スマホを使ったタクシーの配車サービスを手がけるウーバーが、各国で逆風にさらされています。何が問題となっているのでしょうか。
[写真]米国発の配車アプリ「Uber」、 仏でタクシー運転手が抗議(ロイター/アフロ)
ウーバーはスマホを使って近くにいるタクシーを簡単に呼び出せるサービスで、米国のベンチャー企業であるウーバーテクノロジーズが世界各国で提供しています。スマホにアプリをダウンロードして登録すれば、地図上で場所を指定するだけで最寄りのタクシーを配車してくれます。手軽にタクシーが呼べるとして、一気にサービスが広がりました。
ところがインドでは、ウーバーを利用した女性が運転手に暴行されるという事件が発生、ウーバーの責任を問う声が上がり、営業停止に追い込まれました。またフランスでは、顧客を奪われている既存のタクシー運転手の組合が大規模なデモを実施、フランス政府は来年1月からウーバーを禁止する方針を明らかにしました。このほか、ドイツやオランダ、スペインなどでも同様の問題が発生しています。
日本の場合には、サービス地域が限定されていることや、ハイヤー会社と提携してサービスを提供しているため、特に問題は発生していませんが、諸外国の場合、自家用車を使った廉価版のサービス(一種の白タク)が存在しており、これがトラブルのもとになっているようです。
フランスでは、自家用車を持っている人がウーバーに登録して客を乗せ、代金をもらうケースが増えています。政府では報酬に上限を定め一定以上の金額を稼げないよう制限していますが、申告も含めその実態は明らかではありません。欧州では高い失業率が長期間続いており、こうしたサービスを提供することで生活費を稼いでいる人や、既存のタクシーはあまりにも高すぎて利用できない人が多いというのが現実です。ウーバーのようなサービスに対して批判の声が上がる一方、法制度や組合に守られた既存のタクシー運転手に対する批判もあるようで、フランス政府は特定の業界団体や圧力団体の意向を受け入れたわけではないと、わざわざ釈明しています。
タクシーは自動車さえあれば、公共インフラである道路をタダで使ってビジネスが出来てしまいます。多額の費用を支払って土地や店舗を用意しなければならない一般的なサービスに比べて、参入が極めて簡単です。このため、過当競争になりやすく、結果的に政府の規制が必要となり、これが政治利権の温床になるという悪循環に陥りがちです。
既存の秩序を破壊するネットサービスはこれまで数多く登場しましたが、タクシーの配車サービスだけがこれほどのトラブルになるという背景には、こうした事情があると考えられます。
(The Capital Tribune Japan)