政策的にはね、多くの、まぁ、多くのっていうのはどれくらいか分からないけど、色々と安倍政権って問題だなぁというふうに思ってる人たちの疑問とか問題意識に応えるようなものが色々そろっているのはこと実なんですよ。
でも。僕の方から、大きく2つ、最初に問題提起というか質問をさせていただけるとすれば、それこそ本命になれない理由にも関係あるのかもしれないけど、「共産党」という名前にも関係あるんだけれど、今はもう資本主義の枠内で可能な民主主義的改革を目指すとされているのに、最終的には社会主義・共産主義の社会を実現することを目指しているっていうのがある限りは、なかなか本命にはですね、その主義に賛同できる人じゃないと、浮気相手にはなっても本命にはなかななしにくいっていうところがあるのかなぁ、と。それで、実際には、いわゆる革命による共産主義の実現とかは放棄されていて、資本主義の枠内で可能な民主改革って言っているのに・・・。
小池:
いや、放棄してないですよ。
神保:
それは最終的にはやはり目標なんですか?
小池:
もちろん。だから共産党ですからね。
チキ:
ほぉほぉ。
小池:
それはおっしゃることは分かるんだけれども、今度の選挙でそのことが問われるわけではないし、私たちはそこまで一緒になれなければ共産党を支持できないとは思っていないんで。現実の今の安倍政権に対して、この道では駄目なんだ、こっちに行くんだっていうことで支持していただければ、それで良い、と。
ただ、我々の党の目標として、やっぱり資本主義っていうね、今、話題になってるじゃないですか。例えば、ピケティの「21世紀の資本主義論」なんていう本がアメリカでも大ベストセラーになる。やっぱり格差がこの200年間どんどんどんどん拡大していった。そういう社会のままで、じゃあ人類はそれで打ち止めなんですか?と。我々はそうじゃないと思っていて、そこを乗り越えて新しい社会に行けるっていうロマンって言うか展望を持ってるから「共産党」って名前なわけで。
ただ、それが今の現実の世界の中で実現するとは思っていないし、今度の選挙の争点でもあるとも思っていないから。それは党の目標、理念としては掲げ続けるけれども、別にそこまで全て分かってもらわないと付き合ってもらえないか?っていうと、そうじゃないと思ってます。
チキ:
もちろん資本主義に限界があるから共産主義が正解なんだって話には端的にはならないわけですけれども。
ただ、短期的にはそこが問われてないと言いつつも、投票する人というのは、この党を育てるには、今回の選挙だけじゃなくて長期的に政権をとってもらうからには、今後の未来のビジョンというものが一致しないと投票し続けてはくれないとは思うんですね。
小池:
そこは、僕らは社会を前に進める際に、必ず民主主義の手続きに則ってやっていく、と。
だから、今までの、例えば中国とか旧ソ連とか、まぁ旧ソ連っていうのは社会主義でもなんでもない専制国家だと思っていますし、今、社会主義を目指しているとされる中国とかベトナムなんかにしても、本当に様々な問題を持っているっていうのは率直に思っているし。
だから、ああいう形ではなくて、ひとつひとつ、住民の、国民の合意で進んでいくっていうのは、我々も明確に綱領でもしている話なんで、なんか、一旦共産党に乗ったらそのまま連れて行かれちゃいますよっていう、そういうことではないですから。それは違うと思ったらその時に「共産党じゃ駄目」って言ってくれれば良いんです。
チキ:
他国の例を見ると、その時NOと言おうと思ったら、暴走しちゃって、もう言えなくなったっていうね。
小池:
我々はそういったことは絶対しないって党の理念として掲げている政党ですし、大体、今の民主主義の日本でそんなことができるわけないじゃないですか。遅れたところから始まった国であれば色んなことあったとしても。そんなことしたら国民はもう一発で愛想を尽かすと思いますよ。
チキ:
今の言い回しは、例えば、自民党とかが特定秘密保護法とか、あるいは安全保障の議論をするときに、今の民主主義国家で戦争なんて起きるわけないじゃないですかっていうようなことを言いつつ色んな議論をしてきたって言い方に結構重なるところを感じました。
小池:
いや、それはちょっと違うんじゃないかな。やっぱり今の特定秘密保護法っていうのは現実世界で作用するシステムですよね。それは今後じゃなくて12月10日には、特定秘密保護法が施行された途端にあのシステムが動き出すわけですよ。だから、自民党が言うような「そんなことにはなりません」っていうのは全くのまやかしで、12月10日からすぐに起こってくる問題だ、と。
チキ:
現実味がないから今言えるんじゃないかっていう疑念を持っている方も多いんじゃないかと思いますが?
小池:
ただ、じゃあ「共産党」っていう名前を捨てろ、と。それは逆に我々が持っている目標を諦めろっていうことじゃないですか。それってどうなの?って僕は思いますよね。持ってても良いじゃないですか。
チキ:
持っててダメとは良いませんよ(笑)。
小池:
そこまで別に「愛してくれ」とは言いませんよ。そこは違うな、と思ってても、今の社会の中で共産党の存在意義、それを理解してもらって、それで共産党政権になったって良いじゃないですか。
我々は共産党単独で政権を作ろうなんて言ってないし、とにかくどんな段階であっても共同戦線でやるっていうことをはっきり言っているし、すぐに資本主義を打倒するなんてことは一切言ってませんから。当然ですよ。
今の資本主義の仕組みの中での改革で、かなり良くなる部分はありますよ。ヨーロッパなんかを見れば、社会保障の問題にしたって民主主義の到達にしたって、日本がもっともっと取り入れるべき問題たくさんあるじゃないですか。
チキ:
票のためにウソはつかないっていう姿勢はとてもすっきりするというか、確かだなという感じはしますけど。神保さんはいかがですか?
