奈良山雅俊
2014年12月18日13時42分
野生ジカの肉を学校給食に使う試みが広がっている。シカは農林業にとっては食害をもたらす厄介者だが、採用した学校では地産地消を通し、動物の命や地域の環境を考えるきっかけにもなっている。
北海道東部の山あいにある認定こども園・置戸町こどもセンターどんぐりは、昨年11月から月1回、エゾシカ肉を給食で出している。ハンバーグやカツレツ、竜田揚げ……。80人の園児からは「やわらかい」「ラム(子羊)肉より好き」と好評だという。
同園は地産地消にこだわり、農産物は地元農家から買い、園児も野菜を育てる。町の給食センターや老人ホームの栄養士らが自生のフキも採取し、「大地の恵み」として給食に使う。これに「森の恵み」のシカ肉を加えた。野生鳥獣を使ったジビエ料理の代表的な食材の一つで、鉄分が豊富で低脂肪・高たんぱく。同園は献立の幅を広げる新しい食材としてとらえた。
仕掛け人は栄養士の太田晶(あきら)さん(41)。ホテル勤務などを経て釧路短大(北海道釧路市)に入り、シカ肉を栄養面から推奨する岡本匡代准教授(41)=食品学=に学んだ。昨春卒業し、同園に勤務すると、シカ肉給食の準備を始めた。
同園のある置戸町は人口約3100人の農林業の町。町名はアイヌ語の「オケトウンナイ(シカの皮を乾かす所)」に由来する。太田さんは「シカ肉給食は、命をいただくという動物への感謝の気持ちを育み、地域の環境を学ぶことにもつながる」と話す。
シカは地元ハンターも捕獲するが、安心・安全の観点から北海道のマニュアルに沿った食肉処理・加工をするエゾシカ協会認証施設から仕入れている。
同園は今年、農林水産省の外郭団体が主催する地産地消給食等メニューコンテストの学校給食・社員食堂部門で、最高賞の農林水産大臣賞も受賞した。
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