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プログラマーと社長業の両立は可能?Qiita海野氏が抱える悩みと解決策【30分対談Liveモイめし】

2014/12/18公開

 
ツイキャス』を運営するモイの代表取締役で、経験豊富なエンジニア赤松洋介氏が、週替わりで旬なスタートアップのエンジニアや起業家を招いて放談する「モイめし」。『ツイキャス』連動企画として、お昼に30分の生放送&その後のフリートークも含めて記事化したコンテンツをお届けします!


ツイキャス』を運営するモイの代表取締役で、経験豊富なエンジニア赤松洋介氏が、週替わりで旬なスタートアップのエンジニアや起業家を招いて放談する「モイめし」。今回のゲストは、プログラマー向け情報共有サービス『Qiita』を開発・運営するIncrements代表取締役の海野弘成氏だ。

京都大学の先輩後輩の関係にあたる赤松氏と海野氏は、くしくも同じうるう年の2012年2月29日に、それぞれモイとIncrementsを創業。年齢こそ離れているが、ともに現役でバリバリとコードを書く「エンジニア社長」という共通点もある。

日本のスタートアップにおいては、プログラミングと社長業を両立できている例はまだ少ない。いろいろと苦労が多いことが想像されるが、2人はどのような解決策を見いだしているのだろうか。

プロフィール
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Increments株式会社 代表取締役 海野弘成(@yaotti)氏

1988年兵庫県生まれ。京都大学工学部情報学科在学中にはてなやGoogleにてソフトウエアエンジニアとしてインターンを経験。『はてなココ』のiOSアプリ開発などを担当する。2011年、友人2人と作ったプログラマーのための技術情報共有サービス『Qiita』をローンチ。大学卒業後の12年2月、Increments株式会社を設立し、代表取締役に就任。主なサービスに、『Qiita』のほか、チーム間情報共有ツール『Qiita:Team』がある

両立するための工夫は「寝ないこと」!?

情報共有サービスとして多くのプログラマーに利用されている『Qiita』

多くのプログラマーに利用されている技術情報共有サイト『Qiita

赤松 現役エンジニアとしてコードを書きながら社長業もこなしているそうですが、1日にどれくらいコーディングしていますか?

海野 それが最近は採用などに追われていて、両立できていなくて(笑)。メインの機能にコミットするというよりは、ChatのBotをいじるなど、チームのみんなが開発に専念するための環境づくりだったり、ちょっとしたバグを直したりという感じです。

赤松 何人くらいの体制で開発しているんですか?

海野 社員は全部で9人です。エンジニアは僕を含めて6人、デザイナーが2人なので、ほぼ全員が開発チームです。

赤松 すると雑用はすべて社長である海野さんが?

海野 COOと僕で。逆に赤松さんは両立のためにどんな工夫をしているんですか?

赤松 工夫といえば寝ないことですね(笑)。とはいえそれもなかなか難しく、最近は4、5時間は寝ていますが。

海野 なるほど(笑)。でも、両立する上では切り替えも難しくないですか? 僕自身、大きな開発をしようとなると、何日かぶっ続けでやらないといけなくなる。そこに割り込みがあったらと思うと……。

赤松 分かります。社内にいると基本的に割り込みが入って、あまり集中できない。かといって、しゃべりかけるなオーラを出すと、いろいろと止まってしまう。ただ、以前は4時間ぶっ続けで時間が取れないと開発する気になれなかったし、ヘッドフォンで雑音をシャットアウトしていたんですけど、最近は環境音の中で、短い中断があってもできるようになってきましたね。

海野 僕もそれはありますね。割り込み耐性ができたというか。

人に任せることの難しさ。一番は優先順位をどう決めるか

「エンジニアリングが分かる社長」という強みは将来的にも持ち続けたいと語る海野氏(左)

プログラマーと社長業を両立している点で共通する海野氏(左)と赤松氏

赤松 でもやっぱり自分で開発したくなりますよね? 一番サービスのことを分かっているわけだから。

海野 そこはまあブレーキをかけて。自分が全部やってしまうと、他の人が分からなくなってしまうので。

赤松 耳の痛い話だなあ。そうやってチーム開発に移るといろいろ変わりますよね? 情報共有とか、自分では書かないコードもミックスして動くようにしなければならなかったり。開発体制はどう変わりました?

海野 この3、4カ月、毎月1人ずつ人が増えていて、そこは今まさに取り組んでいるところですが、一番難しいのは優先順位をつけることだと感じています。1人であれば何が重要かを決めたら、そのまま開発に移れますが、複数人だとそこにコミュニケーションコストが掛かるので。

赤松 将来的にはどうするおつもりですか? ずっとエンジニアリングできる社長で居続けるのか、経営の方にシフトしていくのか。

海野 それなりにコードを書けるというのは自分の強みですから、「エンジニアリングが分かる」という部分は捨てたくないですね。同時に経営のことを考えるのも好きなので、両方できるというのは持っていたいですね。