神保:
ということは、やはり共産党の候補者の方々というのは基本的にはイデオロギーとしては共産主義の実現を目指している方々ということに?
小池:
それは共産党に入っているわけだから。みんながそういう同志ですから。
神保:
いや、それがいけないって言っているんではなくて。ただ、少なくとも今の日本でね、今までの日本共産党が説明してきた範囲の中で、それで本命候補に考えようかなっていうのがなかなか難しい理由の1つには間違いなくなっていると思うんですよね。その議論は中北さんにも聞きたいので、ちょっと1回置くとして。
小池:
ただ、今度の選挙で入れてくれるっていう時に、共産党が掲げている未来の目標まで支持してもらう必要は僕は全然ないと思っている。
神保:
共産党としては今度の選挙でそこまでは問題にしてないとしてね。
小池:
ただ、僕らがブレずに頑張れるっていうのはなぜなのか?っていうのはぜひ見てほしいと思っていて、僕は「共産党」っていう党名をしっかり掲げて将来の目標に向かって進む理念で結ばれた集団だから、やっぱり色んな問題で、お金の力で動いたりしないし、平和民主主義を守るっていうことでね、みんなが本当にブレずに頑張っている。それは共産党だからなんですよ。
神保:
そこは良く分かりました。
小池:
そこはね、分かってほしいっていうか、そこが支持していただければなと思うんですよね。
神保:
分かりました。
「分配が成長を呼ぶ」
神保:
で、もう1つも共産党、共産主義とも関係しているかもしれないんだけども、今、政策的な面でね、再分配というのをしっかりと掲げているのは社民党と共産党くらいなんですよね。
その理由の1つは、やはりもう財源がない、お金がない、と。これはもう日本だけではなく世界中そうなんだけれども。民主主義っていうのは、いかに分配をするか?だったはずなのに、分配するものがなくて、むしろ不利益の分配をしなきゃいけなくなっている状況がある、と。
共産党は、そういう意味では、分配を非常に強調しているんだけども、例えば2%の成長を謳っていることなんかも含めて、はたして共産党はちゃんと分配すべき財源とかの手当てというのは本当に現実的なものとして考えられているのかどうか?っていう点が、もう1つ、共産党の政策ですごく問われるところかな、と思います。
小池:
分配か成長かって、僕は対立するものじゃないと思うんですね。分配を本当に怠りすぎてきたと思うんですよ。だから成長しなくなってるんですよ。国民の所得が伸びないじゃないですか。私たち、「成長」と言っても高度成長みたいなことを考えているわけじゃなくて、名目成長率で2%程度、これはヨーロッパの国なんかで言えば当たり前に実現してきたことなわけですよね。
で、なんでそういう社会になってないのか?っていうと、結局ひとりひとりの所得がどんどんどんどん減り続けているような雇用破壊が進んで、4割の人が非正規雇用になってるような、分配が破壊されてきたようなことがあったからそうなっているわけで、成長しているわけでもなんでもなくて、まともな成長を軌道に乗せるためにも、日本に決定的に欠けている再分配っていうことをまず重視してやろうじゃないか、と。そこで購買力が高まることが内需を進めていく一番の原動力になるんじゃないですかっていうことだから。
なんか、「成長か、分配か」って対立的に捉えているわけでもなんでもない、成長を否定しているわけでもない。
神保:
分配が成長を呼ぶ、というのが共産党。
小池:
日本はそのバランスがあまりにも悪すぎるんじゃないか、と。
チキ:
成長と分配の好循環を作るモデルというものを尊重するんだ、と。共産主義っていうと「分配・分配」ってイメージが強かったりするんですけど、成長ビジョンというものもあるんだっていうのが今回の選挙で訴えたいことなわけですか?
小池:
もちろんそうです。今のアベノミクスに対して我々は対案ということを言ってるんだけども。要は、大企業さえ儲かっていけばどんどんどんどんよくなるんだっていう所謂トリクルダウンですよね。
これは何度やっても失敗しているわけです。結局、日本の大企業っていうのは多国籍企業化してて、いくら利潤を上げてもどんどんどんどん海外に流れてしまう、国内に還流しない。やっぱり、大企業を支援すればいずれ中小企業、庶民にっていうのは成り立たなくなってきているわけです。やっぱり直接やろうじゃないか、と。直接支援しようじゃないか、と。暮らし第1で経済を立て直す、と。
で、財源どうするんだっていうことで言えばね、私たちはやっぱり内部留保、285兆円というふうに言われている大企業の内部留保ですけど、これをやっぱり活用する。設備投資なんかになっているんだったらいいんだけど、今、内部留保の中で増えてるのは有価証券とか現金預金なんですよ。
チキ:
内部留保についてはメールでも。
南部:
はい。ラジオネーム「アイスミルク」さんから「企業の内部留保を賃金に移行させると主張されていますが、自由経済で国有企業ではないので簡単にはいかないと思うんですが、どのような手段を考えられているか?教えてください」と。
小池:
そう、おっしゃる通りなんですね。簡単にいく話じゃないですね。
内部留保っていうのは労働者がもらうべき賃金、あるいは中小企業・下請け企業が受け取るべき代金が蓄積されてるわけだから、そこに戻す、と。やっぱり賃上げですよ。
これは労働者の戦いもあるし、政治ができることでいうと、私は最低賃金をもっと引き上げるべきだというふうに思います。これは法律でできるわけですね。
労働者派遣法
チキ:
安倍政権はベースアップを要請したり、あるいは春闘のタイミングでの賃上げを要請したりしてますけど、この路線はどうなんですか?
