14日、第47回衆議院選挙が投開票された。その結果、自民・公明両党が公示前を上回る326議席を獲得。それとは対照的に、民主党は海江田代表が落選、73議席にとどまった。
大勢が判明した夜、ジャーナリストの上杉隆がTOKYO FMの特別番組にて、自民党・稲田政調会長と民主党・海江田代表の声を聞いた。また、原発問題で揺れる福島、自民党候補が全敗した沖縄、それぞれの結果と住民の考えを地元ラジオ局に尋ねた。
上杉隆 ―ジャーナリスト― (以下 上杉)
今井広海 ―番組アナウンサー― (以下 今井)
@ TOKYO FM「TIME LINE」 (2014/12/14)
上杉:
こんばんは。ジャーナリストの上杉隆です。
今井:
こんばんは。TOKYO FM・今井広美です。「2014年衆議院選挙 特別番組 列島タイムライン-”ありのまま”で良いのか、ニッポン」。ジャーナリストの上杉隆さんとお送りしてまいります。上杉さん、よろしくお願いします。
上杉:
お願いします。
今井:
さて、今年大ヒットを収めたディズニー映画「アナと雪の女王」では、主人公はありのままの自分を肯定して葛藤の末に深まった姉妹の愛情を描きました。しかし、私たちが暮らす日本はこれから”ありのまま”で良いのでしょうか? 突如感が否めない解散総選挙。師走に行われた今回の選挙が示す、私たちのこれからの暮らしを考えていきます。
さて、衆議院選挙、開票が進んでおります。自民党は定数475のうち、単独で266議席の絶対安定多数を確保しました。最終的には、自民・公明合わせて300議席を伺う勢いで、政権の維持は確実となっております(※最終結果 )。上杉さん、この数字をどうご覧になりますか?
上杉:
選挙前の予想通りと言っても良いんですが。ただ、これだけ勝ってしまうと、むしろ今後の政権運営が難しくなるというのが政治の皮肉なところで、安倍政権にはチャンスにもなるんですが、裏を返せば、これから大変なことが待っていると思いますね。
今井:
また、共同通信が午後11時現在で集計した推定の最終投票率は52.43%で、戦後最低だった前回の選挙を7ポイント程度下回る見通しということです。
投票率は戦後最低だった前回の選挙を7ポイント程度下回る見通し
上杉:
投票率の低さというのも、この選挙で全ての信任とはならない、疑問点ではないかと思います。
今井:
早速ですが、ここで自民党の稲田朋美政調会長と繋がったようです。
上杉:
稲田さん、こんばんは。ジャーナリストの上杉隆です。よろしくお願いします。
稲田:
こんばんは。よろしくお願いします。
上杉:
今回の選挙結果は見ての通りですが、むしろ勝ち過ぎという感で、今後の政権運営、党運営が難しくなるとはお考えになりませんか?
稲田:
今回の結果は、非常に評価を頂いたということでありがたいですが、今お話がありましたように、今後アベノミクスが津々浦々までお父さんやお母さんまで生活者まで実感ができることについての期待があったと思います。そこはきっちりとやっていかなければいけないと思います。あと、党運営ということついては、今まで通り変わりなく、言うべきことはきちんと言っていきたいと思います。
上杉
現在、自公で3分の2に迫る勢いなんですが。参議院はまだですが、こうなると、安倍政権が求めていた憲法改正に1歩近づいたとお考えでしょうか?
稲田:
憲法改正自体は党是でありますので、それについて目指していくということです。でも、これは国民の理解があって初めてできることですし議論が高まってできることなので、数が3分の2だから近づいたということではないと思います。
上杉:
あと、今回の選挙ではそれほど争点化されなかったんですが、安倍第2次政権では北朝鮮の問題についてかなり積極的に対話を進めていました。しかし、どうも消えたように見えるんですが、今回の選挙前にあえて消したということなんでしょうか?
