駒木明義=モスクワ、野島淳 ワシントン=奥寺淳、五十嵐大介 ウラジオストク=中川仁樹
2014年12月18日05時02分
原油の値下がりをきっかけにしたロシアの通貨ルーブルの暴落が、世界を揺さぶっている。通貨安は多くの資源国に広がり、先進国の投資家は安全な資産にお金を移している。プーチン政権の土台が揺らいでいるとみて、米国は経済制裁の手を緩めない考えだが、対応を一歩間違えれば、世界的な経済危機に発展するおそれもある。
■大統領沈黙、利上げも空振り
ロシアの通貨ルーブルは16日、1日で2割下がる暴落を記録した。だがプーチン大統領は17日になっても、沈黙を守っている。タス通信によると、ペスコフ大統領報道官は「大統領による声明は予定されていない」と述べた。
プーチン氏は4日の年次教書演説でルーブル安を作り出しているのは投機家だという見方を示し、「彼らが何者かを知っているし、対抗手段はある」と述べた。しかし、この演説の間もルーブルは下がり続け、マーケットに対する無力さが浮き彫りになってしまった。
ロシア政府は受け身の対応だ。メドベージェフ首相は17日、「市場への強い規制は無益だ。私たちは今後も市場メカニズムに基づいて行動する」と述べた。マトビエンコ上院議長は「悪天候のようなもので、やり過ごすしかない」と平静を呼びかけるばかりだ。
ロシア中央銀行は16日未明、政策金利を10・5%から一気に17%まで引き上げるという異例の手段に出た。金利を上げれば、ロシアで預金したり債券を買ったりする際の利回りが上がるため、通貨ルーブルを売る人を減らせるという思惑だった。ところが、その16日、朝方は1ドル=60ルーブルだった為替相場は数時間で、一時は80ルーブル台まで暴落した。
ロシアの外貨準備高は11月末時点で約3700億ドルあり、すぐに通貨危機に陥るとの見方は少ない。それでも、市場関係者は神経をとがらせる。
「市場で1998年のロシア通貨危機が想起された」と、みずほ銀行の多田出健太氏は言う。2013年時点のロシアの名目国内総生産(GDP)は危機前の97年当時と比べて約5倍。世界経済に占めるシェアも増え、万が一、行き詰まった場合の影響は大きくなった。
日本企業も気をもむ。ロシアに合弁の工場がある三菱自動車は「状況を注視している」(幹部)。大手電機メーカー首脳は「影響が欧州にも及び、アジア通貨危機のような状況になりかねない」と語る。日本の株式市場や円相場も、揺さぶられている。
ルーブル安の起点となった原油安そのものは、世界経済全体にとっては依然プラスとの見方が多い。モルガン・スタンレーMUFG証券のフェルドマン氏は「まだ市場は冷静に考えられていない、ということだろう」と話す。(駒木明義=モスクワ、野島淳)
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朝日新聞国際報道部
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