小池:
これは、我々も国会でかなり賃上げを求めるべきだって言って、そこは安倍さんなんかもそれに応えてやった部分もあると思うんですね。
ただ、じゃあなんで一方で労働者派遣法の改悪をやるんですか?と。やっぱり今の日本の賃金を下げている最大の理由は非正規雇用なわけですよ。そういう時に今の派遣法っていうのは、言ってみればいつでも・どこでも・いつまでも期間制限を外して派遣になるわけだから、派遣労働者は確実に増えますよね。それから残業代ゼロの法案とかね。
だから、やってることが、「賃上げだ、賃上げだ」と言いながら、賃金を下げるような政策をとってるんじゃないですか、と。これを総動員して賃金を上げる方向に向かいましょうよ、と。アメリカのオバマ政権は最低賃金も大幅に引き上げるということをやるわけですよ。なんでこれをやらないのか、と。
チキ:
今、失業率などは改善傾向にはある、と。それから非正規とはいえ労働者人口自体は、労働の受け皿自体は増えていて、有効求人倍率も増えている、と。これは道半ばだとして、しかし健全な形を目指せてない、ということになるんですか?
小池:
道半ばではないと思いますね。
チキ:
道半ばですらない?
小池:
うん。非正規雇用が増えてるだけじゃない、正社員も減っていますから。この2年間で22万人減っているわけですよね。問題はこれからやろうとしてることですよ。労働者派遣法の改悪が象徴的だけれども。
チキ:
その正社員の減少というのは自然減で、これから正社員というのは減り続けていくわけですよね。つまり、高齢化ですからどんどんリタイアしていく一方で、新しく正社員になる数っていうのはもともと少ないんですけどれも、それを差し引いても減っているわけですか?
小池:
そうですね。確かに年齢別で見ると若い人の中では正社員は増えてきている傾向はあります。だから、非正規が増えているのは比較的高年齢の労働者だっていうのは確かに事実としてはあるんですよね。もちろん人手不足もベースにありますから、いくらなんでもそうだと思いますよ。
ただ、もっともっと増やさなきゃいけないと思うし、先程から繰り返し言うように、これからやろうとしてることは、そういったことを全部壊していく方向になってきてるんではないか。岩盤規制を安倍政権をドリルで打破する、と。最大の狙いは雇用ですよね。
労働者派遣法のことについて私があの法案を見ても、派遣先の義務を強化するものがどこにもないんですよ。派遣先の企業、大企業に義務規定がないんですよ。
経済政策問題
チキ:
必ず次の国会でも派遣法については議論になると思いますけれども、同時に、安倍政権の経済政策といえば、第1の矢の金融政策、、「脱デフレ」が第1だとずっと謳い続けてきたわけですけど、この方からこんな質問が来ております。
南部:
はい。三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員の片岡剛士さんから質問をいただいてます。「名目成長率2%を持続的に達成するとのお話ですが、これはデフレが続く状況では無理だと考えられます。黒田総裁の下で2%のインフレ目標を達成すべく日銀は金融政策を行っておりますが、共産党はこの方針については異論がございませんか? あるとしたら、どのような金融政策が望ましいと考えるかをお聞かせください」。
小池:
金融政策で解決できる状態なんですか?って私は思うんですね。
チキ:
何がですか?
小池:
今のデフレの問題。結局、いくら金融緩和したって需要がないから、日銀の当座預金の中にどんどんどんどんお金が貯まっていくだけで、市中に流れていかないっていう実態あるわけですね。
で、黒田バズーカだっていって金融緩和だと、異次元緩和だといったときに、黒田さんは1年前に「もうこれでおしまいだ」と、「もう手は打ちつくした、大丈夫だ」と言っていたんですよ。
それが結局、今回また2打目ということになりましたよね。しかも、日銀の政策決定会合でもギリギリでの僅差で通るようなね、本当に危うい道を。
チキ:
4対5でしたね。
小池:
うん。「金融緩和、金融緩和」というけれども、やっぱり最大の問題は所得が減ってるわけで、物が買えなくなってるわけで、そこを改善しないことにはいくら金融緩和したって解決しないじゃないかということが、この間の黒田金融緩和で実証された結論ではないかなというふうにね。
チキ:
例えば為替や株価などを見れば、金融緩和の影響というのは短期的にすぐ目に見えてとれるわけですね。
小池:
ただ。副作用は大きいですよね。
チキ:
一方で、金融政策というのは貨幣現象であるデフレに対する1つの対処作である、と。これに対して共産党が批判するのであれば、もし共産党が政権をとるようなことになれば金融政策はどう変えるんですか?