稲田:
いや、そういうことではないです。今回、消費税を先延ばしして、1年半後にきちんと上げるということを決めたので、経済政策を前面に出したということです。その他の論点についても公約の中ではきちんと書いておりますので、消したということではないと思います。
上杉:
同じく消えたように見えたもので靖国神社への参拝があります。稲田政調会長はご自身でお話された通り毎年行っていますが、安倍総理は、総理になる前に「毎年必ず行く」、第1次政権が終わった時に「行かなかったことが痛恨の極みだ」とおっしゃったんですが、今年は行っていらっしゃいませんよね。
稲田:
はい。私は靖国の問題は国民1人1人の心の問題だと思いますので、総理に対して行くべきだと行かないべきだとかいうことは言うべきではないし、誰から言われて行くとか誰から止められて行かないというものでもないと思います。
今井:
はい。分かりました。ありがとうございました。
稲田:
ありがとうございます。失礼します。
今井:
自民党の稲田政調会長にお話を伺いました。今の政調会長のお話はいかがでしょうか?
上杉:
今回、稲田さんと安倍さんが共に同じような形でずっと訴えてきた政治信条について3本、憲法改正、北朝鮮、靖国と伺ったんですが。この選挙の中ではこのことをあえて訴えなかったのかなという気がしたのでお話を伺ったんですが、しっくり来なかったですね。
今井:
というと、具体的はどういうところがしっくり来なかった?
上杉:
もう少しピシッと仰っていだけるのかなと思ったんですが。選挙に勝ったということで、ここからが大変なのは、これは政治用語でそうなんですが、勝ち過ぎると「高所恐怖症」になって党の運営が難しくなるんですね。その辺りに配慮したのかなと思います。
勝ち過ぎると「高所恐怖症」になって党の運営が難しくなる
今井:
では変わって、民主党の海江田万里代表と繋がりました。
上杉:
海江田さん、こんばんは。ジャーナリストの上杉隆です。
海江田:
はい。こんばんは。
上杉:
選挙結果、今、民主党は60議席ということで、選挙前の議席数を取り返していないのですが。大変伺いにくいんですが、「勝ち」とは言えないんではないでしょうか?
海江田:
今まだ確定していない議席もありますから、それを見守るということですけど、着実に1つ1つ議席を取っていくということです。
上杉:
ただ、今回の選挙前、野党第1党であるにも関わらず候補者の数が過半数を立てられなかったということで、政権担当能力というか政権の意志を自ら放棄したんじゃないかとも取られるんですが、この辺りはどうですか?
海江田:
この候補者数について1番重視したのは、2年前の総選挙で野党が乱立して票が分散しましたので、次の総選挙では野党が選挙区の調整をしなければいけないということをずっと考えてきました。そして党首会談などもやりまして、そういう調整をしていたわけでありますが。結果的に過半数を立てられなかったということになりますけれども、この調整も一部においては成果を上げていますので、これは必ず次に繋がっていくと思います。
上杉:
とは言え、海江田代表になってから2年が経って候補者を擁立できなかったというのは、政治は結果責任という観点から言うと、今回の選挙の責任はご自身にあると思われますか?
海江田:
今回の選挙の私たちの位置付けというのは、今回の選挙で政権奪取・政権奪還ということには行かないということでして。じゃあどういうことかということで、まず民主党が改めて野党の第1党としてしっかりとした議席数を獲得をして、そして国会の中の論戦を通じて今の自民党政権の危うさを指摘していかなければいけない、こういう位置付けでやってきたわけであります。
今井:
海江田さん、どうもありがとうございました。
海江田:
はい。ありがとうございました。
上杉:
ありがとうございました。
今井:
民衆党の海江田代表にお話を伺いました。今の海江田さんのお話はどう感じられましたか?
上杉:
事実上「勝ち」とは言えないと思うんですね。「負け」だと思います。それは候補者数が足りないというのと準備不足ということです。「常在戦場」という言葉がありますが、特に衆議院はいつ解散総選挙があるか分からないので、その準備不足は否めないと思いますね。
今井:
ここで現在の党派別の獲得議席を見ていきたいと思うんですけど。自民党296、公明30、民主55、維新28、次世代2、共産16、生活2、社民2、改革0、諸派0、そして無所属9となっております(※最終結果 )。こちらはどうでしょうか?
