(英エコノミスト誌 2014年12月13日号)
ペソ危機から20年が経ち、メキシコは新たなショックに見舞われている。
1994年のメキシコの「テキーラ危機(メキシコ通貨危機)」には多くの要因が寄与したが、中でも2つの要因が突出していた。米国の金融政策の引き締めとメキシコ国内の政情不安だ。
それからほぼ20年が経過した今、同じ要因が再びペソに重くのしかかり、原油価格の下落がペソ安に拍車をかけている。
今の状況は当時の危うさには遠く及ばないが、メキシコの政策立案者はそれでも、気持ちを落ち着かせるために酒を1、2杯引っかける必要があるかもしれない。
テキーラ危機とはほど遠いが・・・
1994年の50%の通貨切り下げ以来、メキシコは変動相場制を敷いてきた。そのおかげでペソは20年前よりも安全だが、神経質な投資家にとっては、ちょっとしたサンドバッグになっている。
多くの新興国通貨と同様に、ペソは対ドルで値を下げており、6月以降の下げ幅は11%に達した。
メキシコ当局は12月8日、ペソがドルに対して1.5%以上下落した日には通貨下支えのために介入し、2億ドルのドル売りを行うと発表した。12月10日には1ドル=14.5ペソをつけ、5年数カ月ぶりの安値を更新した。
ペソが下げ始めたのは、メキシコの石油価格が下落し始めたのとほぼ同じ頃で、両者に関連があることがうかがえる。
メキシコでは歳入全体の3分の1を石油収入が占めており、政府はその石油収入を守るためにヘッジを用い、2015年の原油生産量の4分の1については、1バレル76ドルの下限価格を確定している。
だが、メキシコの産油量は最近、急激に落ち込んでおり、このまま原油安が続けば、今後数年にわたって成長鈍化と予算削減という形で痛みが感じられるかもしれない。