小池:
私たちは金融政策で変えるっていうのはやっぱり違っている、と。今の日本の現状、診断が間違っているというふうに思っているんで。
我々が今度の選挙で提起してるのは3つの提案っていうことでやっていますけど、1つは「賃上げと安定した雇用」。ひとりひとりの所得を増やすということに徹底して望む。だから労働法制の規制緩和なんかやめるっていうことが1つ。
やっぱり、この間、社会保障を、年金なんかをどんどん削っているわけで、デフレ政策をとっているんですよ。公務員賃金の削減だってデフレ政策ですよ。こういう「デフレを克服だ」と言いながら、実際にはデフレ政策進めているっていうのは矛盾しているわけで、特に社会保障を充実させること。これ2つ目。
それから3つ目は、TPPなんてこんな時にやったら最悪のデフレ促進ですよ。
チキ:
物価が安くなるから。
小池:
物価が安くなる。農業破壊をする。地域経済破壊する。こういうことはやっぱりやめる、と。
チキ:
確認ですけど、ということは、物価目標の2%などのインフレターゲットはやめるということですか?
小池:
こういうやりかたはとらない。金融政策でデフレ脱却っていうことはやらない。
チキ:
ただ、アメリカやイギリスや先進国などを見ると、中央銀行が物価目標指数を設けること自体はどの独立性が担保されている国家でもだいたい導入されていますよね。
小池:
それは内需拡大ということとセットでやらなければいけない。日本はそれが全くなくて。
チキ:
セットでやるということと否定することって全く別だと思うんですね。例えば、金融政策はそれはそれで重要だがこっちを重視するって言うのか、それともこれを全く撤回させてこっちのほうにシフトさせるってやるのかで、そこを見ている有権者も多いと思うんですけど。
小池:
金融政策を全く否定するわけではないです、もちろん。
チキ:
否定はしない?
小池:
ただ、今の日本に必要な治療っていうのは、まさに金融政策ではなくて、国民の所得を増やす、需要を増やす、と。
チキ:
優先順位ということですか?
小池:
うん、そうですね。そこをまずやっていって、需要がないことにはいくらお金を流したって流れていかない、市中に流れていかないわけで。まずやるべきことは市中にお金が流れていくような、需要を作リ出す政策をまず重点的にやるべきだ、と。
チキ:
なるほど。
小池:
それが上手くいって回り始めれば、もちろん金融政策だって必要になってくるだろうと思いますけど、今はまったくそれがない。
チキ:
金融政策についての立場は理解できました。
大企業への課税
チキ:
中北さんいかがですか?
中北:
私は今の小池さんの話はかなり納得するんですが、例えば雇用の流動化に反対ですとかね、ここに手厚くしていかなきゃいけないということですね、それは納得するんですが。ただ、このマニフェスト って言うんですかね、公約を読んで1番疑問と言うか足りないかなと思うところが、大企業優遇策を疑問視していくということなんですが、ただ一方で、大企業もグローバル競争にさらされている。あるいは高率の税金をかけていくと国外に出て行ってしまうかもしれない。
で、先ほど小池さんがおっしゃったように、資本主義の枠内で色んなことをやっていくのであれば、大企業が抱えているこのリアリティをもうっちょっと引き受けないといけないんじゃないかということを、どう考えているのか? これはTPPの問題なんかにも関わってきますけれども。
私は反対じゃないんだけれども、この点についてもう少し、「バランス」っていうことをおっしゃったじゃないですか、さっき。もうちょっとこの点についてのバランスをとってはどうか?ということなんですね。
小池:
僕らはそこのところはかなり気をつけて政策についてものを言っているつもりなんですね。例えば大企業に増税するということは私たちは言っていないんですよ。政策を見ていただければ、大企業のところはやはり税の優遇を正す。それから、要するに色んな措置があるわけですよね、税逃れの仕組みがあるわけですよ。
チキ:
税の優遇を正すっていうのと増税するっていうのは別なんですか?
小池:
「税率を上げる」とは言ってないです。
チキ:
税率を上げる。
小池:
「法人税率を上げる」とは言っていない。「この間の減税した分を元に戻す」と言っているけれども、「安倍政権になってからやったものについては戻す」と言ってるけども。
チキ:
んー。でも。言い方は違うけどやること同じですよね?
小池:
うん、それはそうです。
チキ:
「キャッチコピーが違いますよ」っていうことですよね?
