高浜原発:再稼働へ一歩前進…速やかに避難に、なお疑問

毎日新聞 2014年12月17日 21時11分(最終更新 12月17日 21時14分)

 原子力規制委員会から17日、新規制基準に基づく安全審査について、事実上の「合格証」となる審査書案を定例会で了承されて、再稼働へ一歩前進した関西電力高浜原発3、4号機(福井県)。地元の福井県高浜町では原発事故への備えが着々と進む一方、実際に速やかに避難できるかどうか、疑問は少なくない。

 事故時に即時避難を要するのは、原発からおおむね5キロ圏内(PAZ=予防防護措置区域)だ。町では、この区域に全町民の7割以上の約8200人が暮らす事情がある。

 町は昨年、5キロ圏に厳格に境界線を引き、その内側の約5500人を避難対象とする計画を作った。しかし、境界線は住民が多い町中心部の行政区を分断する形に。行政区は住民活動の基本的な単位で、町の担当課も「一律の線引きは不自然」と指摘し、部分的に広げることを決めた。担当者は「同じ小学校区で、行事参加など地域的なつながりに配慮した」という。

 計画は改定されたが、なお課題は大きい。避難には原則自家用車を使うが、町中心部を走る幹線道路に車が集中すれば渋滞を招きかねない。40代の主婦は「何かあれば計画通りには進まないと思う」と心配する。

 一方、町の半島部に位置する高浜原発の近くでは、県が新設するトンネル道路の準備工事が進む。完成すれば長さ約1.2キロ、幅7メートル(2車線)で、半島部を通るカーブが多い既設道路のバイパスとなる。事故時には、電力会社や消防などの関係者が行き来する「原子力災害制圧道路」として使われる。半島部からの避難に活用できる可能性もあるが、原発の間近を通るため、住民からは「あまり意味がないのでは」という声が聞かれる。

 同様の「制圧道路」は、福井県では関電大飯原発や日本原子力発電敦賀原発の周辺計4カ所で計画され、事業費は全額国の負担で約302億円。県によると、いずれも完成は早くて数年後で、原発再稼働には間に合わない見通しだ。【松野和生、野田武】

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