上杉:
与党が圧勝したということ。あと、共産党が倍増ですよね。となると、必ずしも自民党への信任投票ではなくて、最も遠い共産党にこれだけの票が入るということは、単純に安倍政権の支持が強かったということではなかったんじゃないかと思いますね。
今井:
そして、今、民主党・海江田代表にご出演いただきましたが、選挙区で見ると、東京1区で海江田代表の敗北が確実となり、東京18区では菅直人元総理の敗北も確実になっているんですね。
上杉:
そうですね。あと、それは小選挙区の負けなんで、民主党の比例で復活するかどうかなんですが、党の代表2人が東京の小選挙区でそのような結果というのは、民主党に対する有権者の意志が表れているんじゃないかと思います。
今井:
「2014年衆議院選挙 特別番組 列島タイムライン-”ありのまま”で良いのか、ニッポン」。
さて、上杉さん。自民党総裁の安倍総理そして民主党の海江田代表が共に、選挙初日である12月2日の第一声を上げたのは福島でしたよね。
上杉:
そうなんですね。ただ、安倍総理大臣は解散直前の週に総理官邸で2回の記者会見を行ったんですが、その2回とも「福島」という言葉を使いませんでした。つまり、ちょっと置いていったのかなという気がして、第一声であわてて福島に行ったのかなと疑わざるを得ない状況だったんですが。
いずれにしても2人とも、与党と野党第1党が福島ということは当然ながら、4年弱前に起こった福島第1原発事故、それに伴う候補などについて、そこを焦点にしたかったということだと思いますね。
今井:
そうですね。福島第1原発の事故によって今なお 12万人を超える住民の方が避難を続けている福島県ですが、選挙戦を見守った福島の様子を伝えてもらいます。福島FMの加藤漢太さんと電話が繋がっています。加藤さん、こんばんは。
加藤:
こんばんは。よろしくお願いいたします。
上杉:
よろしくお願いいたします。安倍総理は福島の第一声で「復興を進めていくには経済を強くしなければならない」と訴えていましたが、この言葉は有権者そして加藤さんはどのように受け止めましたか?
加藤:
大勢の方々のお話を伺いますと、経済政策アベノミクスに関することはよく分からないという声が多かったですね。アベノミクスがこれからどうなっていくのかは専門家に聞いてもなかなか難しいものがある、この状態で評価ができるのかどうか? 700億円もの税金を今これに使って良いのかどうか?というような声も聞かれました。
上杉:
福島の復興が目に見える形で進んでいるという実感はあまり無いかもしれませんね。選挙の結果、まだ全部は出ていませんが、与党が圧勝ということで、このままの姿が続くと思いますが、政治に期待することはどういうことでしょうか?
加藤:
おっしゃるように福島県の復興はまだ道半ばです。これから何を優先させてどういうふうに進めていくのか、復興のビジョンを明確に分かりやすく示してほしいという思いがあります。
「与党には復興のビジョン、何を優先させてどういうふうに進めていくのかを明確に分かりやすく示してほしい」
上杉:
あと、福島と言えば、原発の事故もなんですが、なかなか話に出てこないのが放射能の被曝の問題なんですが、この辺りについてはどのように話されているんでしょうか?
加藤:
東京電力福島第1原発があるのは福島5区というところなんですが、その事故の影響で今も選挙区内の6町村の全域で居住が禁じられ、およそ6万人の方が県内外に避難を強いられています。
自民・民主両党の県でそれぞれの県版の公約を作りました。揃って「県内原発の廃炉」を掲げているんですが、その訴えに違いがないように感じます。2年前の衆議院選挙、この10月知事選挙と同様、全国の原発の是非まで争点は広がっていないように感じました。
今井:
分かりました。加藤さん、どうもありがとうございました。
加藤:
失礼します。
今井:
ふくしまFMの加藤漢太さんに伺いました。
続いては沖縄です。普天間飛行場の辺野古移設反対を掲げて当選した翁長知事が先日就任したわけですが、その沖縄にとって今回の選挙はターニングポイントとなったんでしょうか? FM沖縄の大城勝太さんに伝えてもらいます。大城さん、よろしくお願いします。
大城:
はい。よろしくお願いします。
上杉:
お願いします。沖縄の選挙で与党・自民党の全敗が確定したということで、ほかの地域と全く反対の結果が出たんですが、この辺りはどうでしょうか?