小池:
そこのところは、我々もね、「大企業、大企業」って言っていくと、大企業で働いてる労働者の方も、まるで自分が攻撃されているような気がするっていう意見もあるんですよ。
チキ:
そこの言い方変えるだけで変わりますかね?受け止め方は。
小池:
でもね(笑)、言い方を変えることは、かなり大きいと思いますよ。
しかも中身について言うと、例えば法人税率は安倍政権がやった減税は戻すと、やめるというふうに言っていますけど、そこから先で税率を上げるとは言っていないんですよ。やっぱり今の状況の中で、確かにグローバル競争にさらされてる時に、日本だけ法人税率をどんどん上げていくなんてことは、これは現実的ではないと私たちは思っています。
ただ、これは世界に呼びかけてね、いま世界中で法人税の引き下げ競争をやっているわけですよね。こういうことをやってて良いんだろうか、と。こんなことをやれば各国の財政基盤もどんどん壊していくわけで、僕はこれからの法人税率については、例えば国際社会、OECDなどの場でね、法人税の引き下げ競争やめて協調して上げていくような方向をね、日本が率先して提起するとか、そういう形でやろう、ということも政策には書いてあるんですね。
富裕層への課税
チキ:
富裕層への課税は強化するとは書いてますね。
小池:
富裕層はしっかりやらなきゃいけないと思います。
チキ:
個人の所得に対してより注目をしていくんだ、と。
小池:
日本はやっぱり資産課税とかがあまりにも良すぎるとい思っているんですね。だから、そこのところは強めていく。
ただ、そうするとね、これも言い方が難しくて、「富裕層」って言うと、ちょっと豊かな方は「増税されちゃうのかな?」って思っている方が多いと思うんですけど。
チキ:
「富裕層」って何円以下の?
小池:
我々のイメージは、最高税率っていうのは課税所得で3000万円以上のところ。この最高税率を引き上げようと言っているんですけど、これはだいたい1000人に1人ですよ。
それから資産課税で今「富裕税」っていうのを提案しているんですけど、相続税の対象額で5億円以上に資産課税しよう、と。これもだいたい0.1%程度です。
そういう本当にごく一握りの、目のくらむような本当の大金持ち。半端な金持ちじゃなくて、本当の大金持ち。ここのところが優遇されているんじゃないか、と。
チキ:
それでどれくらい財源がとれるんですか?
小池:
それも含めて、大企業の、ここに書いた減税を見直すということとか諸々入れて20兆円の財源を作る、と。富裕税の創設で8000億円。
チキ:
年間ですか?
小池:
年間です。もちろんです。で、株式の配当などに対する課税の強化で6000億円等々。これは政策に全部の数字も入れて。所得税、住民税、相続税の最高税率を元に戻す、これで1兆8000億円等々ですね。こういった形で財源を作っていこう、と。
チキ:
たぶんこのあたりの議論はですね、例えば民主党が仕分けをすれば何兆円が出てくるとか、そうしたことに結構懲りている多くの人からすると、説明の仕方っていうのも含めて疑問視されているところが多いと思うんですね。
小池:
民主党の歳出カットだけで何十兆というのは荒唐無稽なんですね、どう考えても。我々はこの財源の中で、いま20兆って言いましたけど、そのうち3兆円は歳出カットです。やっぱり3兆円程度だろうというふうに思っているんです。原発予算であるとか、政党助成金ももちろんそうだし、軍事費の中でも圧倒的には人件費なんかも多いですから、防衛費は、軍事費は。だから。その最先端装備の問題、イージス艦とかそういったことを削ろうということで3兆円。
政党助成金
チキ:
いま政党助成金の話が出てきましたけど、そこに関してはこんな質問が来ております。
南部:
千代田区の「サイモン」さんから。「共産党の志位さんは政党助成金をなくせといっていましたが、それでは共産党以外の政党は企業献金に頼ることになりませんか? 今まで以上に大企業偏重の政治に繋がるのではないでしょうか?」と。
小池:
個人献金でやれば良いんですよ。
チキ:
個人献金?
小池:
だって僕らは個人献金でやっているわけですよ。なんでできないんですか?と。民主党の政治家の中にも自分は個人献金だけでやっているって方がいらっしゃるじゃないですか。
はっきり言って企業団体献金と政党助成金が日本の政治を腐らせているし政党を堕落させていると思うんですね。特に政党助成金の害悪は大きいですよ。黙っていても320億円が入ってくるということで、自民党は党の財政の65%かな、民主党は83%、維新は72%政治資金を。国営政党ですよ。こんなことやってるから下仁田ネギだとか、ああいう問題を起こっているんだろう、と。
チキ:
あれば満額を使うということもありますからね。
小池:
そうですね。だから政党助成金はなんとしても見直すべきだと思うし、企業団体献金もこの間どんどん増えてますから、やっぱりここに歯止めかけるということだと思いますね。だって、政党助成金は企業献金をやめるからといって入れたわけで、それなのにやめないんだから。
チキ:
順序が違うんじゃないかというのが主張だということになるんですね。
小池:
うん。約束違反だからやめましょう、と。もちろん企業献金も廃止の方向に持っていく。ただ、それをやるためには個人献金でやっていけば良い、と。個人献金がなんで集まらないか?っていうと、お金をもらってるから集めようとしない、本気で集めないんですよ。
チキ:
制度改革も進まない。
小池:
進まないんですよ。やっぱりね、本当に厳しい、それこそ身を切る改革を。
神保:
アメリカなんかも見ている神保さんはどうですか?
