(2014年12月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
16日にパキスタン北西部ペシャワルで、イスラム武装勢力による襲撃があった学校で負傷し、病院に運ばれる女子生徒。死者数は141人に上った〔AFPBB News〕
パキスタンで16日起こった学校襲撃事件で銃を持ったイスラム主義者らに殺害された生徒の数を見聞きした人が、これは同国のナワズ・シャリフ首相の言う「残忍な」犯行グループによる特殊な悪行なのだと考えたとしても、それは仕方のないことだろう。
だが、パキスタンにとって不幸なことに、タリバンによるペシャワルのアーミー・パブリック・スクール襲撃が特殊なのは、犠牲となった子供たちの多さだけだ。
この虐殺がどの派閥の手によるものかはまだ明らかでないものの、子供を含む無辜の市民を殺害するという行動は、「パキスタンのタリバン運動(TTP)」や他のイスラム教スンニ派の過激派組織がここ数年取ってきた戦術と完全に一致している。
「イラクとシリアのイスラム国(ISIS)」が中東で台頭していることと今回の襲撃事件とは恐らく無関係だろうが、ISISの台頭は襲撃にふさわしい、熱に浮かされたような思想的環境をもたらしている。
何度も繰り返されてきた残虐なテロ
パキスタンでは先月、ワガという町にあるインドとの国境検問所で自爆テロが起き、週末の外出を楽しんでいた家族連れを含む57人が犠牲になったばかりだ。この検問所は、インドとパキスタンの兵士がたそがれ時に繰り広げる華やかな儀式を見ようと観光客が足を運ぶところだ。
また昨年9月にはタリバンのある派閥がペシャワルの聖公会教会で80人を殺害しており、その1週間後には同じペシャワルの昔ながらの市場(いちば)で自動車爆弾が爆発して42人が命を落とした。銃や爆弾の標的はイスラム教シーア派の人々で、ポリオのワクチン接種で命を救おうとしていた医療関係者らも殺害されている。
2013年2月、英国の病院で手術を受けた後のマララ・ユスフザイさんさん〔AFPBB News〕
タリバンで若者を自爆テロや銃での襲撃に導いている反啓蒙主義のムッラー*1たちは、近代的な教育、特に女子の教育に反感を持っていることでも知られている。
今年のノーベル平和賞の共同受賞者であるマララ・ユスフザイさんが、女子教育を擁護しているとの理由でタリバンに頭部を撃たれたのは、つい2年前のことだ。
*1=イスラム教に深く通じた人々