(2014年12月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ルーブル急落を受け、多くのモスクワ市民が貯蓄を外貨に換えている(写真はモスクワ中心部で外貨両替所の為替レート電光掲示板の前を歩く女性)〔AFPBB News〕
ほんの数週間前まで、ロシアの銀行幹部や企業経営者、政府関係者は、同国経済の苦境のことを、痛みを伴うが、対処可能と表現していた。6年前の金融危機の時と比べると、ロシアははるかにうまく嵐に耐えられる立場にあると彼らは話していた。
ところが、12月16日、多少持ち直す前にルーブルが一時、対ドルで20%近く暴落すると、今の状況を1998年の危機と似た全面的な通貨危機になぞらえた。
「我々は滝に向かって流れており、我々を止められるものは何もない」。ロシアのあるオリガルヒ(新興財閥)が支配する金融持ち株会社の幹部はこう話す。
中銀の不十分な対応に批判、一般市民も貯蓄を外貨に交換
多くの投資家はロシアの中央銀行を責めている。主導権の奪還を目指す死にもの狂いの土壇場の試みで、ロシア中銀は現地時間の16日午前1時に金利を一気に6.5%引き上げ、年17%とした。
だが、大幅利上げは「衝撃と畏怖」で市場を落ち着かせることができなかった。これは規制当局が取る用意がある最大の措置に見えたからだ。
ズベルバンクCIBで為替・金利チーフストラテジストを務めるトム・レビンソン氏(モスクワ在勤)は「市場は、中銀が大規模な介入に踏み切ることを見込んでポジションを組んでいた。それが実現しなかった。実際、16日に中銀が少しでも市場介入したのかどうか確信が持てない」と言う。
アナリストらの話では、中銀は最大300億ドルのドル売り介入でフォローアップする必要があったという。ドル売りが見送られると、ロシアの一般市民がルーブル建ての貯蓄を外貨に交換し始め、ルーブルを再び急落させた。
「直近のルーブル下落をもたらしたのは個人の活動だ。人々はルーブルが価値を失っていることを心配し、貯蓄を外貨に換えている」とレビンソン氏は言う。「これに対応するためには、一般市民が為替レートに何らかの安定を見て取れるようにする必要がある。利上げだけでは、それは達成できない」