神保:
ただ、今のことについて一言言わせていただくとね。僕も政党助成金という税金をもらっているのに企業献金をもらっているっていうのは問題だと思います。企業献金はやめるべきだと思います。
だけど、共産党がね、だから政党助成金もやめるべきだっていうのは、自分たちはもらっていないので、立派なんで、自分たちはそれを全部戻してるから立派なんで、それを言う資格はあると思うけど、同時にね、若干、我田引水って言うと変なんだけど、じゃあ共産党はなぜ政党助成金をもらわずに出来ているかって言えば、個人献金って言っても個人献金は3、4%ですよ。実際は8割ぐらいが赤旗の売り上げでしょ? だから、他のところは赤旗みたいなものを持っていないから、「じゃあ、君たちもやればいいじゃないか」っていう話になってしまうわけで。
そこは僕はすごく残念なのは、それは分かるんだけど、それを言うと、結局ほかのところは成り立たないじゃないかっていう、誰かの質問にもあるようにね。で、そういうことを言うから、言うからっていうのも変なんだけど、それは自分たちは言う資格十分にあるでしょう、おそらく。
これは次の質問にも繋がるんだけど、共産党はまともな政策、一部それは若干疑問があるにしても、すごくまともなことを言っている。中北先生が言うようにすごく良いことをいっぱい言っている。でも、なぜか他の野党の中で共産党と組もうというところが出てきていないじゃないですか? それは共産党から言えば「あいつらなんかニセモノなんだ」とかになるのかもしれないけど、例えば、こういうふうに他が成り立たないようなことを、自分たちは赤旗を持っているから出るんだっていっていう前提で言ってしまうと。
チキ:
他の少数野党に厳しい。
小池:
神保さん、あのね。
神保:
もったいないって意味で言ってるんです。
小池:
分かります、分かります。例えば先日の日本記者クラブの党首討論会で志位委員長は政党助成金の問題を取り挙げました。その時にどういう言い方をしたかっていうと、志位さんは安倍さんに「我々は政党助成金を廃止すべきだと思う。安倍さん、あなたはこの制度に指一本触れるつもりもないんですか? 改革する必要はないんですか?」って聞いているんです。
我々もね、もちろんそれぞれの政党の問題もありますから、「ただちに廃止しろ」とを言っているんじゃなくて、これだけ政治に対して国民の疑惑があり、身を切る改革だなんて議論が出てる時にね、じゃあその320億円は指一本触れないでそのまま行くんですか、と。
維新だって維新発足の時は政党助成金を削減するって言ってたんですよ。それはもう言わなくなっちゃったわけですよね。こういう姿勢は間違ってるんじゃないかなって。わりとそういったこともちゃんと配慮して。
チキ:
なるほど。いきなり全部やめるって話はしてない、と。
小池:
そういうことは言っていない。こういう場でね、主張するときは「廃止するべきだ」って言う。
神保:
ただ、例えば、それをもうちょっと透明性を高めるとかね、使い方にきちんと制約を設けるとかっていうような、色々な選択肢がある中で、「やめる」って言っちゃうと、当然「共産党とは一緒にできねえな」っていうところがわざわざ出てくるような主張をね。
それは差別化で、それこそお灸をすえる受け皿としてはその方が良いのかもしれないけど、共産党自らがお灸の存在のほうに行っているように見えちゃうわけですよね。
チキ:
最初の神保さんの話に戻るということですよね。他にも論点が色々とあると思うので、お知らせに続いて議論してきたいと思います。
南部:
TBSラジオをキーステーションに生放送でお送りしている「荻上チキ・Session-22」。今夜は、「総選挙に向け各党の代表と生セッション」ということで、共産党の小池晃副委員長。
小池:
よろしくおねがいします。
南部:
よろしくお願いいたします。そして、一橋大学教授の中北浩爾さん、ジャーナリストの神保哲生さんとお送りしています。よろしくお願いいたします。
メディアに中立性を求める
チキ:
さて、今回の選挙では色々なテーマが話題になりましたけど、メディアと政治の役割というのも論点になっていまして、今回メディアに対して中立で、そして公平な報道を求めるというような、そうしたことが自民党から送られたということがニュースになりましたけれども。
ほかには野党では共産党だけがそうした要望を出していて、そうした要望は赤旗にもすぐ載せるということをされていますよね。このような要望を出す理由はどういったものなのかって気になる方もいると思うんですけど、いかがですか?
小池:
我々の申し出の中身っていうのはあくまで原則について言っているので、公平中立にやってくださいと、報道してください、と。
例えばね、いま私なんかが見てて疑問に思うのは、もう解散したにも関わらず衆議院のの解散前の議席数に応じて、例えば新聞の公約の紹介の仕方が自民党はドーンと出ていて。
チキ:
枠の大きさとかね。
小池:
で、民主党、公明党、維新と、みたいなね。あれはおかしいと思うんですよ。もう解散したんだから、こういうのは平等にすべきじゃないか、と。
ただ、もちろん議論の中でどこかの党に議論が集中することはあるでしょう、と。ただ、公約とか政策を発表するときなんかは議席数っていうんじゃなくて、選挙戦なんだから公平にやってくださいね。
チキ:
それはいま議席がゼロであったとしても、ということですか?
小池:
それはそうだと思いますよ。政党要件を満たしていればね。
チキ:
満たしていれば。じゃあ幸福実現党は違う、みたいな?
小池:
それはやっぱり、全てやっちゃうといくらでも出てくることになるから。
チキ:
なるほど、なるほど。今のところ満たしているところは幅なども、と。
小池:
うん。だって、それはね、今度の選挙の結果でどうなるか分からないわけでしょ。
チキ:
この要望というのは自民党が出した要望とは質は違うんですか?
