原油価格が大幅下落した理由と決定要因
12月14日の衆院選で与党はほぼ現有議席を維持した(定数削減を加味すると若干の増加)。国民の信任を得たアベノミクスが加速することへの期待、そして、デフレ解消と成長戦略の実現が可能な状況になるとの見通しから、「週明けの株式市場は活況を呈する」との楽観的な予想もみられた。しかし、その予想は見事に裏切られ、今週の株式市場は世界的にも大荒れの展開となっている。
その理由として指摘されているのが原油価格の大幅下落である。代表的な原油の市場価格であるWTI原油先物は、12月16日に1バレル=54.92ドルまで下落した。今年の7月終わりでは1バレル=約100ドルだったので、5ヵ月弱で半値近くまで下落した計算となる。
いま、原油価格下落の理由として、OPECが明確な減産姿勢を示さなかったこと、新興国経済の景気減速感が出始めたことなどによる供給過剰要因が指摘されているが、真偽はいまひとつはっきりしない。
そこで、まず、議論の出発点として、原油価格をマクロ経済的な要因(ファクター)で説明する簡単なモデルを、月次データを用いて作成してみた(図1)。
いろいろなマクロ経済指標を試してみたが、原油価格の動きを説明する要因として、統計的に有意であったのは、[1] 世界の生産指数(世界的な原油需要を示す代理変数)、[2] 米国のマネタリーベース、であった。この2つの要因で1991年1月以降の原油価格の動きの約86%を説明できている。このモデルで興味深いのは、原油価格の決定要因として、米国のマネタリーベースが重要な位置を占めていることだ。
これは、米国の金融政策、特に量的緩和(QE)政策による「ドル(「ワールドダラー」)の供給」が原油価格の決定に大きな影響力を持ってきたことを示唆している。よって、原油価格の動向を考える場合には、今後の米国の金融政策の動向を無視することはできないと考える(ただし、メディア等では、原油価格と米国の金融政策の関連性に言及しているものはほぼ皆無である)。
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