リニア中央新幹線 工事の安全祈願式12月17日 17時36分
13年後に東京と名古屋の間で開業を予定しているリニア中央新幹線の工事が17日から始まり、東京・品川駅の近くでJR東海の関係者らが工事の安全を祈願しました。
17日は、品川駅近くの敷地で、JR東海の関係者のほか、地元の自治体や住民などおよそ20人が出席し、リニア中央新幹線の工事の安全を祈願しました。
17日から始まった工事では、品川駅近くに資材置き場を整備する予定で、地下40メートルにホームを設置するため、来年度から本格的な掘削作業を始めることにしています。
総工事費は5兆5000億円余りに上り、13年後の東京・名古屋間の開業に向けて、巨大な事業が動き出すことになります。
しかし、およそ286キロの区間のうち、246キロは都市部の地下や山間地のトンネルとなっていて、掘削に伴う土砂の処理や環境への影響などを懸念する声が出ています。
出席したJR東海の山田佳臣会長は、「これから長い間、難しい工事の連続になる。工事の安全を守りながら環境の保全に留意し、地域と連携を密にして取り組んでいきたい」と話していました。
工事の概要は
リニア中央新幹線の東京・名古屋間のルートは全長およそ286キロで、起点となるターミナル駅は東海道新幹線の東京・品川駅と名古屋駅のいずれもホームの地下に設置されます。
中間駅は、▽神奈川県相模原市の地下、それに▽甲府市、▽長野県飯田市、▽岐阜県中津川市のいずれも地上に設置されます。
東京や名古屋近郊の都市部や南アルプスなどの山間地など、ルートの86%に当たる246キロはトンネルで、東京、静岡、愛知の区間は、すべてトンネルを通ります。
地下の品川駅を出発して名古屋方面に向かうと、42キロにわたってトンネルが続き、相模原市の中間駅をすぎて、その先の相模川を渡る付近で、いったん地上に出ますが、再びトンネルに入ります。
また、トンネルの区間のうち、東京、神奈川、愛知の合わせておよそ55キロは、用地買収の必要がない「大深度地下」と呼ばれる深さ40メートル以上の地中にトンネルを通します。
一方、最も地上部分が多いのは山梨県で、およそ27キロと地上部分全体の69%を占めます。
ルートの大半がトンネルになるため、外に出るための避難路を合わせて47か所設け、地震や火災などの緊急時に備えることにしています。
建設費用は車両も含めて▽東京・名古屋間でおよそ5兆5000億円、▽東京・大阪間の全線では、およそ9兆300億円と見込まれています。
JR東海では、▽13年後の平成39年に東京・名古屋間、▽31年後の平成57年に名古屋・大阪間の開業を目指すとしています。
最高速度は時速500キロで、東海道新幹線の品川駅からの所要時間と比べると▽名古屋まではおよそ50分短い40分、▽大阪まではおよそ1時間10分短い1時間7分になるとしています。
工事による影響は
リニア中央新幹線の建設を巡っては、工事による環境への影響を抑えるとともに、大量に発生する土砂をどのように処理していくかが課題となります。
JR東海は、静岡県を流れる大井川では、上流で行われるリニアのトンネル工事に伴い、地下水がトンネルに流れ込む影響で、上流では、最大で毎秒およそ2トン、水量が減ると予測しています。
大井川の水は、水道水にも利用されていることなどから、静岡県は会社側に十分な対応を求める意見を出しています。
JR東海ではトンネルをコンクリートで覆うなど地下水が流れ込むのを防ぐ対策を行うほか、専門家による委員会を設置して水量の確保の方法などについて検討することにしています。
リニアのルートの延長がおよそ13キロにわたる長野県大鹿村では、工事で出る大量の土砂などを運ぶため、JR東海では、一部の道路で1日で最大1700台余りの車両が通ると予測しています。
このため、大鹿村は、騒音や粉じん、それに排気ガスの影響を少なくするよう求めていて、JR東海は、工事の進め方を調整することで1日当たりの車両数の減少を検討しています。
また、長野県や山梨県からは、希少な野鳥などの生態系や、橋の建設による景観への影響に配慮するよう求める意見も出ています。
また、リニアでは、トンネルの掘削で出る土砂の量が東京ドームおよそ45個分に当たる5680万立方メートルに上るとされる一方、具体的に再利用が決まっているのは、全体の15%程度で、今後、どのように再利用や処理を進めていくかが課題となります。