入れ墨調査回答拒否:大阪市職員の懲戒処分を取り消し
毎日新聞 2014年12月17日 20時57分(最終更新 12月17日 23時34分)
◇大阪地裁 配置転換も取り消し、慰謝料など支払い命令
入れ墨の有無を職員に尋ねる大阪市の調査への回答を拒んだ男性職員が懲戒処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決が17日、大阪地裁であった。中垣内(なかがいと)健治裁判長は入れ墨調査が市の個人情報保護条例に違反していると判断し、処分を取り消した。この訴訟を取り下げなかったことに伴う職員の配置転換命令も取り消し、配置転換に対する慰謝料など110万円を支払うよう市に命じた。
橋下徹市長の指示で実施された異例の入れ墨調査を巡っては、回答を拒んだ6人全員が戒告の懲戒処分を受けた。4人が人事委員会に不服申し立てし、2人が訴訟を起こしており、今回が初の司法判断となった。
判決によると、原告は交通局所属で市営バス運転手だった安田匡(ただす)さん(56)。市は2012年5月、教職員を除く全職員を対象に記名式の入れ墨調査を実施し、人目に付く部分の有無については職務命令で回答を義務付けた。
安田さんは入れ墨がないことを上司に確認してもらった上で「プライバシーの侵害だ」として回答を拒んで処分を受けた。その後、処分取り消しを求めた訴訟について藤本昌信交通局長からの取り下げ要求を断り、内勤に異動となった。
判決はまず、入れ墨の有無は社会的差別につながる恐れがある個人情報に当たり、こうした差別情報の収集を個人情報保護条例が原則禁じていると指摘した。
そして、安田さんが市バス運転手として乗務前に身だしなみの点検を受け、業務に支障が生じたことはなかった点に言及。全ての職員に回答を義務付けた調査は「条例の例外規定に当てはまる必要不可欠な情報収集とは言えず、条例に反する」と述べ、懲戒処分とともに違法と結論付けた。
配置転換も「裁判を受ける権利の侵害で裁量権の逸脱や乱用だ」と批判した。
一方、市民の目に入れ墨が触れないよう人事異動で配慮するためだったとして、調査の必要性や手法には理解も示し、憲法違反だとの原告側の主張は退けた。
藤本局長は「判決内容を精査し、今後の対応を検討したい」とのコメントを出した。【堀江拓哉】