仕事中にストレスがたまったとしても、上司に直接怒りをぶつけることは許されない。ましてや、会社で社長を殴ったとしたらもはや社会人失格だ。しかし、その「究極のタブー」をユーモアあふれる手法で従業員に許す企業がある。神戸とドイツに支店を持つIT企業「Eyes,JAPAN(アイヅ・ジャパン)」(福島県会津若松市)の社員らには、社内で社長の似顔絵が描かれたサンドバッグを殴ってストレスを解消できる権利が与えられている。背景には、仕事の効率化に徹底的にこだわった社長の哲学があるようだ。
同社本社2階のオフィスフロアでは時折、パソコンに向き合っていた社員が立ち上がり、ボクシング用のグローブを装着する不思議な光景がみられる。
社員が向かうのは、オフィスの窓際につるされた長さ約1メートルのサンドバッグ。仕事の合間に、社員が社内のサンドバッグを突然殴り始めるのに驚くが、さらに驚(きょう)愕(がく)の“仕掛け”がある。サンドバッグの表面にはひびが入った眼鏡をかけた男性の似顔絵が印刷されており、その男性こそ同社の山寺純社長なのだ。
「仕事中にイライラしたら、いつでも思い切り殴れって言ってるんですよ。ただし僕が会社にいない時にしてほしいですけど」。山寺社長はそう苦笑する。
社長の“顔”を殴って、ストレスを発散してよい−。同社は、社会人の常識に外れかねないこのルールを従業員の権利として認めており、堂々と公式ホームページ(HP)の「福利厚生」の欄に記載している。山寺社長は約10年前からこの取り組みを開始。すでに多くの社員らが利用したことからサンドバッグの損傷が激しくなり、今年から新しく買い替えた。今後は、サンドバッグにセンサーを導入して、殴ると山寺社長のうめき声が出るようにバージョンアップする方針という。
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