2014年12月17日(水)

良妻賢母が好きな国はなぜ出生率が低いか

PRESIDENT Online スペシャル

著者
白河 桃子 しらかわ・とうこ
少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授

白河 桃子少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授、経産省「女性が輝く社会の在り方研究会」委員。
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。「妊活バイブル」共著者、齊藤英和氏(国立成育医療研究センター少子化危機突破タスクフォース第二期座長)とともに、東大、慶応、早稲田などに「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプランニング講座」をボランティア出張授業。講演、テレビ出演多数。学生向け無料オンライン講座「産むX働くの授業」(http://www.youtube.com/user/goninkatsu)も。著書に『女子と就活 20代からの「就・妊・婚」講座』『妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』『婚活症候群』、最新刊『「産む」と「働く」の教科書』など。

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少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授 白河桃子
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少子化と相関する3つの数字

今回の選挙の争点にも「子育て」「少子化、人口減少」「女性活躍」「働き方」などが、どの党にもあげられていましたが、今ひとつメインの争点にはならなかったですね。

「女性活躍」と「少子化」の関連が曖昧なままという方も多いと思います。

「女性活躍を推進するのは成長戦略としては良いとしても、少子化を促進するのでは?」「女性は家にいて子育てをしてもらったほうが子どもが増えるのでは?」と言ってくる方が必ずいます。

しかし、成長戦略という観点を抜いても、「女性活躍」と「少子化」は両輪です。

先進国の例で見ると、少子化と相関する数字は3つあります。ひとつは「女性が活躍する国ほど少子化ではない」という相関です。逆に言うと女性が活躍できない国、働けない国ほど少子化が進んでいる。2009年からこの数字は連動してきています。女性の社会進出が進むと「女性が働くから子どもが減る」状態が一時はやってきますが、その後は「女性が外で活躍するほど子どもが増える」になります。うまくいっているのは女性の労働参加率が高い北欧、フランス、アメリカなどです。一方、日本、韓国、イタリア、ギリシャなどは、女性がうまく働けず、子どもも産まれない国となっています。

2つ目は「男性の家事・育児時間」です。「男性の家事育児時間が少ない国ほど少子化」で、これも日本は最低ラインのところにあります。日本の6歳未満の子どもがいる男性の家事・育児時間はわずか。これもくっきりと連動しています。

3つ目は後ほど書きますが、この2つを見る限り、「女性がちゃんと働き、男性もちゃんと家事育児をやる」ことで出生率が上がります。つまり女性の「産む×働く」と男性の「子育て×働く」がうまくいかない国は少子化……ということになります。

現在私は、「あらたな少子化社会政策大綱策定のための検討会」の有識者委員をやっています。今回多くの委員から出されたのが「仕事」という論点です。ある委員が「人間起きている時間の5割以上を会社で過ごす。会社が変わらなければ、何も変わらない」と訴えました。本当にそのとおりですね。そろそろ「自助努力」は限界にきています。

私も「両立できる安定した仕事が男女ともにあること」が、子どもを産みたい女性が産むために一番必要なことだと思っています。その安定した雇用を創出するのは企業です。

どんなに本人がワークライフバランスを取りたいと思っても、会社が変わらなければ難しい。ママが仕事と子育てを両立したい、そしてパートナーであるパパも一緒に子育てしたいと思っても、長時間労働では男性の時間は会社にとられている。ママのいる課のほかの人は長時間労働をしている……では、何も変わらない。

ワーキングマザーはよく「仕事が定時に終わる、または夫が必ず早い時間に家に帰ってくる確信があれば、時短や長い育休もとらなくていい」と言います。ワーキングマザーはもういっぱいいっぱい。パートナー、そして会社が変わるべきときなのです。

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