小池:
いや。だって自民党が出してるものって街頭インタビューを選ぶ時にどうのこうのとか、評論家を出す時、荻上さんも色々あったと(笑)。
チキ:
はい。色々ありましたけれども。
小池:
そういったこともことを細かに言ってるわけで。しかも政権党ですよ。政権党がこういったことで物言うっていうのは、権力を持っているわけだから。そこは抑制的だ、と。
チキ:
そこは1点だけ気になるんですね。と言うのは、今の政権党だけではなくて次に政権党になる党が同じことをやっても僕は抑圧を感じるというようなことがあるんですけど。例えば共産党が本当に与党を目指しているというのであれば、こうした文書を出した場合に、次に与党になった場合にはどうなるのかなっていうことをメディアでは感じてしまうと思うんですけど。
小池:
ただ、読んでいただければ分かると思うんですけど、私どもがメディアに出した文章っていうのは原則を言っているだけの話ですよね。公正中立にというマスメディアの役割を果たしてください、と。
チキ:
共産党が原則を言ってるだけというのは、実は自民党も同じことが入っているんだけど。
小池:
自民党は、確かに安倍さんそう言ってるんだけど、書いてる中身が全然違う。
チキ:
ただ、共産党が野党だからこそ出せる要望の仕方なのかなって気もするんですね。
小池:
まあね。
チキ:
それはそうだ、と。ということは、もうちょっと時間をかけて、ということですね。
全候補者の25%が女性
チキ:
今回は共産党は他の党よりも多くの候補者を出していますし、特に特筆すべきで言っておかなければいけないのかなと思うのは、他の党よりも女性を出してる、と。
小池:
25%が女性候補者です。
チキ:
25%ですね。色々な特徴を出して戦っているんだなというのは良く分かります。
小池:
あと、沖縄では4つの選挙区で、これは基地建設反対っていうことでね、力あわせようということでね。さっき、なかなかお友だちがいないって話あったんだけども、別に一緒にやるっていうことを否定してるわけでもなんでもなくて、そういう条件のあるところではね、やっぱり力を合わせて基地建設反対の1点でっていうことでやってますので、そこはなんとしても小選挙区でも勝ち抜きたいなと思っていますね。
チキ:
なるほど。
党内の新陳代謝
チキ:
中北さんいかがですか?
中北:
候補者についてはちょっと気になることがあるんですけれども。今回の候補者っていうだけじゃなくてですね、共産党でも所謂2世的な人がいますよね。つまり、お父さんお母さんが元市会議員だったりですね。そういった意味での共産党の家で育った人が共産党の議員になっているっていう、広い意味での2世って言うかですね。新陳代謝が上手くいってるのかな?っていう。例えば、吉良さんもそうだし、辰巳さんもそうだし、広く言うと志位さんもそうじゃないですか。
チキ:
公明党だってそうかもしれないですね。
中北:
そうですね。ですから、もうちょっと幅広い開かれた党になっても良いんじゃないのかなって、これは期待を込めて言っているんですけど。
小池:
いや、そういう人だけじゃなくて幅広く出てはいるけど。我々は2世を否定してないんですよ。2世って言うか、問題になってちいるのは地盤・看板を引き継ぐっていうね、その家の代々の特権であるかのように、特に小選挙区の議席を代々引き継いでいくっていうね、ああいうやり方ってどうなんだ?っていうことであって、自分のお父さんがやってる姿を見て、「ああ、いいな」と思って共産党に入って、その人がすごく魅力のある人物に成長して、吉良さんみたいに候補者として議員になって頑張っているって、僕はそれはむしろ素晴らしいことじゃないかと思ってて。
チキ:
権力と結びつかない限りは別に問題ないじゃないか、と。
小池:
権力って言うか、既得権益みたいに、1つの選挙区をずっと面々と引き継いでいくようなね。
チキ:
中北さんが今おっしゃったのは2世議員の話ではなくて、新しい党員だけはなくて他の共産党員以外にも開かれたような政治をするスタイルというものがないと、もちろん政治家も増えないけれども、投票も一般層には届かないんじゃかって。
小池:
そうですね。この間、我々がすごく力をいれてるのは一点共闘ということなんですね。僕はね、日本のデモクラシーが新しい段階に来てるんじゃないかなと思うのは、毎週毎週の官邸前の行動、本当に幅広い人たちが来ていますよ。それが原発だけじゃなくてTPPとか色んな問題で広がっているわけですよね。東京だけじゃなくて地方でも、今どんどんどんどん起こっているわけですよ。
今、そういう人たちの中から勝手に共産党を応援するっていうような人たちがいっぱい出てきていて。で、僕は新しい日本の民主主義が生まれてきてるんじゃないかなと思ってるし、共産党はその点では本当にこの間、思い切ってそういう人たちとの関係を広げていて。
安全保障問題
チキ:
無党派層を広げるという意味ではデモの話で言うと、安全保障の問題でデモなどを行ってきた人も当然いるわけですね。お時間がないんですけど、最後にここだけは聞きたいのが、例えばアメリカ型の各東アジアの、ある東南アジアのですね、各国と連携しながら、基地自体もそうだけれども、いわゆるネットワークを拡大して変質させようというような今の動きがあったりするわけですよね。それに対して共産党は「反対だ」と、「基地も反対だ」と。となれば、安全保障はどういった代替案を出しているんですか?
