アーティスト「ろくでなし子」として活動する五十嵐恵容疑者(42)がふたたび逮捕された。自らの性器をかたどった「作品」は、はたして「芸術」なのか、「わいせつ」なのか。

 警視庁は今月3日、五十嵐容疑者とともに、アダルトショップの渡辺みのり経営者(44)=ペンネーム・北原みのり=も逮捕した。渡辺経営者の店に女性器をかたどったわいせつ物を陳列した容疑。東京地裁は6日、五十嵐容疑者の勾留を認める一方、渡辺経営者については認めず、同経営者は即日釈放された。

 五十嵐容疑者は7月にも自らの性器の3Dデータを配布したとして逮捕されたが、このときは処分保留のまま釈放された。東京芸術大学で「表現の規制と自由」と題したシンポジウムが開かれるなど、議論が巻き起こっている中での再逮捕だった。

 ネットでは釈放を求める署名が約1万人分集まっている。「週刊金曜日」は平井康嗣編集長名で、同容疑者の作品は「女性の性を商品化する男性的な社会に対し、疑義を唱える表現活動だ」とする抗議声明を出した。同誌は五十嵐容疑者の漫画を掲載していた。

 芸術か、わいせつか。これまでに何度も司法の場で争われてきた。最高裁は1957年、小説「チャタレイ夫人の恋人」をめぐる事件で、わいせつ性について「一般人の正常な性的羞恥(しゅうち)心を害する」などの3要件を提示。その後、わいせつ性の判断基準になっている。

 ただ、わいせつ性は時代の中で変化する、との考えも司法の場では定着している。80年代にはいわゆる「ヘア」の写真を載せた「ビニ本」が多く摘発されたが、警視庁は91年、女優樋口可南子さんの写真集について、有識者に意見を聞いた上で「この程度は世間で受け入れられる傾向にある」として警告にとどめた。これを機に事実上「ヘア」が解禁された。

 一方で、性器のモザイクが薄いアダルトDVDや男性器を写した写真集をめぐっては関係者を逮捕するなど、警視庁は「性器そのもの」には一貫して厳しい姿勢で臨んでいるようだ。