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 米政府は17日、1961年以来、外交関係が途絶えていたキューバと国交正常化に向けた交渉を始めると発表した。米国は数カ月以内にハバナに米大使館を再開する方針。米国とキューバとの外交関係が来年に回復すれば54年ぶりとなる。

 オバマ大統領が米東部時間の17日正午に会見を開く。米政府高官は「米国は、キューバとの関係改善に向けた重大な政策変更を行う」と語り、オバマ氏はケリー国務長官に国交正常化に向けた交渉にすぐに着手するよう指示した。キューバのラウル・カストロ国家評議会議長も発表する見通し。

 米政府高官によると、来年1月に米外交団がハバナを訪問し、国交正常化に向けた議論を始めるという。関係改善に向け、両国政府の高官レベルの協議を行い、移民問題や麻薬対策などで協力を進めていく方針。米政府高官は「キューバとの間には民主主義や人権などの分野でいぜん大きな違いがあり、米国は市民社会や民主化を進める上で支援していく」とも語った。

 米ニューヨーク・タイムズ紙によると、約5年前からキューバに拘束されていた米国人アラン・グロス氏が17日に釈放され、米国側もスパイ容疑で拘束していたキューバ人3人を釈放した。グロス氏は、米政府が準備した飛行機で米国に向かったという。

 米国はこれまで、キューバを「テロ支援国家」に指定し、両国がお互いに政治犯を収容するなど複雑な関係が続いていた。一方で、米国から約150キロしか離れていないキューバは海外からの投資の誘致や市場経済化を進めており、ロシアや中国が経済的関係の強化を模索。米政財界からはビジネスチャンスを逃さないよう、経済封鎖の解除を求める声があがっていた。

 キューバは、1959年にラウル氏の兄のフィデル・カストロ前議長らが親米のバチスタ政権を打倒し、革命政権を樹立。その後、社会主義宣言をして、米系企業の資産を接収したため、米国は61年にキューバと断交し、翌62年の「キューバ危機」では軍事衝突も懸念された。米国は、それ以降、輸出制限などの経済制裁を続けてきた。一方で、国連総会は過去23回、圧倒的多数で、この経済制裁解除を求める決議を行っている。

 キューバは、2008年にラウル政権に変わって以来、市場主義経済を部分的に導入。今年3月には新たな外国投資法を可決するなど、改革路線を進めている。(ワシントン=奥寺淳、ロサンゼルス=平山亜理)

■米国とキューバの歴史

1898年 米西戦争(米国がキューバを支配していたスペインに勝利)

1902年 独立

  59年 キューバ革命でフィデル・カストロ政権成立

  60年 米系資産を全面接収

  61年 米国と断交

     ピッグズ湾事件(米国の支援で反革命部隊が武力侵攻したが失敗)

  62年 米国が全面禁輸制裁

     キューバ危機(米国がソ連製ミサイル撤去を要求し海上封鎖)

  80年 マリエル港事件(12万5千人のキューバ難民を出す)

  91年 ソ連解体、ソ連からの支援停止

  96年 キューバ軍機による米民間機撃墜を機に米国でキューバ経済制裁強化法成立

     キューバ、対米協力者を処罰する法を制定し対抗

2001年 米国から約40年ぶりに食糧購入開始

  08年 フィデル・カストロ国家評議会議長が議長職から引退表明

  09年 オバマ米政権、対キューバ制裁緩和