大間原発:稼働、ハードル高く…初のフルMOX商業炉
毎日新聞 2014年12月16日 21時27分(最終更新 12月17日 00時21分)
Jパワー(電源開発)は16日、建設中の原発としては初めて大間原発(青森県大間町、出力138.3万キロワット)の安全審査を原子力規制委員会に申請した。全炉心にウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使う世界初のフルMOX商業炉で、東京電力福島第1原発事故後、利用が難しくなったプルトニウムを消費できるメリットがある。Jパワーは審査期間を1年程度と見込み、2021年度の稼働を目指すが、前例のない審査になる上、対岸の北海道函館市が提起した建設差し止め訴訟も抱えており、前途は多難だ。
原発の新規制基準に基づく審査申請は14原発21基目。Jパワーは想定する最大の地震の揺れ「基準地震動」を450ガル(ガルは加速度の単位)から650ガル、最大の津波の高さ「基準津波」を4.4メートルから6.3メートルに引き上げた。16日現在の工事進捗(しんちょく)率は37.6%。
MOX燃料はウラン燃料に比べ、原子炉の出力を調整する制御棒の利きが悪くなる。国内でも九州電力玄海原発3号機(佐賀県)などのプルサーマルで使っていたが、最大でも炉心の3分の1だった。全炉心にMOX燃料を使う大間原発では制御棒などの改良が必要になった。規制委の審査で安全性を認められるかが焦点だ。規制委の田中俊一委員長は慎重な審査を明言しており、審査が長引く可能性がある。
また使用済みMOX燃料について、Jパワーは申請書で「国内での再処理が原則」と明記。敷地外に搬出する時期までに再処理の委託先を決める、とした。使用済み核燃料プールは運転開始から20年で満杯になる。使用済みMOX燃料は通常の使用済み核燃料よりも発熱量が多く、プルトニウム自体の毒性も強い。青森県六ケ所村の再処理工場では再処理できず、再処理するには第2再処理工場が必要だが、計画のめどすら立っていない。
市の一部が30キロ圏内に入る函館市は4月、国やJパワーを相手取り、建設差し止めを求めて東京地裁に提訴した。工藤寿樹市長は「稼働ありきの申請は誠に遺憾」との談話を出した。
一方、地元の大間町は、町内に滞在する作業員の増加による経済効果や、完成後の固定資産税の増収などへの期待が高まる。金沢満春町長は「ようやく申請の日が来たという思いだ。原発を誘致し、推進してきた町にとっては歓迎すべきことだ」とのコメントを出した。【酒造唯、森健太郎、鈴木勝一】