大城:
今お話にもありましたように、先日知事選挙が行われて、辺野古移設反対を訴えた翁長雄志知事が誕生したわけなんですけどれども、今回の衆議院選挙もその知事選挙と同じ構図で、自民対非自民という枠組みでの戦いとなりました。結果、知事選挙の勢いそのままに非自民の候補が当選するという結果になったというのが今回の沖縄の選挙の特徴でしょうか。
上杉:
先ほど政治部経験が長い時事通信の原野城治さんが言っていたんですが、今回の選挙で1番注目するのは沖縄だ、と。なぜなら、沖縄が安倍政権に対してNOと言った場合、それは将来的に、「沖縄の台湾化」という言葉を使っていたんですが、沖縄が独立的な動きをするんじゃないか?と言っていたんですが、そういう空気はあるんでしょうか?
大城:
そうですね。最近「独立」という言葉をよく耳にすることがありますけど、日本から離れて独立することが県民の総意かどうかと問われると、その部分に関しては少し懐疑的な部分があります。ただ、沖縄の「自分たちのことは自分たちで決めたい」という強い思いの表れではないかと思います。
上杉:
沖縄では、1区で共産党が96年の選挙以来18年ぶりに小選挙区の当選を果たしたんですが、その辺りも話題になっているんでしょうか?
大城:
そうですね。知事選で勝利した枠組みそのままに選挙協力体制が実を結んだのが、1区で共産党の赤嶺さんが当選した結果ではないかと思います。現時点で自民党の議員は選挙区では敗れてしまったんですが、比例で3人の方が復活当選の見通しということにはなっていますので、政府との一定のパイプは繋いだかなという印象を私は受けています。
「自分たちのことは自分たちで決めたい」という沖縄県民の思いが結果となった
今井:
はい。大城さん、どうもありがとうございました。
大城:
ありがとうございました。
今井:
FM沖縄の大城勝太さんにお話を伺いました。さて、上杉さん、福島と沖縄それぞれの声を聞いてみましたが。
上杉:
福島と沖縄では共にこの秋に県知事選があったんですね。結果は、福島のほうがそのまま繋がるんですが、沖縄のほうは現職が敗れるということになりました。その結果がこの衆議院選にも同じように表れたのかな、と。やっぱり選挙はその民意がきちんと反映できているものだなということを、この2つの選挙結果から感じましたね。
今井:
その民意という点で言いますと、衆議院選挙の開票が進んでいるんですが、定数475のうち、これまでに自民党・公明党で300議席を獲得したということですが(※最終結果 )。
上杉:
300議席を超えると、絶対安定多数は当然なんですが、衆議院で3分の2をとるということで、これは2009年の民主党政権に近づくような圧倒的な与党なんですね。
むしろ安倍政権はこれから困難が待ち受けている
今井:
317が3分の2ということですからね。
上杉:
与党があまりにも強すぎた場合は、逆にその党が運営をしにくくなって分裂するというのが、これまた政治の歴史が見せるものなんですが。その辺り、むしろ安倍政権はこれから困難が待ち受けているということではないかと思います。
今井:
はい。そして投票率が共同通信の午後11時現在の集計で52.43%ということです。
「2014年 衆議院選挙 特別番組 列島タイムライン-”ありのまま”で良いのか、ニッポン」、この時間は今井広美と。
上杉:
上杉隆がお送りしました。
選挙結果は全体的に見ると予想通りでした。個人的に注目したいのは、1)投票率が過去最低だったこと、2)沖縄で自民党候補が全敗したこと、3)共産党が議席数を大幅に伸ばしたこと、の3つです。これがはたして何を意味することになるのか? そして、今回の「700億円のお祭り」は日本の歴史の中でどのように位置付けられることになるのか? それは今後の安倍政権にかかっています。日刊読むラジオでも政局と政策の両方を引き続きウォッチしていきます。(編集部)
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