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ボカロシーンから飛び出した稀代のマルチクリエイター

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物語を音楽で綴り続ける、マルチクリエイターsasakure.UK

インタビュー・テキスト:柴那典 撮影:中村ナリコ(2014/12/16)

音楽と物語が、手を取り合っている。小説やアニメや映画と同じように、音楽が架空のストーリーを伝える媒介となっている。一つひとつの楽曲がショートストーリーとなっていて、それが連なることで大きな世界観が見えてくる。

sasakure.UKが1年ぶりに発表するアルバム『摩訶摩謌モノモノシー』は、そういうタイプの作品だ。舞台はとある街の中学校。そこに通う少年少女と異形の存在「妖禍子(アヤカシ)」が繰り広げる様々な出来事が音楽を通して語られる。ボーカロイドやゲストボーカルをフィーチャーし、キュートな電子音と変則的な曲展開を活かした楽曲が繰り広げられていく。

これまでボカロシーンを中心に活動してきたsasakure.UKだが、矢野顕子のアルバム『飛ばしていくよ』への参加など様々なフィールドで活躍する今の彼を、もはや「ボカロP」という肩書きだけで位置づけるのは狭すぎるだろう。1980年代のテクノやニューウェーブのヒストリーを受け継ぐミュージシャンにして、稀代のストーリーテラー。言うならば「電子音楽」と「物語音楽」の交差するポイントで未開の地を開拓するマルチクリエイターだ。そういう意味では、今の日本のポップカルチャーの最先端を担う存在と言ってもいい。この作品以降もプロジェクトは広がっていく予定だという。彼の現在地と展望を語ってもらった。

PROFILE

sasakure.UK(ささくれ ゆーけい)
福島県出身。作詞・作曲・編曲の全てをこなすサウンド・プロデューサー。幼少時代、8ビットや16ビットゲーム機の奏でる音楽に多大な影響を受けて育つ。学生時代には男声合唱を学びながら、木下牧子、三善晃といった作曲家や、草野心平、新美南吉などの詩人・文学作家の作品に触れるようになり、この頃から独学で創作活動を開始。時代を越えて継承されてゆく寓話のように、物語の中に織り込められた豊かなメッセージ性を持つ歌詞と、緻密で高度な技術で構成されたポップでありながら深く温かみのあるサウンド、それらを融合させることで唯一無二の音楽性を確立。また、楽曲のコンセプトや世界観をもとに自らイラストや映像の制作も手掛けている。矢野顕子のアルバム『飛ばしていくよ』(2014年)にトラックメイカーとして参加、ゲーム『モンスターハンター』や『ストリートファイター』の公式REMIXを手掛けるなど、近年では様々なジャンルのクリエイターとのコラボレーションも企画・監修している。
sasakure.UK Official Site

矢野(顕子)さんが最初に作るデモは、歌詞のない歌とピアノのバッキングだけで、そこから音を足していく作業をしていったんです。自分のアレンジの技術が試された経験でした。

―ニューアルバムの話の前に、まずは今年の3月にリリースされた矢野顕子さんのアルバム『飛ばしていくよ』を振り返って伺いたいんですけれど。トラックメイカーとして3曲参加し、その後のライブでも矢野顕子さんと一緒にコラボをしていましたよね。これはsasakureさんにとってどういう体験でしたか?

sasakure.UK:嬉しかったですね。僕の音楽のルーツでもある方なので。大ファンの感覚のまま作らせていただきました。

sasakure.UK
sasakure.UK

―僕もライブを拝見したんですけれど、あれを観て強く思ったのは、sasakure.UKさんって、いわゆるボカロシーンという出自よりも、むしろ日本のテクノやニューウェーブ、電子音楽のヒストリーに繋がる位置付けの人なんだなっていうことだったんです。

sasakure.UK:そう感じてもらえたのなら、ありがたいです。実際、すごくやりやすかったんですよね。矢野さんの感覚と自分の感覚に近しいものがあったので。

―得るものは大きかったですか?

sasakure.UK:はい。自分のアレンジの技術が試された経験でした。矢野さんが最初に作るデモは、歌詞のない歌とピアノのバッキングだけで、そこから音を足していく作業をしていったんです。どの音を使うか、いつも以上に考えました。音楽ソフトに入っている何千、何万とある音素材を、一つひとつ聴き直して、じっくり選びましたね。

―なるほど。自分のルーツとしていた人との共同作業って、sasakure.UKというアーティストとしてのアイデンティティーの再構築みたいなことにもなるんじゃないかと思ったんですけれども。そういう感じはありました?

sasakure.UK:ありましたね。改めて自分の音楽を振り返って「あ、これで良かったんだな」と思えました。このまま突き詰めていって、もっとその先で表現することも目指したい。そういうことに気付かせてくれた、大切な時間でした。

sasakure.UK

―そうやって改めて気付いた自分の良さ、そしてもっと突き詰めたいと思ったことというのは、最新作『摩訶摩訶モノモノシー』にも繋がっていますか?

sasakure.UK:そうですね。

―まず「これで良かったんだ」と思えたポイントと言うと?

sasakure.UK:それはやっぱり音の選び方ですね。矢野さんと制作した楽曲で言うと、“ごはんとおかず”という曲のリズムトラックに、アナログな音を使っているんです。鍋の蓋を開ける音とか、包丁の音とか、そういうサウンドを使って、自分なりのテクノ感とあわせて表現しました。そういうセンスや感覚は、今後も活かしていきたいと思いましたね。

―では、ここから先に新しく挑戦していきたいと思った部分は?

sasakure.UK:今までも、楽曲を作るときにバックグラウンドやストーリー、人物を考えていたんですけど、それをもっと突き詰めてやろうと思ったんですね。それをもっとフィーチャーしたら、もっと面白くて深みのある作品が作れるんじゃないかなって。

―より物語をベースにした音楽を作ろうと思うようになった。

sasakure.UK:そうですね。それが今回のミニアルバムにも繋がっています。


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