小池:
僕らがいま提起しているのは「北東アジア平和協力構想」っていうことなんですね。東南アジア、見てください。かつては武力紛争がしょっちゅう起こっていたところが、今、平和友好条約結んで、「絶対に紛争・戦争にしない」という取り組みが進んでいるんですよ。やっぱり東南アジアで進んでるような枠組みを北東アジアでも実現しようじゃないかっていうことで、この間、国際社会にも働きかけてきてるし。
チキ:
パイプみたいなものもあるんですか?
小池:
あります。それは「アジア政党会議」っていうアジアの全ての政党が参加する場で、我々も参加をしてそこで提起をする。で、共産党が提起した平和協力構想がアジア政党会議の宣言に取り入れられる。そんな仕事もやっていますので、口で言うだけじゃなくて行動して、本当に戦争を起こさない北東アジアをつくるということで頑張ってます。
チキ:
ネットワーク、人を頼りにした抑止力ということになるわけですよね。そうすると、例えば相手国の政治状況が変わるともちろん大きく崩れ得る、これまた不安定な政策だと思うんですけど、そのあたりのケアは?
小池:
いや、軍事力に頼る方がよっぽど不安定ですよ。
チキ:
それよりはマシだ、と?
小池:
今みたいに、安倍さんみたいに軍事力でなんとしても退治する。何が起こるか分からない、一触即発ですよ。こんな危険なことはないわけで。やっぱり軍事力に依らない安全保障っていうことをね、真剣に追及すべきだし、日本はそういう点では憲法9条っていう世界に通用するものを持っているわけですよ。これを生かして、絶対日本は戦争しないんだ、ということにしてね。
チキ:
それ自体が抑止力になるというのが共産党の考え?
小池:
私はそう思います。1番の抑止力ですよ。
チキ:
中北さん、いかがですか?
中北:
先ほど「バランス」っておっしゃったじゃないですか。だから、「軍事力に依らない」じゃなくて、軍事力も多少必要な側面があるということは考えないのか、と。
チキ:
減らすプランとかですね。
小池:
ただちに明日から自衛隊なくすなんてことは我々は言っていないし、現状のもとで、例えばもし日本に急迫性の侵害があるということになれば、それは自衛隊を含めて日本の国民の安全を守るために戦うんだということは明確にしている。
中北:
ということは、自衛隊は合憲だと認める、と?
小池:
いや、憲法違反ですよ。だって、今の憲法をどう見たって自衛隊はね、これは憲法違反ですよ。だから、将来的には憲法との関係では自衛隊なくす方向に。それをじゃあ明日から失くしますよととはならない、失くせないわけですよ。
チキ:
憲法違反だけど使うというのは、なかなかご都合的なものがあると思うので。
小池:
だってそれはそういう自衛隊作っちゃったのが自民党なんだから。その矛盾を我々は引き継がざる得ないんですよ。
チキ:
政府になった場合には。
小池:
政府になった場合には。ただ、その中でも自衛隊が無くても良いようなアジアを作る外交に徹底していくということで、憲法9条を本当に実現でききるような社会を作ろう、と。
チキ:
Twitterやメールでもですね、「共産党は原理主義みたいなイメージが強いんだけども、リアリズムっていうものの側面をもっと出さないのか?」っていうような話があったんですけど。
小池:
かなり出しているつもりなんですよ。
チキ:
今の話の中であったこんなリアリズムがあるみたいな見え方が、各党との党首討論だとどうしてもそのあたりが出てこないとかがあったりするので。
小池:
あのね、荻上さんね、こういう長い時間、共産党の政策を話す場って無いんですよ。
チキ:
はい、そうですね。珍しいでしょうね。
小池:
テレビなんか一瞬で終わっちゃうわけですよ。だからそういう意味で言うと、僕らのアピールをもっともっと工夫しなきゃいけない面ももちろんあるだろうし、もっと直さなければいけない面もあるのかもしれない。
ただ、こういったことは、なかなかね、メディアの中で議論できないっていう実態があるから、本当にもどかしいと言うか、伝わっていない部分があるんじゃないかなって。選挙って、やっぱりそういう意味では、本当に絶好の機会だと思うので。やっぱり共産党をね、丸ごと全部愛してもらえる存在になるために、頑張るようにしたいなと思います。
チキ:
選挙期間というのは誰もが政治について考える、そんな重要な期間でもあります。今日の放送を聞いて、投票のひとつの参考になるかどうか、皆さんのご判断に委ねたいと思います。
南部:
はい。今夜は共産党小池晃副委員長をお迎えしました。中北さん、神保さん、ありがとうございました。
一同:
ありがとうございました。
チキ:
荻上チキです。選挙当日の日曜日、夜7時55分からは、「総選挙スペシャル2014-私たちは何を選んだのか?」。リスナーの皆様、番組に疑問・質問をお寄せください。あなたの代わりに政治家にぶつけます。そして、今回タッグを組むのはこの方。
片桐:
片桐千晶です。選挙特番発参戦でかなり緊張しているんですが、「デイキャッチ」の中でも、今まで色んな政治家の方が来て、色んなことがありました。その経験を活かしてチキさんと頑張ります。
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