課題発見能力向上へ、新入社員はまずユーザーとの接点を持つ

チーム内の情報共有ツールである『Qiita:Team』も多くの企業で活用されている

チーム内の情報共有ツールである『Qiita:Team』も多くの企業で活用されている

赤松 モイでも徐々にエンジニアの人数を増やしているんですが、採用は本当に難しい。だから順調に増えているQiitaはうらやましいです。

海野 うちはサービス特性がエンジニアにとって分かりやすいので。『Qiita:Team』とかは毎日使うものだし、ここが足りていないという部分が見えるから、人が来ているのかもしれません。

赤松 うちのサービスはユーザー属性が違うので、「エンジニア募集」とか書いても難しい。外から見ると、どういうエンジニア集団かさっぱり分からないと思うので、まずは興味を持ってもらうところから始めないといけない。

海野 エンジニアにどこまで求めるのかという問題もあると思います。コードを書くだけなのか、課題の解決方法を考えるところからなのか、そもそもの課題発見のところからなのか。ウチのように小規模だと全部見れる人の方がいいわけですが、そういう人はあまりいませんよね。それで結局、自分でやってしまったりする。どうしたらいいのかなというのが、今考えているところです。

赤松 記事で読んだところによると、ユーザーヒアリングにも力を入れているそうですが、採用するエンジニアにも、そういったユーザーとの距離感のようなものを求めますか?

海野 そうですね。だからウチでは入社したらまず、ヒアリングなりユーザーミートアップなりで、使ってくれる人と直接会う場を作っています。それが先ほどお話しした課題発見だったり、サービスを改善し続けるモチベーションだったりにつながるので。

競合するより、共存して市場を成長させるべき

先日、日本語版がリリースされた『Stack Overflow』の動きを海野氏はどう見ているのか

先日、日本語版がリリースされた『Stack Overflow』の動きを海野氏はどう見ているのか

赤松 最初にQiitaを立ち上げた時はQ&A形式のコミュニティだったそうですが、そこから今ある形へのシフトというのは面白い決断ですよね?

海野 Q&Aをやる上ではまず質問を集めないといけないわけですが、始めてみると、質問以上に回答したいという人が多かったんです。日本人は人に何かを聞くというより、自分の知識を整理してアウトプットして、そこからフィードバックをもらう方が性に合っているのかなと思い、ピボットを決断しました。

赤松 その意味では、Stack Overflowの日本語版リリースの動きをどう見ていますか? 競合になりますか?

海野 競合しつつも共存するかなと思っています。Stack Overflowの海外での使われ方を見ていると、回答者は自分のブログにこんな記事を書きましたから参照してください、といった形で回答していることが多いので、その回答部分がQiitaになれば、と。

赤松 その反面、検索結果の戦いでもあったりするわけですよね? そこは力を入れることになりますか?

海野 まあ、そこは戦うしかないですかね(笑)。ただ、Stack Overflowは答えが一つに定まる質問しかしてはいけないと明確に定めていますから、例えば「Rubyのライブラリで面白いものはありますか?」という質問はNGです。Qiitaでは逆にそういった記事が人気ですので、コンテンツの内容的にも差別化できるものはあると思っています。

赤松 Stack Overflowの中の人と話す機会はあったんですか?

海野 はい。日本のコミュニティマネジャーの方にコンタクトを取ったら、すぐに会ってもらえることになって。彼らも戦いをまったく好まない人たちらしく、プログラミング環境を良くするためであれば、Stack Overflowだろうが他のサービスだろうが構わないと話していました。どこまで本音かは別にして(笑)、向いている方向は同じなので、ゼロサムゲームではない形があるのかなと思いました。

赤松 そうなんですよ。モイが取り組んでいるライブ動画配信という業界も、まだ勝者のいない、儲かるかどうかも分からない未熟な市場です。競合だなんだといって殴り合いをするのはマーケットにとっても良くない。ライブ配信、動画というところで見ていると小さな枠の取り合いになってしまいますが、インターネットを使って世の中を変えていくという一段大きな目で見れば、我々がやることはユーザーさんに快適な空間を提供するということで変わらないですし、他サービスとも一緒にマーケットを作っていけると思っています。

日本のプログラマーの優秀さを世界にアピールしたい

赤松 今後、Qiitaはどうなっていくんでしょう?

海野 僕らがやりたいことはシンプルで、ソフトウエアの開発をより良くしたいということ。今はその一領域として情報共有をやっていますが、他にも教育系だとか、人とプロジェクトのマッチングだとか、いろいろとやれることはあると思っています。

赤松 プログラミングは世界共通のものですから、海外版なども考えられますね?

海野 持っていきやすいコンテンツですし、やる価値はあると思っています。ただ、うちの場合はコンテンツありきなので、そっくり翻訳して出すというのも一つの手ではありますが、自然にできたコンテンツではなくなってしまうので、何がベストかは慎重に考えないといけないと思っています。

赤松 いろいろなブログを読んでいても、もったいないと思いますもんね。英語で書けばアクセスはずっと増えるのにって。

海野 そうですね。コンテンツを通して日本と世界の人が交流する、コミュニケーションの手助けまでできたらいいですね。その上で、日本のプログラマーが優秀であるということを世界にアピールしていきたいですね。

取材・文/鈴木陸夫(編集部)

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